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映画感想文│『仮面ライダー ビヨンド・ジェネレーションズ』上の子の映画館デビュー

明け方までグズグズと寝たり起きたりを繰り返し、結局朝の6時前まで頑張ってくれた下の子のお陰で無事に寝不足となって迎えた日曜日。

そんなコンディションにも関わらず何となく出掛けた先で仮面ライダーのポスターを目にした。

3歳児の映画館デビュー

それまで全くそんな気は無かったのに、急に私は上の子を映画館デビューさせてやろうかという気になり、急遽ふたりで初の映画鑑賞をすることになった。

次の回までは時間があったので、開場までに色々と準備を済ませ、余裕を持ってその時を迎える…筈だったが、子供を連れていると予定通りに事は運ばないものだ。5分ほど遅れてシアターへ入り、まだギリギリ明るかった劇場内をスゴスゴと座席へ急いだ。小さな劇場なのと、念の為端の席を取っていたのが不幸中の幸いであった。

父親になって初めて、このアイテムの存在を認識した

暗転までに急いでこの先の展開を説明するが、我が子はポカンとしている。相手は3歳児だ。それが正しい反応だろう。理解が難しいのは私も承知している。現に暗転した途端「なんでくらくなったの?」と尋ねてきたし、「なんでしずかにするの?」とか「なんでしらないおともだちいるの?」とかの返答に窮するような質問は絶えない。その都度小声で話をさせるが、次の疑問が湧き出た時にはもう忘れている。

だけどきっとそれで正しいのだ。我が子よ、君は間違ってないぞ。だから私も辛抱強く何度も同じことを言い聞かせるしかないのだ。そうやって親子は互いに成長してゆくものなのだ。みたいな映画でした

父親だからこそ

というのでは余りにもな感想だが、私は仮面ライダーリバイスもセイバーも観たことが無いし、そもそも1号だって全てを観たわけではない。幼少期はウルトラマンとゴジラで義務教育を終えてしまったので、ライダー自体に詳しくない。従って劇場で仮面ライダーを観るのは私も初めてだ。

ただそんな私でもグッと来てしまうシーンやセリフが幾つか存在した。例えば「約束を破った方が苦しむ」というようなセリフは何だか少し唐突感があったものの、当たり前だけど良い事言うなぁと素直に思ってしまったし、例の親子が新幹線の前で会話するシーンは客観的に見ると笑えるシーンだと思うのに、それとは裏腹に喉の奥には熱い燻りを感じた。苦手な古田新太が少し良いオジサンに見えてしまう程だった。

我が子の映画館デビューをハラハラしながら見守っていたせいか、寝不足のせいか、或いはその両方が作用してのことかも知れないが、我が子も私も90分余りの上映時間を充分に楽しめたのだ。多分もう2度と観直すことは無いと思うが、それでも私の胸の中には「良い作品」として残り続けるのではないだろうか。きっとこの映画には父親になってからでないと感じられないことが多い。となればつまり、私にも父親としての自覚が芽生えつつあるのかも知れない…。

映画の内容について

オジサンの知らないライダー

折角なので内容についてもう少しだけ触れておくと、まずバイクに乗っているのが1号だけだったという事実に面食らった。ライダーってどういう意味だっけ…?と思わずにはいられないが、どうも最近の仮面ライダーはそういうことになっているらしい。私の好きな仮面ライダーはストロンガーアマゾン、そしてカブトゼロワンであり、これらは全話視聴していただけに驚かされた。更に仮面ライダーの象徴とも言える必殺技、ライダーキックもレアな技になっていた。大体が剣で斬撃を飛ばしたり銃で撃ったりといった具合で、そもそも肉弾戦が少なかった。その為格闘戦の迫力は少し物足りない感じがしたが、きっとこれが今のトレンドなのだろう。若しくはソーシャルディスタンスだろうか。

それでも見栄えのするように派手なエフェクトやカメラワークで充分に恰好良く作られていたと思う。最終戦だけは何がなにやらよくわからなかったが、スーパー戦隊のクライマックス的お祭り感があって良かったのではないだろうか。我々親子はゼロワンのエッセンスが活躍していたからそれだけで満足できた。最後のリバイスは初めて格好良いと思えた。やっぱりゼロワンは、いやバッタモチーフは格好良いのだ。

オジサンの知ってるライダー

バッタと言えば1号、そして本郷猛役の彼だが、これも良く演じていたと思う。表情や声の出し方、立ち居振る舞いはかなり当時の雰囲気に寄せられていた。ショッカーの怖さもグッと引き出されていたのではないだろうか。何より変身シーンやライダーキックが現代風にアレンジされていながらも、きちんと特撮で格好良く撮られていたのに好感が持てた。私のようなニワカオジサンはあの辺のシーンだけで結構満足できてしまうのだ。

更に設定も意外と凝っていたと思うし、時間を超えることによる矛盾や不整合にはある程度目を瞑る必要があるとは言え、脚本も面白く纏められていた。少なくとも仮面ライダーセンチュリーの設定自体は面白いし、ある種とても仮面ライダー”らしい”キャラクターなのではないかと思えた。

Marvelに対するDCといった感じで、ウルトラマンとは違ってダークヒーローっぽくて少し薄暗い雰囲気を漂わせているところに仮面ライダーの魅力は秘められているのだ。そういう意味ではリバイスも悪魔の力を借りて変身している(?)点で充分に魅力的なヒーローであるように感じられた。今度きちんと観てみよう。

出過ぎな印象のセイバーたち

ただし、やたらと人数が多く感じられたセイバー勢が、揃いも揃ってキンキンやっているところはどうしても眠くなってしまったし、リバイスもそうだが変身サウンドが賑やか過ぎてワケがわからなかった。ベルトも剣もプラスチック感が強くてどこぞの環境大臣が悶絶しそうに見えたし、どれが誰で何をやっているのかがよくわからなかった。これは多分私がセイバーを知らないオジサンだからであって、全国のチビっ子達にとってはこれが醍醐味なのだろう。

やたらと出てくるなぁと感じられたが、世代交代的な意味を持つ映画のようなので、頼れる先輩として活躍しなくてはならなかったのだろう。その辺の事情を知らずに観ているオジサンからすると、少し出過ぎな印象だった。というだけの話である。

肝心のセンチュリーは

しかし仮面ライダーセンチュリーは良かった。生体っぽいデザインは写真で見るとイマイチだったが動いていると魅力的だ。∀ガンダムのようだという表現が適切かどうかはわからないが、そんな感じだった。

不完全な状態だった筈の初登場時が一番強そうに見えてしまう演出には少し問題があった気もするが、シンプルなベルトは質感も格好良かったし、ヒロイックな配色ながら少し怖さを感じさせる独特のビジュアルは1号を踏襲しつつも新しい風を感じさせる面白いものだった。完全体になった際の変化も最近流行りのゴテゴテ系ではなくて安心できた。仮面ライダーにせよウルトラマンにせよガンダムにせよ、やっぱり初代は偉大なのだ。初代のデザイン無くして現在は無いのだ。

重みのあるライダーパンチ!そして満を持してのライダーキック!は大人でも拳に力が入る良い演出だった。

ラストの必殺技連発シーンでは、少し疲れが見えていた我が子も張り切って腕や脚を振り回していた。このあたりの作りはきっと意図されたものなのだろう。成程なと感心してしまった。

更にはエンドロールで歴代ライダーたちが順番に登場するのも格好良かったし、我が子も妙に興奮していた。まだ「ラ行」が上手く発音できないので仮面ライダーは「かめんだいだー」となり、リバイスは「でぃばいす」のようになってしまうが、歴代ライダーの中で知っているライダーを指さしては嬉しそうに名前を呼んでいた。

なお、1号の事は「いちご」だと思っている

映画館を後に

裏面にはアプリのダウンロード情報が印刷されているだけのカード

それにしても昔は劇場で配布されていた比較的気の利いたオマケが、現代では随分とセコイ物になっていた。時代の流れを感じた。

帰りにはグッズコーナーでメダルをねだってきた渋い趣味の我が子

帰りには我が子が欲しがるメダルを買い、同時にパンフレットも購入した。何しろ私は幼少の頃に劇場での映画鑑賞を終えてから買って貰うこのパンフレットが大好きだったのだ。我が子がどう感じるかは本人次第だが、喜んでくれれば私も嬉しい。

映画の半券を50年先まで大事にとっておくことは無いだろうが、暫くはこの日を思い出すための記念碑として保管しておこう。

おわりに

映画で上がり切ったテンションのままガンバライジングを楽しもうとしていた我が子であったが、最寄りの店舗には無情にも調整中の張り紙がされていたために気分が急降下し、この世の全てを呪うかのような悪態をつきながら妻の腕の中で力尽き、深い眠りに就いた。その後に立ち寄った回転寿司屋で再び勢いを取り戻し、信じられないくらいの勢いで貪り食った挙句に再びゴキゲンの針を振り切ったまま走りながら帰宅した。下の子は何にウケていたのか知らないがキャッキャ言いながら咽ていた。

結果的に2人とも夜更かしになってしまった。私はただただ明日の登園を憂鬱に思いながら、グラスにビールを注ぐのであった。

最後に劇場で映画を観たのは確か上の子が産まれるより前だ。妊娠中の妻と2人で「ジャスティスリーグ」を観たのが最後ではなかろうか。観た映画の内容はどうあれ、今は久々にスクリーンで映画を観られた喜びを噛み締めたい。

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