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【中東問題を理解するvol.3】旧約聖書の歴史(2)

イスラエルとパレスチナ・ハマスを巡る、
複雑な中東問題。
自分自身の整理のため、
ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の歴史を、
最初からザックリと追ってみるシリーズ。
旧約聖書の歴史を辿りながら、問題の本質を探ります。
教義の解釈など、理解不足の点はご容赦ください。
あくまで、自分が中東問題を理解するためのメモの公開となります。

前回の記事はコチラ
 ▼▼▼


(3)カインとアベル

人はその妻エバを知った。彼女はみごもり、カインを産んで言った、「わたしは主によって、ひとりの人を得えた」。
彼女はまた、その弟アベルを産んだ。アベルは羊を飼う者ものとなり、カインは土を耕す者となった

(創世記4章1、2節)

エデンの園を追放されたアダムとイヴの間には
カインアベルという兄弟が生まれます。

成長した2人の息子、
兄のカインは、畑を耕し作物を得る農夫に
弟のアベルは、羊飼いとなります。

兄弟は、自分の仕事こそが素晴らしいと誇りを持っており、そのためいつも口論が絶えませんでした。

ある日、兄弟は自分たちの収穫物を神に捧げます。
兄のカインは農作物を、弟のアベルはよく肥えた羊の初子を持って行きますが、神はカインの農作物には目もくれず、アベルの羊のみを受け取ります。
あまりの屈辱に、カインは目を伏せたと言います。

強い怒りと嫉妬に駆られたカインは、アベルを野に連れ出し、そこでアベルを殺してしまいます

これが、人類最初の殺人です。

嫉妬や憎しみ、殺人が、聖書に書かれているのが、日本人にはよく理解できません😶
しかも、神がカインを無視したことが原因ですからね💦

住んでいる地域や民族によって、伝えられる教訓が異なっているのでしょう。

大地に流れたアベルの血の訴えを聞いた神は、
敢えてカインに、弟がどこにいるか尋ねます。
しかしカインは「知らない」と嘘をつきます。

これが、人類最初の嘘です。

こうして罪を重ねたカインに対し神は
「お前は呪われた。もはや大地はお前のための作物をもたらしはしない」と告げ、カインは罰として世界を放浪することになります。

放浪先で民衆から殺害されることを恐れ、神に救いを求めるカインに対し、神はカインを殺す者は七倍の復讐を受けるよう刻印を与えます。

恐ろしいなぁ。
ところでこのカインを殺そうとする民衆って誰だろう?
聖書には書かれてませんが、普通に考えると、最初の人類、アダムとイヴの子や孫、ひ孫ということですよね。カインとアベル以外にたくさんの子がいたのかもしれません。

親のアダムとイヴは、
誘惑で約束を破って、責任転嫁で楽園を追放され、
その子のカインは
殺人を犯すわ、嘘はつくわ、
その一族は
放浪する本家の長男を命を狙い、それなのに
殺すと七倍の復讐を受ける😑

この辺りが日本人の感覚や価値観とは違いますね。
人は随分と罪深い生き物なのだろうか…。

さて、こうして神によって追放されたカインは
放浪の果て、エデンの東にあるノドの地に辿り着きます
この地でカインの妻は息子のエノクを産みます。
妻はカインの妹(または姪)とされます。

カインは、神から離れて、この世を自分の天国にしようと思い、長男エノクが生まれた時、立派な町を作ります。そして、その名が永久に崇められるように、その町の名をエノクとしたのです。

その後、カインの子孫は増えていき、
人類の半分がカインの末裔となります。

カインは殺人罪を犯して悔い改めなかったけれども、神を恐れていました。

しかし、カインの子孫レメクは、
人を殺しても神を恐れず、かえってそれを誇り、嘲り笑う始末。
更に不道徳にも、2人の妻を娶り、多妻の習慣を始めます。
妻の一人はアダ(楽しみ)、もう一人はツィラ(飾り)という意味の名前でした。
この名はカインの社会の特長を表わしています。
つまりカインの末裔は、虚飾、快楽、贅沢にふけっていたのです。

レメクの3人の息子は
家畜を飼って天幕(テント)で暮らす遊牧民の祖
竪琴や笛を奏でる音楽家の祖
青銅や鉄で様々な武器や農具を作り販売する職人と商人の祖
となります。

生まれながらにして罪深い心を持っているとされるカインの子孫たちは、神との関係を断ち、自らの欲望を満たす物質社会を形成していきます。
この後のノアの大洪水で滅ぼされた人類は、主にカインの子孫たちだったと言われています。


(4)ノアの方舟

そこで神はノアに言われた、「わたしは、すべての人を絶やそうと決心した。彼らは地を暴虐で満たしたから、わたしは彼らを地とともに滅ぼそう。」

(創世記6章13節)

旧約聖書で最も有名な話が
「ノアの方舟(箱舟)」
多くの人がよく知る話ですが、細部はあまり知られていませんね。

カインとアベルという2人の息子を同時に失ったアダムとイヴは、神から新たにセト(セツ)という息子を授かります。この時、アダムは130歳でした
(アダムは930歳まで生きています)。

このセトの子孫からノアの方舟で有名なノアが誕生していくことになるのです。
アダムから数えて十代目の子孫です。

この頃、人類は地上に溢れていましたが、
神を信じるセトの流れを汲む一族と
神を恐れないカインの流れを汲む一族とに分かれていました。

折角創ったのに、堕落した人間を見た神はうんざりして、一旦人類を滅ぼして、全てを白紙にしようと決めました。

但し、乱れきった世界で唯一、神を信じる正しい人間のノアだけは救おうと神は決め、ノアに方舟を造るよう命じます。
神は方舟のサイズから構造、製造方法、動物を一つがいずつ連れて入ることなどを細かく指示します。
人々が嘲笑する中、方舟を完成させたノアは、妻と3人の息子と嫁、そしてあらゆる動物のつがいを乗せました。
その時、ノアは600歳。
間もなく大洪水が起こり、40日もの間、地上に降った雨で全ての生き物は死に絶えました。
雨が降り出してから150日後、ようやく水は減り始め、方舟はアララト山の上に止まりました。
水の勢いが止まり、およそ2ヵ月が経った後、ノアが放った鳩は、オリーブの若葉を加えて戻ってきます。
地上から水が引いた証でした。

この時から、鳩は神と人間の和解のシンボルとなり、平和の象徴となります。
因みに「鳩=平和」のイメージは、画家ピカソによって広められます。

その後、神の命令で方舟を降りたノアたちは
神に感謝を捧げます。
神はノアと家族を祝福し、
「生めよ、ふえよ、地に満みちよ」と命じます。
そして、今後生き物を絶滅させる大洪水は起こさないと契約。その証として、空に美しい虹をかけました。

トルコ、イラン、アルメニアの国境上に実在するアララト山(提供:写真AC)
(引用:マップラボ)

因みに、神が指示した方舟のサイズは
長さが約137メートル、幅が23メートル、高さが13.7メートルという超巨大サイズ。
とはいえ、想像がつきずらい💦

原寸大のノアの方舟/(c) Ark of Noah Foundation

2012年、オランダの建築業者ヨハン・ハウバース氏が、4年の歳月と400万ドル(約4億3千万円)を費やしてノアの方舟のレプリカを作成したというから驚きです。
こちらは長さ125メートルに幅29メートル、高さ23メートルで、一度に5千人を収容できるそう。

なお、札幌にある「さっぽろ創世スクエア」の高さが124メートル、地上28階ですから、これを横に倒した位の大きさの船だったのかもしれませんね(本当かな???)

さっぽろ創世スクエア(札幌市役所の展望台にて撮影)

大洪水を生き延びたノアには3人の息子がいました。
セムハムヤペテの三兄弟です。

この三兄弟がアララト山を下りて各地に赴きます。
人類はこの3人から増え広がっていくことになります。

長男セム
イラン、イラク、シリア辺りに広がり
後のユダヤ人アラブ人など、中東の諸民族の祖先となります。
ですから、このグループを
「セム系民族」とか「セム語族」と呼びます
(この名称はよく聞きますね)。

次男のハム
西の北アフリカに行き、エジプト人北アフリカの民族の祖先になったとされています。

三男のヤペテ
北に上がり、黒海とカスピ海あたりからトルコ、ギリシャ、ヨーロッパ南部に広がって、ヨーロッパ人の祖先となったと伝えられています。

つまり、ユダヤ人アラブ人といったセム系エジプト人ヨーロッパ人も皆、ノアの子孫ということになります。


さて、方舟を降りたノアは、農夫となり、ぶどう畑を作り始めます。
ある時ノアは、収穫したぶどうで作ったぶどう酒を飲み過ぎて酔っ払い、裸で眠り込むという醜態を演じてしまいます。

これを最初に見つけたのが、次男のハムでした。
ハムは面白がって、セムとヤペテに伝えます。
その話を聞いたセムとヤペテは、父の醜態を見ないように後ろ向きで近づき、父の尊厳を損ねないように着物をかけてあげます。
酔いがさめて、その話を聞いたノアは大激怒。
セムとヤペテに祝福を与える一方で、ハムに対し
「(ハムとその子孫)カナンは呪われよ。奴隷の奴隷として、兄たちの子孫に仕えよ」
と呪いの言葉をかけたのでした。

カナンはハムの息子。ノアにとっては孫となります。息子ではなく、孫を呪ってしまった💦
このことは、後に約束の地(カナン)にいたカナン人が、兄セムの子孫に奴隷として仕えることを示しているとされます。

何ともまぁ、難しい一族なのですね😰


(5)バベルの塔

 これによってその町の名はバベルと呼ばれた。主がそこで全地の言葉を乱されたからである。主はそこから彼らを全地のおもてに散らされた

(創世記11章9節)

ノアの息子、セム・ハム・ヤペテは、当然同じ言葉を喋ります。
彼らは神の命の通り、各地に分かれ、子孫を増やしていきます。

やがて、次男・ハムの子孫の中から、世界で最初の権力者となるニムロデが誕生します。
ニムロデは、領土を広げて様々な町を建設します。

ニムロデが建てた町の1つであるバベルの人々は、
頂が天に届く塔を建てて、名をあげて、民が散るのを免れよう」と言い
レンガとアスファルトを使って巨大な塔を作り始めます。

これを神に対する傲慢さの表れとみた神は、
改めて人間に罰を与えます。
彼らが一致団結して協力できないようにするため、喋っている言葉をバラバラにして、コミュニケーションがとれないようにしました

このため、急にその工事現場は大混乱に陥り、人々は塔を去っていき、この塔は未完成に終わります。
これが「バベルの塔」
「バベル」とは「混乱」を意味する言葉です。

人間の愚かさが神の怒りに触れ、言語を分かれさせ、民は世界の全面に散らされてしまいました。


参考
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ここまでが、何となくよく知る「寓話」としての旧約聖書ですね。
いわば、中東問題を語るうえの前哨戦という段階の話です。

次回は、神から約束の地を与えられたアブラハムの話を書く予定。
この「約束の地」が、現在のイスラエルとなるのです。

中東問題を理解する上で、参考になれば幸いです。

今回も長くなり恐縮です。
m(_ _)m

それでは、また。

(つづく)

(2023年11月3日投稿)
(2023年11月6日加筆修正)


カインとアベルの話をモチーフにした名作
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エマ・ワトソンがかわいい💛
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つづきはコチラ
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