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ラブホバイトのお話!

はじめに、全然関係ないんだが私は仕事の合間にリフレッシュする場合はペットショップや動物愛護センターなどに立ち寄る事が多い。

昼寝をしなきゃもたないような体力を使う仕事では無いし、疲労感のほとんどは気苦労が原因だから気持ちをリフレッシュするのが大切だと思っている。

そして動物を見る事で私はリフレッシュできる。

今日は初めてモモンガを手のひらにのせさせて貰った。

妖精か!

丁度お昼寝中(夜行性)だったが、手のひらにすっぽり収まる小ささと寝起きの顔がとんでもなく可愛い。

「飛びますか?」

「ええ、部屋で飛びまくります」

我が家はペット禁止だが恐らくハムスターくらいならオッケーだと思う。モモンガはハムスターと同じくらいのサイズだったし「飛ぶハムスター」って事で許容されるかも…

などと考えてしまったが、今回は後ろ髪引かれつつ退店した。

動物となると見境なく飼いたくなる悪癖をなんとかしなければ。

ラブホバイト

中学の頃からアルバイト道を歩み始めた私。

高校になると雇ってくれる業種も一気に増え、選択の幅はかなり広がった。

学校に行くよりバイトする方が自分にとっては必要だったので、頻繁に学校を休んでは日雇いの現場仕事やスーパーのバイトなど多くの仕事を経験した。

高校3年の頃、ふと求人雑誌を眺めているとラブホテルの清掃バイトの募集が載っていた。

時給も良く、学校や自宅からも遠くない場所だったし何よりラブホテルに途轍もなく好奇心を刺激された。

当時、ほとんど毎日のように深夜まで繁華街で遊んだりしていた割にラブホテルにはまるで縁のない色気のない生活をしていた。

後学のため…という訳でもないが後々恥をかかない為にも知っていて損はないだろうと言う理由もあり、即座にバイトの面接に行き翌日から働くことになった。

時間は放課後から夜22時まで。

私の働いていたホテルでは22時以降は宿泊利用のお客さんばかりになるから、22時までと朝が忙しいのだった。

因みに面接をしてくれた責任者の方は手首までカラフルな和柄の入った「そのスジ」の人で、勿論笑顔で面接してくれたのだが「遅刻と無断欠勤だけはしないようにしよう」と思わせるに充分な迫力があった。

私のような清掃スタッフは同世代の女性が2人、母親世代のおばちゃんが1人、そして私の4人だった。

待機部屋(6畳くらいの洋室)で基本待機して、部屋が空くとそこに清掃に向かうのだが、暇な時はめちゃくちゃ暇で部屋でずっと喋ってるだけだった。

掃除は2人1組で一室を清掃するようになっていて、私は浴室とベッドメイクが主な清掃箇所だった。

ラブホテルというのは、人によって使い方が本当に様々で使った人の性格というか本質が垣間見える。

「本当にベッド使ったのかな?」と言うくらい綺麗な部屋もあれば「嘘だろ?」って言うくらい破滅的に汚れた部屋もあった。

ベッドで言うと血まみれはザラ。むしろ血を見ない日はないレベルだったから、そのうち何とも感じなくなった。

吐瀉物が撒き散らされたシーツもあったし、理由はわからないが大量のタバコの吸い殻が掛け布団の下に隠されていたこともあった。

まぁその辺は慣れだった。そういうものは、すぐに何も感じなくなる。

困ったのはお風呂だった。

皆さんお風呂で遊ぶのが好きなのだろう。お湯にバブルを発生させて泡泡にするのは良いのだが、お湯を抜いてない場合、この泡がなかなか流れてくれない。

掃除の時間がやたらかかってしまうのは不愉快だった。

よく遭遇したのは避妊具に何か液体が入った状態で結ばれて水風船のようになったまま放置されてる事だ。

中身が果たしてお湯なのか、それともそれ以外なのか怖くて確認できなかったのだが、いまだにアレは何だったのかと思う。

極め付けは便だ。

清掃をしに部屋に入るなり嫌な匂いがする時は大抵風呂場に便があった。

そう言うプレイなので家でやる訳にもいかずホテルでやるのだろうが、掃除するこっちは本当に辟易した。

まさに「クソ野郎!」だ。

そう言うクソな掃除も割と頻繁にあった。際どい趣味の人って意外に多いんだなと思い知った。

アレも出る。

バイト開始してすぐの頃、同じ清掃バイトのおばちゃんから霊が出る部屋の話を聞かされた。

「501号室は、掃除してると人の声が聞こえたりするよ。」

出来れば教えないで欲しかったのだが、否応なくその話は記憶された。

ある日まさに501の清掃作業をする事になったのだが部屋に入るなり、消えていたテレビの電源が勝手にオンになった。

まだ液晶じゃなくブラウン管の時代で、テレビは部屋の角に斜め向きに配置されていたのだが、リモコンには勿論触れていない。

「嘘だろ…」

とりあえずスイッチをオフにして風呂清掃に入ると、今度は室内の何処かから女性の話し声がボソボソと聞こえる。

ラブホテルだから防音はしっかりしていて、罷り間違っても隣室の話し声など絶対に聞こえる筈はない。確実に「この部屋」の何処かから聞こえているのだ。

その日はたまたま人手が少なく、部屋にいるのは私だけだった。

もう気持ち悪くて掃除もいつもより手抜きで終わらせて、そそくさと退散した。

その日から気になって他の人とも話したのだが、不思議な事がわかった。

501だけ何故か最後までお客さんが入らない事がほぼ毎日起こっていたのだ。

お客さんは501のことなど知る由もないのだから、偶然なのだろうが偶然が毎日続くのは気持ち悪かった。

私が働き始めて数ヶ月した頃、10ほど年上の女性が新しくバイトで入ってきた。今度は私がその人に清掃を教える立場になり2人1組である日501の清掃に入った。

勿論、霊の話など伝えたら仕事に支障を来たすのであくまで他の部屋と同じように501に入ったのだが…

入るなり、そのお姉さんが

「あ、ここ、います」

だと。

「え?」と私が訊き返すと「この部屋、女の人がいます」と教えてくれた。

「どう言うこと?」と再び聞くと

「テレビの後ろに女の人がずっといるんです」

いやいやいや…もうそういうのは言わずに胸にしまっておいてよ…

何故テレビが勝手についたのか、一瞬で理解できた。

その女の人はテレビをつける事で視線を自分に向けたかったのだろう。勘弁してくれよ。

新しく入ったバイトのお姉さんは、やたら霊感が強いらしく501に関しても部屋に入るなりテレビの後ろに立つ女性が見えたらしい。

それ以来本当に501の掃除が嫌になったが、とりあえず会釈だけして適当に掃除を済ませるようにした。

今日、たまたま仕事でそのホテルのあたりを通ったら、ホテル名は当時と違う名前になっていたが建物自体は変わってなかった。

内装工事はされてるのだろうが、果たして今も501にその霊はいるのだろうか。

今となっては確認する術もないが。

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