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冷蔵庫が冷蔵庫でなくなるとき

職場の冷蔵庫に入れていた、紙パック入り500mlくらいのアイスコーヒーの原液。
ランチ終わりにデスクへ戻ってから、さてアイスコーヒーでも薄めて飲みますかと冷蔵庫の奥から取り出し、キャップを開けてそうっとマイボトルに注ぐ。が、なかなか出てこない。まぁ、まぁまぁ飲んだし、でもまだ三分の一くらいは残ってるよねぇ、と根気よくゆっくりと慎重にパックを傾ける。あまりドバっと注いでしまうと、水で薄めても濃くなってしまうのでいけない。ゆっくり……そうっと……ゆっくり……そ……全然出てこん!!! なんだどういうこった!?!? と、パックを手に考えを巡らす。と、気づいた。パックがめちゃくちゃ固い。こ、凍ってるんか!!! 誰だ、冷蔵庫を冷凍庫ほどにキンキン冷え冷え設定したのはー!! 怒りも心頭に冷蔵庫を開けて覗き込み、何者かによりひねり切ってあった温度設定レバーをほどほど冷えレベルに戻した。

まったくもう。アイスコーヒーすぐに飲みたい気持ちをどうしてくれるんだよう。原液カチンコチンに凍結しちゃってるじゃないか。仕方なくパックを冷蔵庫の扉側に戻し、溶けるのを待つことにした。そのあいだ、マイボトルにただ水を汲んでそれを飲んでしのいだ。

30分ほど経って、また紙パックを傾けてみたら、チョロチョロチョロ……と溶けた原液がちょこっとだけが出てきた。まぁそれでも水で割ればじゅうぶんな濃さのアイスコーヒーにはなった。

あの昼下がりの、給湯室でひとり、慎重に慎重にアイスコーヒー原液の紙パックを傾けていた永遠のような時間を、返してとは言わない。代わりに、誰かがそれをこっそりと見ていて私を好きになってくれててほしい。望み過ぎだろうか。


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