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【中東問題を理解するvol.4】旧約聖書の歴史(3)

イスラエルとパレスチナ・ハマスを巡る、
複雑な中東問題。
自分自身の整理のため、
旧約聖書の歴史を辿りながら、問題の本質を探ります。
教義の解釈など、理解不足の点はご容赦ください。
あくまで、自分が中東問題を理解するためのメモの公開となります。

前回の記事はコチラ
 ▼▼▼

【中東問題を理解するvol.1】宗教について
(多神教と一神教、エルサレムの話)
【中東問題を理解するvol.2】旧約聖書の歴史(1)
(天地創造、アダムとイヴ)
【中東問題を理解するvol.3】旧約聖書の歴史(2)
(カインとアベル、ノアの方舟、バベルの塔)


(6)アブラハム

わたしはあなたと後の子孫とにあなたの宿っているこの地、すなわちカナンの全地を永久の所有として与える。そしてわたしは彼らの神となるであろう

(創世記17章8節)

「アブラハムの宗教」とも呼ばれる
ユダヤ教・キリスト教・イスラム教。

「アブラハム」は、ノアの洪水の後、人類救済のため、神から祝福を受けた最初の人間とされ、
ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の始祖として、今も信者に崇められています。

ユダヤの歴史を調べると、アブラハムの話から紹介されるケースも多いですね。

「信仰の父」と呼ばれるアブラハムが神を信じた結果、アブラハムを族長とするユダヤ民族が誕生しました。


アブラハム(最初の名はアブラム)は、
今から約4,000年前、古代メソポタミアのチグリス・ユーフラテス川の河口にあったカルデヤのウルにて誕生したとされます。

「ノアの方舟」のノアの長男セムから数えて10代目がアブラハムだったとされ、アブラハムの父テラが70歳の時にアブラハムが誕生しました(驚)。

この時、セムが400歳、ノアが900歳で、一緒に暮らしていたという説もあります。

アブラハムは、アダム、セト、ノア、セムに続く血筋で繋がっているのです。

(引用:マップラボ)

裕福な遊牧民の族長であったテラは
息子のアブラム(アブラハム)とその妻サライ(サラ)、孫でアブラムの甥にあたるロトを連れ、
ウルを出てハランに移動しそこに住みました。
アブラムの父テラは、ハランにて205歳の生涯を遂げます。

旧約聖書の登場人物は実に長生きです。
アダムは930歳。
アダムの子セトは912歳。
ノアは950歳です。


父の死後、アブラムは神の啓示を受けます。

「アブラムよ、
故郷を離れて私が示す地に行きなさい。
そうすれば、私はあなたを大いなる国民として
祝福し、あなたの名を大いなるものとしよう。

あなたを祝福する者を私は祝福し、
あなたを呪う者を私は呪う。

地上のすべての民族は、
あなたによって祝福される。」
(創世記12章)

アブラムはこれを聞き入れ
約束の地「カナンの地」へと旅立ちます。

アブラムはこの時、75歳。
妻のサライや甥のロト、一族の民と共に、全ての財産を持ち、カナンの地を目指します。

アブラム一行がカナンの地に入ると、
先住民のカナン人が住んでいましたが、
神は
「あなたの子孫に、わたしはこの地を与える」
と言いました。

アブラハムはそれを記念して、この地に祭壇を築きました。これは祈りを捧げ、神の祝福の約束を思い出すためのものでした。

このカナンの地が、現在のイスラエル(パレスチナ)です。
現在の中東問題の歴史は、ここから始まります。

この神の言葉が、現代社会にも大きな影響を与えているということです。


カナンの地が飢饉に見舞われたため、一度アブラムの一族はエジプトに逃れますが、その後アブラムは再びカナンの地に戻ります。

その時、再び神が現れてこう告げます。

「目をあげてあなたのいる所から
北、南、東、西を見渡しなさい。
すべてあなたが見渡す地は、永久にあなたとあなたの子孫に与えます」

こうして神は、このカナンの地で、アブラムの一族が、子々孫々・未来永劫に渡って繁栄することを約束したのです。

そう契約した神でしたが、
アブラムとサライの間には一向に子供が授かりません。

アブラムは85歳、サライは75歳という高齢になっていました。

そこで妻のサライは、自分の奴隷であったエジプト人の女性ハガルに、夫であるアブラムの子を産ませることとします。
当時、子供のできない女性は、夫に女奴隷を与えて跡継ぎを産ませるのが一般的でした。

産まれた子は、神の命でイシュマエルと名付けられます。

その後、アブラムが99歳の時、
神とアブラムは契約を交わし、
アブラムはアブラハムと(多くの国の父)と
サライはサラ(国々の母)という名を与えられます。

そして神は、
アブラハムとその多くの子孫に、カナンの全地を永久の所有として与える
と、永遠の契約を結びます。
そして、その証として「割礼かつれい」を行うことを命じます(つまり、ユダヤ教徒の男性に包茎はいないのです)。

そして改めて、サラに男子を授けると契約します。

神は、ここでアブラハムとその子孫と、永遠の契約をしたことになります。

西洋社会において、この「契約」は絶対守らなければならない、最も重要な事項とされます。
自らアブラハムの子孫であると強く自認し、神との契約を守り続けているたユダヤ教徒は、長年に渡る凄まじい迫害を受けながらも、その信仰を現在も続けているのです。

神との契約の通り、アブラハムが100歳となった時、90歳のサラお婆ちゃんは、遂に男の子を産みます。
生まれた子は神の命で、イサクと名付けられました。


アブラハムとサラの間に、実子イサクが生まれたことで、面白くないのは、アブラハムとの間にイシュマエルを設けていた女奴隷のハガルです。

元々、女奴隷のハガルは、子のできないサラを見下していて、それが原因でハガルはサラから虐められていたのですが、
イサクが生まれたことで、妻のサラと女奴隷のハガルの仲は一層険悪になります。

イサクが、兄であるイシュマエルと遊ぶようになると、サラは、アブラハムに、ハガルとイシュマエルを追い出すように訴えます🫢。

しかし、イシュマエルもアブラハムにとっては可愛い息子。
悩むアブラハムに、神は「サラの言うとおりにしなさい」と命じます。

こうして、ハガルとイシュマエルは荒野に追放されてしまいます。
死を覚悟した2人でしたが、神に助けられ、
やがてエジプトに近い、パランの荒野に住み着きます。

成長したイシュマエルは、熟練した弓を射るハンターとなり、その後エジプト人の妻を迎えます。

このイシュマエルが、アラブ人の祖先になったと伝えられています。

つまり、ユダヤ人だけでなく、
アラブ人の中にも、自らがアブラハムの子孫だと考える人が数多くいます

ユダヤ人もアラブ人も、カナンの地は、子孫である自分たちの物だと考えている訳です。

そして、第2次大戦後の1948年(昭和23年)、ユダヤ人の手で「イスラエル」がこの地で建国されると、中東戦争が勃発。
この地に住んでいたイスラム教徒は パレスチナ難民となります。

現在も続く紛争の火種は、この時から発生しているとも言えます。

(引用:マップラボ)

一方、敬虔なアブラハムは神への感謝を忘れません。
ようやく与えられた子イサクをこよなく愛し、
自ら飼っている羊を生贄として、神に感謝を捧げる日々を送っていました。

しかし、神はそんなアブラハムに辛い試練を与えます。

「あなたの子、あなたの愛するひとり子イサクを連れてモリヤの地に行き、わたしが示す山で彼を燔祭はんさいとしてささげなさい」

羊ではなく息子のイサクを丸焼きにして生贄として捧げろと…(酷い💦)

しかし、アブラハムはこの神の命令に従います

モリヤの地で、祭壇を築いたアブラハムは、イサクを縛って祭壇のたきぎの上に載せました。

アブラハムがイサクを刃物で殺そうとしたその瞬間、神の声が聞こえてきます。

「わらべを手にかけてはならない。また何も彼にしてはならない。あなたの子、あなたのひとり子をさえ、わたしのために惜しまないので、あなたが神を恐れる者であることをわたしは今知った。」

神は、我が子を生贄として捧げるほど、神を信じているか
アブラハムの信仰心を試したのです

(日本人の感覚では考えらえない…😓)

こうして信仰を守り抜いたアブラハムは、神から改めて星の数ほどの子孫を与えることを約束されました。

その後、アブラハムの妻サラは、127歳で亡くなります。

アブラハムは、ケトラという女性を後妻に迎え、更に6人の子を設けています


こうして、神の命令であれば、どんなことでも従うアブラハムは、175歳でその生涯を閉じます。

アブラハムは、最愛の妻・サラも眠っているカナンの地にあるマクペラの洞穴に埋葬されました。

この地は現在でも、パレスチナ自治区のヨルダン川西岸の都市ヘブロンにあり、神聖視されています。

葬儀には、遠く離れたパランの荒野から異母兄であるイシュマエル(89歳)も駆けつけ、弟のイサク(75歳)と共に父を葬ったとされます。

神はアブラハムの名を大いなるものとすることを契約しましたが、その契約は果たされ、
現在でも『信仰の父』と呼ばれ、多くの人々に尊敬されています。

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教
この世界三大宗教は全て、アブラハムの神に従う信仰心から始まったものなのです。


参考
 ▼

https://www.lets-bible.com/abraham/


現在も続く、中東問題の最初は、約4,000年も前から始まっていました。
「約束の地」は一体、誰のものなのか?

しかし、現在のイスラエルとハマスの紛争は、既に「宗教問題」を越えた所で発生しているとも言われています。
これが何を意味するか…。

同じ始祖アブラハムを尊敬するユダヤ教とイスラム教の関係性は、昔から悪くないとも言われています。
それが何故、ここまでこじれてしまっているのか…。

歴史を知ることで、その答えの一端が見つかるかもしれません。

次回からは、イサク、その子ヤコブ、そしてモーセの話を書ければと思います。

中東問題を理解する上で、参考になれば幸いです。

今回も長くなり恐縮です。
m(_ _)m

それでは、また。

(つづく)

(2023年11月5日投稿)

つづきはコチラ
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