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「ストーリー」と「プロット」の違いと、「ミステリーつきのプロット」への発展

小説について何か書くときに、正直言って「ストーリー」と「プロット」を明確に使い分けていなかった。ごちゃまぜで「筋」みたいな意味で捉えていたのである。

廣野由美子という英文学者が新書でいろいろと文芸批評のテクニックを教えてくれていて大変参考になるのだが、廣野さんの3冊目の新書読んでて、3冊通してここでも「ストーリー」と「プロット」の違いをE.M.フォースターの定義を紹介することで重視していて興味深い。個人的には、僕はE.M.フォースターが大変好きなんですね。Noteにも別記事でE.M.フォースターのオススメ記事書いたくらいだし。これは参考にしなければということで、以下廣野由美子の本からE.M.フォースターを孫引きしてまとめる形で(E.M.フォースターの該当本は入手困難みたい)「ストーリー」と「プロット」の違いを紹介したい。

「ストーリー」…ストーリーは、時間の順に配列された出来事の叙述である。「王が死に、それから女王が死んだ」というのは、ストーリーである。

「プロット」…プロットも出来事を語ったものではあるが、因果関係に重点が置かれる。「王が死に、悲しみのあまり女王が死んだ」というのは、プロットである。この場合、時間の連続性は保たれているが、因果の意味合いが影を投げかけている。

ここでE.M.フォースターは面白い論点を出してくる。"さらに、「女王が死んだ。その理由を知る者は誰もいなかったが、やがてそれは王の死に対する悲しみのゆえであったとわかった」というのは、ミステリーを含んだプロットで、高度の発展の可能性を秘めた形態である。ここでは時間が一時停止し、限界の許すかぎりストーリーからかけ離れている。女王の死に関して言えば、私たちはストーリーならば「それから?」と尋ね、プロットならば「なぜ?」と問う。小説の二つの様相であるストーリーとプロットとの根本的な違いは、ここにあるのだ。"

そう、ここでミステリー小説の萌芽が見られるのだ。現代文学は文学の境界が曖昧になってる。小説の文法を解読しながら読み、この部分はあの分野へ隣接しているとか越境しているとか考えながら読むと楽しいのではないか?

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