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Oh! しまった!! 日々のあれこれ随想録

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Oh! しまった!! 日々のあれこれ随想録

✑ Webマガジン '6ropeway6' にて更新中 ✑ vol.1~65

ちゃんと言うよ

最寄り駅が三つある。それぞれをABCと呼ぶとして。 これまでの人生のほとんどで徒歩20分強のA駅を利用してきた。しかし、ここ一年は路線の関係でB駅を利用している。こちらは徒歩25分。 けれど、このGW明けに定期が切れるタイミングであったり、他にも様々な理由で、「C駅を利用できないか?」という考えが浮上した。 とはいえ、C駅にはほぼバスでしか行ったことなく、徒歩での所要時間は未知数だった。Google Mapでは徒歩25分とあるけれど、B駅は20分という検索結果からして私の足

冷蔵庫が冷蔵庫でなくなるとき

職場の冷蔵庫に入れていた、紙パック入り500mlくらいのアイスコーヒーの原液。 ランチ終わりにデスクへ戻ってから、さてアイスコーヒーでも薄めて飲みますかと冷蔵庫の奥から取り出し、キャップを開けてそうっとマイボトルに注ぐ。が、なかなか出てこない。まぁ、まぁまぁ飲んだし、でもまだ三分の一くらいは残ってるよねぇ、と根気よくゆっくりと慎重にパックを傾ける。あまりドバっと注いでしまうと、水で薄めても濃くなってしまうのでいけない。ゆっくり……そうっと……ゆっくり……そ……全然出てこん!!

パルムの棒

パルムの棒に心を掴まれている。 6本入り箱アイスのパルムのレモンチーズケーキ味みたいのが美味しそうで年末に買ってきた。 単品で売っているパルムよりもすこし小ぶりなパルム。 食べ終わった手の中に残った、やはり小ぶりな棒が可愛らしくて、「捨てずになにかに使えないかな」と見惚れてしまう。 1本目を食べたときも、2本目を食べたときにも。 なにかクリーム状のものを掬うときのアレとか、植木鉢に挿す名札とか? いや、それは要らない。そう思ってあらためて見つめる。いろんな角度から。手触り

真砂さんと木のスプーン

真砂さんは私より一ヶ月あとに同じ部署にやってきた派遣さんだ。 マスクをしていても美人さんであることは明白で、ハツラツとしていて、それでいて控えめで、ちょっと天然さんでもある。 真砂さんとは、机が遠いのであまり絡むことはないけれど、お昼にレンジでご飯を温める仲間だ。 私からくらべてずいぶんと真砂さんは少食っぽい。 「ピスタチオクリームにハマっているんです(笑)」 と冷蔵庫からたぶんピスタチオクリームを塗ってきた食パンサンドを取り出すところを二度は見た。食パン2枚を挟んで半分

おばんですの力

数日前にプチ衝突してからほとんど口をきいていない母が、夕食どきになっても起き上がってこず、さっき頭痛いって言ってたからそのせいか、家事も放置気味だったけど今日あたりからまた夕飯の支度をするか、と台所に立つと家の電話が鳴った。 普段なら母が出るのだけれど寝入っているので仕方なく私が出る。 「はい」と素っ気なく応じると、受話器の向こうで聞き慣れない男性の声がたどたどしく「お、おばんです」と言った。母の故郷・秋田のおじさんだった。「おばんです」は北国での「こんばんは」だ。 拍子

Gくんへ

『Gくんへ』 今までおつかれさまでした! Gくんとは部署が違ったのであまり話す機会はなかったけれど、私は勝手にGくんとは仲良くなれそうな気がして親近感を持っていました。 Gくんというアルバイトの男の子が別の部署にいるとは聞いていたけれど、ついに対面して「よろしくお願いします」とお互いに挨拶をした日、午後になって私は地下のメールボックスから届いた郵便物を取り出してオフィスへ戻るまでのあいだに、取り出したときにはあったはずのハガキが一通ないことに気がつきました。 地下へと

この父にして

オカシな人ほど、憎いような愛しいようなで、ムカつく。 ある休日の昼下がり。台所で父が、手に余るほどのでっかい球体を「おっとっと」とニヤニヤしながら林檎のように皮を剥いてるのは、よく見たらメロンだった。 「何してんの???」 とギョッとしている娘に父は、 「ひひ。いつかやってみたかったんだ」 そうしてまるっと剥き終わると、瑞々しい黄緑色の球にそのままあんぐりとかぶり付いた。まるで桃を丸かじりするかのように。 ‘この人やっぱり、オカシな人なんだな’ じぶんの父のことを

膝上短パンはやめろ

お願いだから男子、膝上短パンはやめてほしい。ドキドキしてしまうじゃないか。 * 先日、初めて行く美容院で担当してくれたのが小綺麗なギャル男さんだった。小綺麗にセットされた茶髪ヘアに、剃り整えられた髭、爽やかな白シャツ、そして同じく白の膝上短パン。膝から下が、完全にむき出し。 もうね、昨今多くのオシャレ男子たちが短パンをはきこなしているけれども、彼らの御御足(おみあし)見て思うことは一つ。 「布団の中であの脚がじぶんの脚に絡んできたらどんなだろうか?」 ……ってこと。

板垣さんがいない

冬の月曜日の朝。職員通用口の壁にずらっと掲げられた名前札からじぶんの札をひっくり返そうとして、あっと気がついた。 今日からはもう、板垣さんがいない。 夏から一緒に働いてきた板垣さんは、一月いっぱい迄の任期で、先週末の金曜日が最後の出勤日だった。 アンパンマンに出てくる可愛いうさぎのキャラクター「うさこ」に似ていた板垣さんは、可憐で儚げで、互いにお酒が好きなことからよく飲みに行き、しっかりしているからとてもたすけられたし、ふんわりしいてるけど芯があって、きちんと意見を言う

マヨネーズはやめろ

やめてほしい。だって好きになってしまう。 * とある集まりで振る舞われる料理づくりを手伝っていたときのこと。 私は、メインで料理を担当していた塩顔男子の下で、たまごサンドイッチの中身をこさえていた。ゆで卵をざく切りし、マヨネーズで和える。簡単である。しかし、最終的なテクスチャーの仕上がり判断はメインさんに委ねよう、と彼を呼んだ。 「まだカタいですかね?」 混ぜまぜしながら尋ねると、男子は「かもですね」と言って業務用のでっかいマヨネーズを手に取って、私が腹の前で抱えてい

半分以上は損してない

五目チャーハンを「ネギ抜き」で頼んだら、卵オンリーの“一目チャーハン”が出てきた。 それって…… 卵チャーハンじゃん!(↑実際の写真) どこに行ったの? あとの三目は一体どこに!? 百万回以上言われてきた、 「ネギが食べられないなんて人生の半分以上損してるよねー」 という心ない言われようを、見える形で表してくれたのがコレ? ネギが食べられないなんて不届き者は五目のうち四目どころか一目しか食べられないってこと!? まじだ。まじで、半分以上損してた。 泣きたい。 だ

浮かれて笛吹く娘じゃない

フランベというには大きすぎる炎がフライパンから上がり、火災報知器が鳴ってしまった。 「ひゅるるるー火事です……ひゅるるるー火事です……」 危機感が全くないひゅるひゅると空気の漏れた笛の音に続いて、落ち着いた女性の声が「火事です」とアナウンスする。いや、火事じゃないし。煙スゴいけど、火はもう消えたんだってば。 それでも、ここキッチンのみならずリビングや自室とも連動しているらしい各部屋の火災報知器から「ひゅるるるー火事です」「ひゅるるるー火事です」と警報がこだまして大"輪唱"

短編恋愛小説|花の名前

「クボキさん(仮名)」と名付けたのはあーちゃんだった。  駅から会社までの通勤路の大通りで、毎朝すれ違う男性がいた。スッと美しく端正な顔立ちで、大通りにあるビルの一つにいつも吸い込まれるように出勤していく。私はいつしか、通りに咲く花を目で愉しむように、彼と往き違う朝の短い一瞬を楽しみにするようになっていた。 「最近ずっと見かけないんだよね、クボキさん」  会社の休憩スペースで昼の弁当を食べ終わり、お茶でひと息をつきながら同僚のあーちゃんにこぼした。 「あぁ、朝?」 「う