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「遠江 浜名之湖堀江舘山寺引佐之細江」−キュと左右を詰めたら迫力アップ−『大日本六十余州名勝図会』

昨日は初めてコンテストなるものに投稿してみました。
投稿してどうなるのかわかりませんが、浮世絵から離れて2000字くらい描くことって最近なかったので楽しかったです。

そういえば西加奈子さんの新刊が4月に出るそう。
ご自身がカナダに在住中に乳がんに罹患し、闘病した際のお話がノンフィクション本として出版されるそう。
西加奈子さんは「女」(もちろん男女関係なく)として生きる者にそのままで生きていていいんだと諭してくれるお話と文章が大好きでほとんど読み潰しています。
違う作家さんの本を読んだ後に西加奈子さんに戻ってくると陳腐な表現ですが、心が落ち着くのです。
エッセイはいくつか読みましたが、ノンフィクション本となると癌になった彼女の心の弱さも強さも綴られているものですから自分に響くものがあると思います。
闘病に関するノンフィクションですので発売を「楽しみに」しているというのは表現がおかしいですが、心待ちにしています。

そんな西加奈子さんの新刊を早く読みたい今日も広重。

今回は『大日本六十余州名勝図会』の「遠江 浜名之湖 堀江舘山寺 引佐之細江」です。


国立国会図書館蔵

ファーストインプレッション

大きな川がうねっていますね。これは川なのか?
副題を見ると浜名湖?引佐の細江?のどちらかだから川ではないのかな?

浜名湖って湖というのにはグレーで、海とひと続きなんですよね。
だからこの絵もその海と湖の境目を描いているのかもしれません。

堀江舘山寺というのは画面左にある建物群の中のどれかですね。
山に登るための階段手前にある岩二つが舘山寺に立ち入るために一礼しなければいけない感を醸し出しています。

水かさが増したら画面左の砂州の上の家が危ない気がしますが、関係なく数軒建っている。
岸に船がいくつも並んでいますが、その所有者たちでしょう。

大きくうねっている川のような水の続きが、海を連想させるくらい迫力のある一枚です。

今回はこの絵の描かれている浜名湖、舘山寺、引佐の細江の位置を確認するのと、今回の絵の種本を確認したいと思います。


浜名湖

静岡県の愛知県に最も近い水辺が浜名湖ですね。

このように海と続いている疑惑のある南部。
もっと寄って、舘山寺と引佐を見つけてみます。


一つ上の地図の「浜名湖パルパル」とある場所に舘山寺は位置していますね。
もっと海に近い所を描いていると思っていましたが、実は結構北部。



舘山寺がこの突起の部分だとしたら、描いているのは東名高速のE1あたりからでしょう。
「浜名湖オルゴールミュージアム」と書かれているところに砂州が続いているので意外と近くから描かれている気がします。


引佐についてですが、引佐と調べると赤の点線のエリアが出てきます。
引佐の細江というと、そのあたりから続いている川が湖に続くまでの江のことを表しているのでしょうね

位置関係は把握できました。
種本を見てみます。


国立国会図書館蔵


『東海道名所図会』第6巻 「遠湖 堀江村 舘山寺」です。
広重はこの『東海道名所図会』の絵を種本として今回の絵を描いたと言われています。
確かに砂州に船がいくつも並んでいるところや、手前の小山に一軒「水神」が建っているところ、階段の手前に岩が二つ並んでいるところなど、共通点はいくつも上がりますね。 

ただ、広重の絵では大きくうねった川のように描かれていた水辺が、名所図会では入江のように少し膨らんだ水辺のように描かれています。
実際に見ると、マップで見たようにまあるい湖になっているのでしょうけれど、広重は実際にここを模写できなかったからか川のように描いています。

もちろん名所図会のようにしっかり湖として写実的に描くのもヨシですが、広重のようにうねりを描けば画面に動きと迫力が生まれますね。
広重びいきのような感想ですが、竪絵ならではの迫力の出し方を最大限に活かしている一枚だといえます。

これは湖だけではなく、舘山寺の描かれ方も然り。
もっと緩やかな斜面であるはずが、広重は少し傾斜の強い二つの丘で表現します。
緩やかに描いていたら山が入りきりませんもんね。
写実的ではないけれど、一枚としての満足感が大きな作品となっています。

今日はここまで!

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