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080 メタで語る『ガールズバンドクライ』④


 西崎義展は『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』に関して、確かファンに対して「これで最後」という意味のことを言った。安彦良和は『機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙』の公開に際し、「パート2はありません」と明言した。そして『超時空要塞マクロス 愛・おぼえてていますか』のパンフに〈「マクロス」は終わった〉の見出しがあった。
 しかしさらヤマと同じ1978年に放送された2でパラレルワールドを作り、ヤマトシリーズが(一旦)完結したのは83年。ガンダムシリーズは82年のめぐりあい宇宙公開から三年後、『機動戦士Ζガンダム』が始まった。マクロスシリーズも放送10周年でⅡが製作される。この三作品、形態は違えど結局今でも製作され続けている。
 いずれも綺麗に終わっていれば上質なポップスとしてアニメ史、大衆文化史に刻まれたはず。しかし続編を作ったため(ヤマトシリーズも復活篇やYAMATO2520がある)、それぞれ良くも悪くも、世界観とビジネスモデルが形成されてる。
 そしてガルクラである。私は回が進むにつれて終わりがあるのか、終わる必要があるのか疑問を抱き始めていったのです。もちろん今週で一旦終わり、後は販売実績や評判で二期や(新作でも編集物でも)劇場版の企画が持ち上がってくることでしょう。そしてめでたく劇中バンドのトゲナシトゲアリは武道館でワンマンライブを成し遂げ、井芹仁菜は「自分は間違ってない/間違ってなかった」を証明したとする。しかし、「それがガルクラか?」
 よしんば大願成就できたとして、それは犠牲と競争の結果、心身ともにボロボロになって獲得するものなのかも知れない。そうなれば仁菜ちゃんは空しさを感じるかも知れず。
 しかしそれほど苛烈な成り上がりストーリーでないにしても、「その後どうする?」。題材はもちろんテーマもロックと明言し、これまでの回でも安易なハッピーエンドにしなかったから、武道館の意味、武道館公演以後を物語る意味、意義があると思う。それはヤマトやガンダム、マクロスが綺麗に終えられなかった現在と違い、ロックがテーマのガールズバンドクライ、安易な終幕は許されないプロジェクトと言うことです。
 ではどこまで描くか。リアルのトゲナシトゲアリの状況も関わってくるけど劇中で考えても有名になるほどステージが上がり、関わってくる人も大物になってくる。今週で終わる第一期は仁菜ちゃんは身辺の人間だけに関われば良かったけど、武道館でやれるほどのバンドになれば時の人として、マスコミが黙っていない。それに仁菜ちゃんはどう対処するのか。そして新しい目標はあるのか。そんなドラマをガルクラなら出来そうな気がするのです。
 その結果ダイダスを完全に追い抜いて海外に舞台を求め、武者修行の旅に出る展開はどうでしょうか。円安だから最初の金の工面は苦労しそうですが、小さなライブハウスで渡り歩いたりラジオでも出演できれば、Japanese girls bandとして割と好意的に受け止めてもらえるはず。それを手掛かりに世界的なバンドに成長/膨張する物語を見てみたい。
 もちろん有名になることと引き換えに心身ともに憔悴する時期もあるはずで、そこがトゲトゲの最大の危機になることでしょう。有名になれば社会的な責任を負うことになるので、そこで仁菜ちゃんは正しさと言うものを再考するかも知れません。そんな深みのある物語をガルクラならなし得るかも知れないと、私は大いに期待してるのです。


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