【中東問題を理解するvol.5】旧約聖書の歴史(4)
イスラエルとパレスチナ・ハマスを巡る、
複雑な中東問題。
旧約聖書の歴史を辿りながら、中東問題の本質を探ります。
教義の解釈など、理解不足の点はご容赦ください。
あくまで、自分が中東問題を理解するためのメモの公開となります。
今回は、
アダム、ノア、アブラハムに続き、
イスラエルの起源となった、ヤコブの話を記します。
前回の記事はコチラ
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(7)ヤコブ
「信仰の父」と呼ばれるアブラハムの息子イサクには双子のエサウ、ヤコブという兄弟が生まれます。
このヤコブが、後にイスラエルと改名し、古代イスラエル人の祖先となります。
そして、このヤコブの12人の息子が「イスラエル12支族」の族長となるのです。
今回は、そんなお話です。
■イサクの結婚
アブラハムが100歳、その妻サラが90歳の時に生まれた最愛の子イサク。
数々の試練を乗り越え、約束の地カナンに定住していたアブラハムは、サラを失ってから3年、140歳となりました。
息子のイサクは40歳となりましたが、まだ結婚していませんでした。
そこで、アブラハムは故郷のハランの町から、親戚の娘を呼び寄せることにします。
選ばれたのは、アブラハムの弟ナホルの孫娘である心優しいリベカでした。
こうしてリベカはイサクと結ばれます。
詳しくはコチラ
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■兄エサウと弟ヤコブの確執
間もなく、リベカは双子を出産します
(イサクが60歳の時の子です💦)。
兄はエサウ、弟はヤコブと名付けられました。
彼らは双子でありながら、見た目も性格も真逆で全く似ていませんでした。
兄弟は仲が悪く、お腹の中にいた時からケンカしていたとされます。
やがて2人は成長し、
兄エサウは
野山を駆け回る、たくましい狩人になります。
一方、弟のヤコブは、家の周りの畑を耕す、控えめで大人しい性格だったと言います。
父イサクは兄エサウを、
母リベカは弟ヤコブを愛していました。
リベカは妊娠中、神から「兄が弟に仕える」というお告げを授かっていたのです。
ある日、ヤコブがレンズ豆の煮物を作っているところに、空腹のエサウが帰って来ます。
エサウがヤコブにその煮物が欲しいと頼むと、
ヤコブは「長男の権利を譲ってくれるなら分けてやる」と言います。
あまりに空腹だったエサウはそれを承諾します。
たった1杯の煮物の見返りに、長男の権利を求めるヤコブの貪欲さと、与えられた権利を簡単に手放す無頓着なエサウ😮💨。
こうした状況の中、老化が進み、死期が近いと悟った父のイサクは、エサウに早めに家督を譲ることを決めます。
それを知った母のリベカは、一計を講じ、
エサウの留守の間に、弟のヤコブをエサウに変装させ、イサクの元に向かわせます。
目の悪いイサクは息子の手を取ろうとします。
実はエサウは毛深くて、ヤコブはツルツルの肌をしています。
そこで、母のアイデアで、ヤコブの腕や首には子ヤギの毛皮が巻き付けられていました。
子ヤギの毛で覆われたヤコブの手を握ったイサクは、エサウと勘違いして、ヤコブに長男への祝福を与えます。
この祝福で、イサクの財産も、アブラハムと神との契約も、一族の長として国を治める権利も、弟のヤコブが継承することになります。
一度行われた祝福は取り消すことができません💦
弟に2度も出し抜かれたエサウは大激怒!
父が死んだら弟を殺そうと決意します。
■ヤコブの逃亡
エサウの殺意に気づいた母のリベカは、
ヤコブを故郷であるハランの町に住む兄ラバンの元に逃す事にします。
カナンから逃げる途中、野宿していたヤコブは神の夢を見ます。
「私はあなたが今いる地を、あなたと子孫とに与えよう。
あなたの子孫は地のちりのように多くなって増え広がり、世界中の国はあなたと子孫とによって祝福をうけるだろう。
あなたがどこへ行くときも私は共にいてあなたを守り、無事にこの地に連れ帰る。」
初めて神の声を聞いたヤコブ。
兄から奪ったとはいえ、神の祝福は、弟のヤコブに受け継がれていたのです。
そしてヤコブは、兄から逃げ、孤独な旅をしていても、常に神がそばにいることを知ったのです。
ヤコブは、その場所をべテルと名付け、そこを神の家とすることを誓います。
後にこの神の言葉は実現し、ヤコブはたくさんの子孫に恵まれることになります。
■ヤコブの結婚
ハランの町に着いたヤコブは、伯父ラバンの下で働くことになります。
そこでヤコブは、ラバンの次女ラケルに一目惚れします😍。
伯父のラバンは、自分のために7年働けばラケルを嫁にやると約束します。
こうして7年間、懸命に働いたヤコブ。
ところが、婚礼に現れたのは、ラケルではなく、
その姉のレアでした。
「姉よりも先に妹を嫁に出す訳にはいかない」
悪びれることもなく、そういう伯父ラバン。
更に「あと7年働けば、今度こそラケルを与えよう」と言います。
こうして、姉のレアと結婚したヤコブは、7年後、
ようやく妹のラケルと結婚できました。
妻が2人の重婚です💦。
レアはヤコブとの間に6人の男児と1人の女児を産みましたが、
ラケルには子どもができませんでした。
そこでラケルは、自分の女奴隷ビルハをヤコブに与えて、2人の男児を作らせます。
対抗する姉のレアも、女奴隷ジルパを与え、こちらも2人の男児が授かります。
まさに「大奥」状態(//∇//)。
その後、ラケルにもようやく2人の男児が授かり、
ヤコブは、12人もの息子の父となります。
12人の息子の名は以下の通りです。
●姉レアの子
①ルベン(長男)
②シメオン(次男)
③レビ(三男)
④ユダ(四男)
⑤イッサカル(九男)
⑥ゼブルン(十男)
※この他、ディナという女児もいます。
●ラケルの女奴隷ビルハの子
⑦ダン(五男)
⑧ナフタリ(六男)
●レアの女奴隷ジルパの子
⑨ガド(七男)
⑩アシェル(八男)
●妹ラケルの子
⑪ヨセフ(十一男)
⑫ベニヤミン(十二男)
この子達が後のイスラエル十二支族となります。
■ヤコブの名がイスラエルとなる
神に祝福されたヤコブは、ラバンの下で懸命に働き、子宝にも恵まれ、多くの財産(家畜)を築くことができました。
しかし、そんなヤコブを伯父ラバンとその一族は妬むようになります。
そんな時、神はヤコブに故郷に帰るよう命じます。
20年ぶりの帰郷ですが、ヤコブは、自分を憎んでいる兄エサウの存在が気がかりでした。
兄からは400人の従者と共にヤコブを迎えに来ると知らせが届きます。
復讐されるに違いない。
そう恐れるヤコブは、兄への贈り物(家畜)を携え、妻と子、従者を連れてカナンの地を目指します。
エサウの領土であるヤボク川まで到達した際、
兄の襲撃を恐れたヤコブは家族を先に渡らせ、
一人夜営をしていました。
その夜、突然ヤコブの前に謎の男が現れ、2人は取っ組み合いの戦いになります。
2人の戦い(格闘)は明け方まで続きます。
相撲の様なイメージだと思われます。
ヤコブが戦った相手は、神でした。
戦いに勝ったヤコブを祝福し、神はヤコブに
ヘブライ語のイシャラー(勝つ)、エル(神)から
イスラエルという名を授けます。
これが現在の「イスラエル」という国名の起源となります。
■兄と弟の和解
翌朝、エサウが400人の従者を連れて、ヤコブを迎えに来ます。
兄を見たヤコブは、7度地面にひれ伏し、かつての非礼を兄に詫びます。
ところが、エサウはヤコブを抱きしめ、兄弟はお互いに大粒の涙を流し合います。
ヤコブの恐れは杞憂でした。
兄は弟の行為を既に許していて、その再会を大いに喜んだのでした。
こうして2人は、父イサクの待つ、カナンの地に戻ります。
旅の途中、ヤコブの最愛の妻ラケルが、末子である十二男のベニヤミンを産むのですが、難産であったため、ラケルは亡くなってしまいます。
こうして苦難の旅の果て、カナンの地に戻ったヤコブ。
最愛の母リベカは既に亡くなっていましたが、父イサクとの再会は果たすことができました。
その後、イサクは180歳で亡くなり、エサウとヤコブによって、一族が眠るマクペラの洞穴に葬られました。
神がヤコブに告げた
「一つの国民が、国民の群れが、
あなたから出る……
わたしは、アブラハムとイサクに与えた地を、
あなたに与える。
あなたの後の子孫にも、その地を与えよう」
という契約の通り、
ヤコブの12人の息子たちがイスラエル人の祖先となるのです。
一方、
兄のエサウは、その後、エドム人の祖先となって
イスラエルの兄弟民族となりました。
その子孫たちはエドム王国を建国し、栄えたと伝えられています。
参考
なるほど。
アブラハムの話は何となく聞いたことがありますが、その孫であるヤコブの話は、今回初めて知りました。
「イスラエル十二支族」や「イスラエルの失われた十支族」なども聞いたことがありますが、その起源はヤコブにあったのですね。
ヤコブの子、四男ユダの末裔が、ユダヤ民族となり、その後、イエス・キリストに繋がっていくと言われています。
実に興味深い話ですね。
次回は、ヤコブの子であるヨセフの話を記していきます。
「十戒」で有名なモーセが、なぜエジプトを脱出したのか、その前章譚となる逸話ですね。
中東問題を理解する上で、参考になれば幸いです。
今回も長くなり恐縮です。
m(_ _)m
それでは、また。
(つづく)
(2023年11月7日投稿)
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