あきとまさきのおはなしのアルバム

目の見えない里枝子さんと幼ない子どもたちの会話の記録集です。 第1集(1987年)~第…

あきとまさきのおはなしのアルバム

目の見えない里枝子さんと幼ない子どもたちの会話の記録集です。 第1集(1987年)~第4集(1990年)を、シーズンごとに分けて連載します。

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連載1 第一集 ごあいさつ編 『おかあさん 木が あかくなってきたよ』あきとまさきのおはなしのアルバム '87 

【写真・4冊の文集の表紙】 〔写真説明 左から第1集、第2集、第3集、第4集の表紙です〕 ごあいさつ 神山朝子 私の長年の親友・広沢里枝子さんは目の病気で、出産の頃には完全に視力を失いました。見えない暮らしを生きる里枝子さんの「光」となったのは、幼い子どもたちの無心なつぶやきでした。里枝子さんはそれを日々、点字で記録し続けました。 4年にわたる母と子の会話の記録集として完成したのが、この『あきとまさきのおはなしのアルバム』第1集(1987年)~第4集(1990年)です

    • 【サイドストーリー的な特集ページ③ 神山朝子編】

      『おはなしのアルバム』から編集後記を特集してみました。「追記」のみ書き下ろしです。 編集を終えて (第一集1988年5月発行)  年が明けて間もなく、100編を超す会話の原稿が届いた。信州と関東と離れていても、思いは変わらず近くにあった里枝子さんと私の、久しぶりの共同作業の始まり。ワクワクしていた。でもなかなか手につかなかった。  カナタイプで、ていねいに集められた会話はどれも、読む人を意識しない、飾りのないことばで書かれ、なにげない感情のやりとりであるが、不思議なほど生

      • 連載24 第四集 エッセイ編 『お月さまー そこから海が見えるかー!』あきとまさきのおはなしのアルバム '90

        「かけ橋」によせて   広沢里枝子(これは、点字図書館「神奈川県ライトセンター」の点字の機関誌「かけ橋」に掲載されたものです) 皆さん、こんにちは!私は、長野県に住む三十二才の主婦です。網膜色素変性症のために、子供の頃から少しずつ視力が落ちて、今は、光と陰を感じる程度になりました。  神奈川は、私にとってとても思い出深い土地です。考えてみれば不思議な縁なのですが、小学校六年の頃、私をかわいがってくれていた叔母が方位学を信じていて、「南へ移り住めば必ず目が治る」という話し

        • 連載23 第四集 10~12月編 『お月さまー そこから海が見えるかー!』あきとまさきのおはなしのアルバム '90

          十・十一・十二月あき 五才十一か月~六才一か月まさき 四才二か月~四か月 #295 陶芸子供会 先生 「おにいちゃんたちがやるのを見ながらやってみるといいよ」 あき 「いいの!」 先生 「おっ、いいな、いいなあ。おじさん、そういうの好きだぞ」 #296 お月見 子供たちと一緒にすすきを摘んで飾り、ご馳走もそろった。ところが、油断大敵。 私 「あっ、おだんご食べちゃったのだあれ?」 あき 「あきじゃ ないヨ あきじゃ ないヨ。おつきさま、たべたんだヨ。しろいて ビュー

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        連載1 第一集 ごあいさつ編 『おかあさん 木が あかくなってきたよ』あきとまさきのおはなしのアルバム '87 

          連載22 第四集 7~9月編 『お月さまー そこから海が見えるかー!』あきとまさきのおはなしのアルバム '90

          七月・八月・九月あき 五才八か月~十か月まさき 三才十一か月~四才一か月 #274 夏の思い出 まさき 「うみ いった とき、おひさま わらったよね。まさき、ジャバーって おみずんなか はいったから」 #275 レストランで おじさんたち 「おっ、犬がいたんだな」 まさき 「キューちゃんだヨ。あのね、おかあさんは、めが みえないの。だから、キューちゃんが めなんだって」 おじさん 「ホオ、たいしたもんだなあ。ところで、ボクは、何才だ?」 まさき 「3さい」 おじさん

          連載22 第四集 7~9月編 『お月さまー そこから海が見えるかー!』あきとまさきのおはなしのアルバム '90

          連載21 第四集 4~6月編 『お月さまー そこから海が見えるかー!』あきとまさきのおはなしのアルバム '90

          四・五・六月あき 五才五か月~七か月まさき 三才八か月~十か月 【写真・第4集の表紙】 #254 もうすぐ入園 私 「まさきまで幼稚園に行っちゃうと、おかあさん、淋しいなあ」 まさき 「しんぱいすんなよ。また かえって きて やるよ」 #255 通園初日 あき 「まさき、これ きるんだゾ。ヤッホーッ ヤッホーッ ヤッホーッ!あき、ボタン とめて やる」 まさき 「まさき、じぶんで やるヨ。ほら でーきた。ヤッホーッ ヤッホーッ ヤッホーッ!」   バス停でも、 あ

          連載21 第四集 4~6月編 『お月さまー そこから海が見えるかー!』あきとまさきのおはなしのアルバム '90

          連載20 第四集 1~3月編 『お月さまー そこから海が見えるかー!』あきとまさきのおはなしのアルバム '90

          一・二・三月あき 五才二か月~四か月まさき 三才五か月~七か月 【写真・まさき君の絵 おかあさん】 〔説明 たいへんちからづよい線で描かれています〕 #230 雪のおさそい 私 「そろそろおうちに入らなきゃ」 まさき 「でもー、みんなが ここに いて ください ここに いて くださいって いうんだヨ」 私 「みんなが?」 まさき 「うん。おとうさんゆきは(低い声で) ここに いて くださーい ここに いて くださーい。おかあさんゆきは(特別高い声で) ここに いて く

          連載20 第四集 1~3月編 『お月さまー そこから海が見えるかー!』あきとまさきのおはなしのアルバム '90

          連載19 第四集 はじめに編 『お月さまー そこから海が見えるかー!』あきとまさきのおはなしのアルバム '90

          【写真・表紙と裏表紙】 〔説明 鮮やかな黄色の背景の中に、あき君の描く6匹のカニが元気いっぱいに遊んでいます。目もハサミもひときわ大きなカニはお父さんガニでしょうか?全面に小さい砂が散らしてあります。タイトルの文字は、月を模した黄色無地の丸い窓の中に書かれています〕 はじめに   ひろさわ りえこ  こんかいの 「おはなしの アルバム だい4しゅう」は、1ねん かかって つくりました。はしがきを かくには、すこし じかんが たちすぎて しまった きも しますが、わたし

          連載19 第四集 はじめに編 『お月さまー そこから海が見えるかー!』あきとまさきのおはなしのアルバム '90

          【サイドストーリー的な特集ページ②  盲導犬キュリー編】

          愛しの盲導犬キュリー  広沢里枝子 【写真・植田正治(写真家) NHKハート展より】  1998年12月21日に、私の初代盲導犬のキュリーが死んだ。  どうか、ここでは、何度でも言わせてほしい。私のキュリー、私のキュリー、私のキュリー…私の大切なキュリーが死んでしまった。    彼女の最期がどんなだったのか、私にはまだわからない。私が老いたキュリーを手放した後、2年半も可愛がってくださった佐藤英吉さんに、まだ、聞けずにいるから。  でも、わかっているのは、キュリーは、私達

          【サイドストーリー的な特集ページ②  盲導犬キュリー編】

          連載18 第三集 あとがき編『キューちゃんのおかお わんわんみたい』あきとまさきのおはなしのアルバム '89

            あとがき  ひろさわ りえこ  こどもたちの みて いる ものなら、わたしも みえて いる きが して、かれらが そばに いると、わたしは みえないと いう ことを すっかり わすれて いる。こどもたちの はずんだ こえを きけば、わたしも きもちが はずんで、こえの ひびきや、かぜの おとまで みみの そこから はなれない。1にちの おわりに、てんじばんで ポツポツと メモを とりながら、おおきく なって てれくさそうに これを よむ こどもたちの かおを おもい

          連載18 第三集 あとがき編『キューちゃんのおかお わんわんみたい』あきとまさきのおはなしのアルバム '89

          連載17 第三集 10~12月編 『キューちゃんのおかお わんわんみたい』あきとまさきのおはなしのアルバム '89

          十・十一・十二月あき 四才十一か月~五才一か月まさき 三才一か月~三か月 【写真・あき君の絵】 〔写真説明 ページ全体に大きな絵が描かれています。波のような迷路があり、平行にたくさんの小さな絵が描いてあります。それは全部らせんで波の方から出ていて、人やロケット等12個書いてあります〕 #208 半月 あき 「おかあさん、でて きて よかったね。はんぶんの みかづきさんだよ」 私 「今頃の季節は、お月様も特別きれいでしょうねえ」 あき 「うん」 うなずいただけで、柱にも

          連載17 第三集 10~12月編 『キューちゃんのおかお わんわんみたい』あきとまさきのおはなしのアルバム '89

          連載16 第三集 7~9月編 『キューちゃんのおかお わんわんみたい』あきとまさきのおはなしのアルバム '89

          七・八・九月あき 四才八か月~十か月まさき 二才十か月~三才 【写真・第三集の表紙】 #181 ボランティア交流会 ボランティア交流会で、私は、子供達を両脇に座らせておいて、体験発表をした。 帰ってから、私 「ふたりとも、あんまりいい子だったから、『いい子だったで賞』をあげちゃおうかな」 あきとまさき 「あっ、コアラの マーチ。やったー!」 あき 「おかあさんにも、ショウを あげるよ。めー つぶって。くち あけて」 まさき 「くち あけてー くち あけてー」 あきは、

          連載16 第三集 7~9月編 『キューちゃんのおかお わんわんみたい』あきとまさきのおはなしのアルバム '89

          連載15 第三集 4~6月編 『キューちゃんのおかお わんわんみたい』あきとまさきのおはなしのアルバム '89

          四・五・六月あき 四才五か月~七か月まさき 二才七か月~九か月 【写真・第三集の表紙】 #167 大きくなったら あき 「おじいちゃんて スゴイなあ。やねに のぼって、テレビ なおしちゃったんだよ。あきも おおきくなったら、なんでも なおす ひとに なるよ。テレビだって くるまだって なおしちゃうんだ」 まさき 「マサチも オオチク なるよ。オオチク なったら、トンポに なる!」 #168 春いっぱい あき 「まさき、ささだよ。いっぱい ポケットに いれるんだぞ。

          連載15 第三集 4~6月編 『キューちゃんのおかお わんわんみたい』あきとまさきのおはなしのアルバム '89

          連載14 第三集 1~3月編 『キューちゃんのおかお わんわんみたい』あきとまさきのおはなしのアルバム '89

          一・二・三月 あき 四才二か月~四か月 まさき 二才四か月~六か月 【写真・第三集の表紙】 #144 ポタポタ焼き 明日は、ドンド焼き。 夫と子供達で稲の花を作るという。ところが… 夫 「おい まさき、そんなに水を入れんなよ。あーあ、ペシャペシャ。しょうがねえ、粉でも入れろ。え?ひと袋も入れたのか?おっと、こぼすな、こぼすな」 と、こんな調子。やっとおだんごにして柳の枝につけたけれども、子供達が枝の下を走る度、ポタポタ落ちる。 あきとまさき 「ワーイ、ポタポタやきだ

          連載14 第三集 1~3月編 『キューちゃんのおかお わんわんみたい』あきとまさきのおはなしのアルバム '89

          連載13 第三集 エッセイ編 『キューちゃんのおかお わんわんみたい』あきとまさきのおはなしのアルバム '89

          【表紙の写真】 〔説明 紫色の紙です。動物の顔と小さな胴体がついています。耳(角?)は左が黒、右は白です。動物の周りにシャボン玉のような泡がふわふわと浮いています〕 『自立』 内側からあふれる生き生きしたもの  広沢里枝子 私は、進行性の網膜の病気で、弱視が小学生の頃から少しずつ進み、現在は、ほとんど見えません。  「自立」と言う時、それは、「他人の手を借りずに(迷惑をかけずに)、自分のことが何でも(経済力も含めて)自分でできること」というように、一般に考えられがちです

          連載13 第三集 エッセイ編 『キューちゃんのおかお わんわんみたい』あきとまさきのおはなしのアルバム '89

          【サイドストーリー的な特集ページ① 宇野孝子編】

          「あきとまさきのおはなしのアルバム」の制作にあたっては、たくさんの方から、数えきれないお力添えがありました。誕生にたちあった苦労やよろこび、共感や励ましのお便りが続々と里枝子さんの元に届き、その一部は文集に掲載されました。 この「サイドストーリー的な特集ページ」では、それらの寄稿文を、随時、紹介します。里枝子さんの視点から描かれている本編と重ね合わせてお読みいただくと、「おはなしのアルバム」の全体像が、より鮮やかに見えてくるのではないでしょうか? はじめにご紹介するのは、

          【サイドストーリー的な特集ページ① 宇野孝子編】