大島智衣

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大島智衣

恋とじーん|脚本と文 ✑ドラマ脚本作品『恋は湯けむりの中で』放送・配信中 https://www.tvk-yokohama.com/koi_yuke/

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    【連載エッセイ】どうせ“私じゃない誰かを好きな”男子たちの言動について。

  • Oh! しまった!! 日々のあれこれ随想録

    vol.1~65→ https://ohshimatomoe-ohshimatta.hateblo.jp/

  • 鑑賞と随想

    コンテンツレビュー&エッセイ|映画やドラマを観ての随筆

  • 脚本・戯曲/大島智衣

    戯曲『御祝儀を取り返したい女』期間限定無料全文公開中

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頁10「グッジョブです」

なんとなくミーアキャットに似ている人が異動してきた。ひと月ほど前くらいだろうか。 群れでいるミーアキャットではなく、ひとりはぐれてもひょうひょうとキョロキョロしているようなタイプのミーアキャットだ。いや、人だ。 私の視界に届く電子レンジでその人がお弁当を温めるのを4〜5回は見たタイミングで話し掛けた。 一度目は、まさかじぶんが話し掛けられているとは思わないようで流された。 なのでもう一度はっきりと彼の名前を呼んだ。 するとようやく、ミーアキャットのようにキョトンとした顔で

    • 頁9「コマウォ^^」

      数年にわたって敬語でずっとやり取りしてきた仕事相手が、韓国語をほんのすこし聞きかじる程度に知っているようだったので、連日の忙殺ぶりを労うべくメッセージの〆に「パイティン!です」と送った。「ファイト!です」という意味だ。 するとこう返ってきていた。 「コマウォ^^」 おお、と思う。 コマウォは「ありがとう」という意味だ。フランクなタメ語で。 顔文字付きのくだけた「ありがとう」はもはや「サンキュ」くらいのノリではないか。 これが韓国ドラマだったら「ところでお宅、さっきか

      • 頁8「20%引デース」

        早出、ワンオペ、休憩なし、残業── そんな一日を終えて駅にたどり着くと、いつもは眺めて通り過ぎるだけの韓国キンパ(海苔巻き)屋さんの店頭に、 “20%引” シールが貼られたキンパがずらりと並んでいた。 めずらしい光景だった。 プルコギキンパ、野菜キンパ、豚キムチキンパ……どれも人気なのだろう、いつもは売り切れていてその姿を見ることはほとんどない。割り引かれていてもせいぜい10%。 そんな不自然なオールスターズの目の前を、店員さんの「20%引デース」の声を聞きながら通り

        • 頁7「誰にも言ってないんですけど」

          「学生証、失くしちゃったんですよねぇ」 その日初めて会った社会人大学院生とそんな会話の流れになった。 映画観るときとか困らない? と訊ねてから、ああ、映画館とか行かないか……と質問を取り下げるように言うと、 「昨日観に行きましたよ。あまりにも暇で」 暇で映画館……すごいな。 暇って感覚が私にはないぞい。 そう感心していると、 「『◯◯』観ました。あ、違う。『◯◯』は飛行機の中で観たんだった」 結構観るのね映画。ますます感心してから、ふと疑問が。 飛行機の中で一本映

        頁10「グッジョブです」

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        記事

          頁6「入ってます!」

          救命講習に参加した。 心肺蘇生法やAED の使い方など、座学と実技をそれぞれ90分みっちりと。 ずいぶん前にも受けたことがあるけれど、やり方を覚えているかすぐに自信がなくなるので定期的に受けるのがいいのだろう。 実技では4人一組になって、実習人形の命を預かった。 心臓をいい塩梅で押せているか、人工呼吸は肺まで空気を適量届けられているか……実習君の右脇腹からコードで繋げられたメータ― でそれらを計測できるのだが、教官が「やる本人はそれを見ないように! 実際の現場にメータ―

          頁6「入ってます!」

          頁5「ごめんね」が言えない人の「行ってらっしゃい」

          朝、玄関のドアを開けて外へ踏み出した背中に、仲が悪化して久しい父の「行ってらっしゃい」を聞いた。

          頁5「ごめんね」が言えない人の「行ってらっしゃい」

          頁4「もろたやつなんスけどね」

          書きやすいボールペンって、JETSTREAMだけじゃぁ最近ない。 何年か前からサンプルとしてよくもらうボールペンがあって、御社の社名を入れられますよ的な、グッズ商品として展開しているのかもしれない、そのペンが、とても書き良い。 焦がしキャラメルソースくらいインクがねっとりとしていて、ずいぶんとじぶんのポテンシャルより猛々しい筆致に仕上がってくれる。「何卒宜しくお願い致します。」とポストイットにしたためるだけで、お願いした気持ちがずどんと相手に伝わると思える頼もしさがある。

          頁4「もろたやつなんスけどね」

          頁3「充電されていないので出来ません」

          韓国滞在先の部屋には、エアコンはおろか扇風機もないので、せめて小型の扇風機が欲しくて家電店へ訪れた。 手持ち型か卓上タイプ、風音はどれくらいするかなど、実際に見てみたかった。 入店し「何をお探しですか〜?」と定型の挨拶を投げかけてくる店員さんをあいまいな会釈で通り過ぎ、扇風機が見えた二階へ。 扇風機は、そのほぼすべてが大型のもので、USBケーブルで接続する卓上タイプのものが一つだけあった。 ディスプレイは、卓上扇風機ときれいに結ばれたままのUSBケーブルがそれぞれにポツン

          頁3「充電されていないので出来ません」

          頁2「今日はわざわざどうも」

          なにかしら嬉しいメッセージが届くと、この人アカウント乗っ取られてる? とすぐに警戒できる私だ。 「今、忙しい?」なんて送ってきた子も、「アカウント乗っ取られました!! パスワード変えたのでもう大丈夫だと思いますが、また変なメッセージが来たら無視してください。お騒がせして申し訳ございません!!」と最大限よそよそしいエクスキューズをただちに寄越してきたけど、こちらからしたら、わかってた、わかってた! 安心してよ。だって誰もそんなコンタクト私に取ってきたりしないから、怪しすぎるか

          頁2「今日はわざわざどうも」

          頁1 「これくらいが好きっすよ」

          賞味期限を2日過ぎた阿闍梨餅を「俺、これくらいが好きっすよ」と言って、気にも留めずにかぶりついた同僚に、なにかを掬われた。 「これくらいが好き」だなんて、調子がいい(笑)。 誰かのお土産の、残り物の半生菓子・阿闍梨餅。 賞味期限を2日も過ぎれば、あのみずみずしいモチモチさは失われてしまっているだろうことは想像に難くない。“半生”菓子からシンプルに菓子になっているやもしれない。 阿闍梨餅好きの私も一緒に食べてみたけれど、やっぱり惜しい食感だった。 それを、誰かのお土産がい

          頁1 「これくらいが好きっすよ」

          profile

          大島 智衣(おおしま ともえ) 作家 恋とじーん 脚本・戯曲 エッセイ・コラム 掌篇・小説 インタビュー・ライティング……など * 放課後再放送のドラマ育ち。早大卒。「劇団帯留め」を主宰・作・演出。 横浜を舞台にした連作ショートフィルム Life works vol.8『花の名前』(監督 利重剛 '15)で映画脚本デビュー。以降、エッセイ寄稿・連載、シナリオ執筆ほか。 韓国映画・ドラマ、K-POPなど韓国コンテンツ好き。韓国語学留学経験あり。韓国語能力はTOPIK5

          4羽いる!

          今日うれしかったことは、なんと一度に4羽のキジバトを目撃したことです。わーーい。……て、ねぇ? それがなに? って思う人もいるかもです。 キジバトって基本、単独か“つがい”で行動しているようで。 キジバト好きな私は、人知れずキジバトウォッチャーとして日々キジバトの「ホーホー、ッホホー」という鳴き声が聞こえると頭上を見上げてその姿を探し、まんまと見つけると実に満足げにほくそ笑むというバト活をしているのですが、一気に4羽も見たのは初めてだしとってもめずらしいなぁと思ってうれしか

          4羽いる!

          Oh! しまった!! 日々のあれこれ随想録

          ✑ Webマガジン '6ropeway6' にて更新中 ✑ vol.1~65

          Oh! しまった!! 日々のあれこれ随想録

          ちゃんと言うよ

          最寄り駅が三つある。それぞれをABCと呼ぶとして。 これまでの人生のほとんどで徒歩20分強のA駅を利用してきた。しかし、ここ一年は路線の関係でB駅を利用している。こちらは徒歩25分。 けれど、このGW明けに定期が切れるタイミングであったり、他にも様々な理由で、「C駅を利用できないか?」という考えが浮上した。 とはいえ、C駅にはほぼバスでしか行ったことなく、徒歩での所要時間は未知数だった。Google Mapでは徒歩25分とあるけれど、B駅は20分という検索結果からして私の足

          ちゃんと言うよ

          貼って剥がして繰り返し使える袋止めシール

          「お菓子やらパンやらを一気に食べた後に気づく、“貼って剥がして繰り返し使える”袋止めシール見たときの気持ちとおんなじことをあんたには言ってやりたい。 ……いや、シール。気づかずに全部食べちゃったじゃん。っていうか知ってても必要なかったと思うけどさ。だって一気に食べちゃったわけだしさ。だし、これ使う人ってどんな麗しき人? 私みたいな食いしん坊は使うこと一生ないから。貼って剥がして繰り返し袋止めシール使いながらちょっとずつ小出しになんか食べられないから。いや、そもそも、何でこれ

          貼って剥がして繰り返し使える袋止めシール

          軽いパンじゃない

          朝、出がけにリュックを背負ったら「軽っ」と思った。 そうか、今日のお昼は昨日スーパーのヤオコーで買ったパンにしたから、いつも持っていく“ご飯+おかず”のお弁当みたいな重さじゃないんだ。パンって軽いな。 そう気持ちも足取りも軽く家を出た。 * 一日を終えて帰宅し部屋に戻ると、床に置かれたミニポーチが目に留まった。 昨日ヤオコーへ行くときに、重いからとリュックから取り出した非常時用グッズがぎっしりと詰まったポーチだ。 だから軽かったのか今日のリュックは……。 あの軽さ

          軽いパンじゃない