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連載16 第三集 7~9月編 『キューちゃんのおかお わんわんみたい』あきとまさきのおはなしのアルバム '89


七・八・九月

あき 四才八か月~十か月

まさき 二才十か月~三才


【写真・第三集の表紙】

#181 ボランティア交流会


ボランティア交流会で、私は、子供達を両脇に座らせておいて、体験発表をした。
帰ってから、私 「ふたりとも、あんまりいい子だったから、『いい子だったで賞』をあげちゃおうかな」
あきとまさき 「あっ、コアラの マーチ。やったー!」
あき 「おかあさんにも、ショウを あげるよ。めー つぶって。くち あけて」
まさき 「くち あけてー くち あけてー」
あきは、立ち上がって、今日、見て来た表彰式のまね。
あき 「『よくがんばったでしょう』のショウだヨ。お か あ さ ん、よく がんばって、おはなしを し ま し た ネ。はい、どうぞ」
まさき 「はい、どうじょ。ソレッ」
私は、口いっぱいにお菓子をほおばりながら 「感激です。ああ、おいしい」

#182 蝉の墓


まさき、道端にしゃがんで 「セミ つぶれちゃったよ。だれ つぶしたの?マーキ、どーったら いいの?」
私 「土に埋めてあげようか。連れてらっしゃい」
まさき 「マーキ こわーいー マーキ ねむーい」
私はまさきを抱きあげて帰った。けれども家に着いても、まさきが蝉の心配をしているので、引き返して道端に蝉のお墓を掘った。まさきは、私の背に隠れながら、私が土をひと握り蝉の死骸にかける度、声を震わせて言った。
まさき 「がまんしてね。ね、がまんしてね…」

#183 弟


あきが部品を整理しているそばから、まさきが、ごちゃごちゃにしてしまう。ついにピシャッという音。
私 「あき、それいいことなの!」
あき 「まさきなんか いらない!ウワーン!」
泣き泣き洗面所へこもった。かと思ったら、大きな笑い声。
あき 「あれー?みずんなかに まあるい ビスケット いっぱい うかんでるヨ。また、まさきだな。ギャハハ…」

#184 大きーくなるんだ


まさき、オムライスをほうばりながら 「トータン、マーキの おうち かたい?マーキ、ビビビビビーって、おうち やぶいちゃう」
夫 「ん?」
あき 「あのさ、まさき おおきくなってさ、てんじょう やぶりぬけちゃうんだって」
私 「壁なんか、みーんなふっとばして、おかあさんなんか、おもてにポーンって、飛んでっちゃったりして」
あき 「くもんなか つきぬけちゃってさ。ニョキリって てんごくに あたま でちゃったり して」
まさき、椅子に立ち上がり 「そうだよ。マーキ、いっぱーい たべて、おおきーく なるんだ」

#185 花火


おじいちゃん 「花火、かあちゃんのほうへ向けてやれ、あき」
あき 「みえる?おかあさん、みえる?」
花火だけは、明暗のコントラストが強いせいか、目をこらすと、なんだか見えてくる気がする。
私 「うん、見える気がする」
あき 「じいちゃーん、チカチカはなび、かあちゃん みえるってー!」
まさき 「マーキも やる。マーキも やる」
おじいちゃん 「おっ、まさきもできるだか?よし、やってみろ」
まさきは、花火を怖がっていたのに、初めて火をつけて駆けて来た。
まさき 「マーキ、できたヨ!みえる?ねえ、みえる?」

#186 トンボとり


まさきは、トンボが捕まりそうになると、大声をあげるので、兄に叱られ叱られ、ベソをかきながらついて行った。私が心配しながら待っていると、坂の下から、ようやくふたりの声、はずんだ声。
まさき 「マーキ、とーても とれないの。にいちゃんみたいに とーても とれないの」
あき 「でもね、まさき、あきが トンボ とる とき、しずかに してるように なったんだヨ。あっ、ゆうやけ!」
まさき 「わあ、ゆうやけ ゆうやけ!」

#187 アルバム作り思い出作り


「朗読リラの会」のみんなが、うちに集まって、「おはなしのアルバム 第二集」のコピーをした。
私 「ちょっと下へ行って、ご飯、作って来るね」
まさき 「ウワーン!」
私 「オットット、早過ぎたかな?でも、大丈夫。おばちゃんたちはね、みーんなおかあさんのお友達なの」
みんな 「わあ、もう泣きやんだ」「ねえ、まさきちゃん、お手伝いしてくれる?」「この紙をあのおばちゃんとこ、持ってってくれるかな?」
まさき、私の胸から飛び降りて 「ハイハーイ。あっ、かみ でたね。ヤッター!」
みんな 「ありがとう」「とっても助かるわ」「まさきちゃんが一番忙しそう」
まさき 「ハイハーイ ハイハーイ。マーキ、いま いくー」
まさきは、コピーの機械から、紙を運ぶ係りで大活躍。
まさき、刷りたての紙を私の掌に載せて 「おかあさん、さわって。ほらっ、あったかいでちょ?」
私 「わあ、あったかい。このまま、みんなに届けたいね」

#188 にいちゃんからのバースデイプレゼント


あき 「あき、まさきに なに あげたら いい?」
私 「あきの心のこもったものなら、何でもいいのよ」
あき 「あのねえ… あきねえ… えーとねえ… わかんない。あき、なんにも ないよ」
まさき 「にいちゃん、トンボ とって くれる?」
あき 「あっ!うん。とって やる」
あきは、椅子から跳ねあがって虫網を掴むと、外へ飛び出した。
まさき 「マ-キも いくー!まってえ!」

#189 時計さん


まさき 「とけいさん、ゆっくり あるいてるよ。ゆっくり ゆっくり まけないように」

#190 マーキの誕生日


ちゃぶ台の上には、おばあちゃんが炊いてくれた、暖かいお赤飯がどっさり。
帰って来たおじいちゃん 「おっ、いいなあ、まさき」
まさき、おじいちゃんに飛びついて 「じいちゃん じいちゃん、あのね じいちゃん、きょうね、マーキのね マーキのね…」
おじいちゃん 「うんうん、何の日だ?」
まさき 「マーキのね、マーキの なつやすみ!」

#191 ゆうじ君とはじめての約束


あき 「ゆうじちゃんと やくそくしちゃった。ゆうじちゃん、あきんち きて くれるって」
まさき 「ワーイ、ヤッタ ヤッタ!」
ふたり、玄関を出たり入ったり。
あき 「もう くるヨ… いま、きがえてる とこかな… いま、てー あらって、おやつ たべてるかもしれないネ… あっ、もう きっと さかを あがってるヨ。あき、みぃ いって くる」
まさき 「マシャキも いくー」

#192 はじめての電話


あき、どうしてもゆうじ君と遊びたいのに、おうちまで行くことも、電話をかけることもできない。
まさき 「マシャキ、かけて やる。マシャキ、やるから」
「もしもし、ヨオジちゃん いますか?ちがう。ヨオジちゃん。ちがう。ヨ オ ジ チャ ン!あっ、よかった。いるって」
あき 「まさき、きてって いって。まさき、たのむ」
まさき 「キーテ」ガチャン「これで いい?」

#193 何やら楽しそう


ゆうじ君とあき、こたつの一辺に、ふたりしてもぐりこんで、クスクス笑いあっている。
ゆうじ君 「ミカンの かわ、どこに いれようか?」
あき 「おさらんなかに いれとけ」
私 「わあ、威張っちゃって」
ゆうじ君 「いいんだよ いいんだよ。ナッ」
あき 「ナッ、ウフフ…」

#194 はじめて下村へ


私 「道を渡る時はね、ふたりで手をつないで、車が来ないかどうか、よく確かめるのよ。走らないでね。まさきが転ぶと、かえって危ないから。それからね…」
あき 「うん、わかった」
二人にさわってみると、しっかり手をつないで寄りそっている。
まさき 「おかあさんも きてヨオ。おかあさんもー」
あき 「だいじょうぶだから。まさき、いくゾ」
まさき 「おかあさん おかあさん…」
私は、坂の途中に長いこと立っていた。

#195 今日も下村へ


あき 「ウウ、さむかった。ああ、おもしろかった。くらく なって きたから、まさきんとこ ひっぱって かえって きたヨ」
私 「よかったわ。ちっとも帰って来ないから、捜しに行こうかって、キューちゃんと相談してたのよ。まさき、転ばなかった?」
まさき 「うん、そうだよ。にいちゃん、てー つないで くれたもん。まさき、いっしょけんめい はしった」
そして夜。
おじいちゃん、ふたりを膝に抱いて 「おめえたも、やっと下ってけるようになったなあ。うんとヨタこいてこうよ。かあちゃんが、謝って歩くっくれえにな」
私 「うわあ、恐ろしい」
おじいちゃん、楽しそうに 「いいだ、いいだ、それでいいだ。なあ」
あき 「なあ、じいちゃん。なっ、そうだよな。ウフフ…」
まさき 「うん、そうだよ、なあ。ウフフ…」

#196 まさきヤッツケゴッコ


まさき 「なーんで にいちゃんたちさ、まさきんとこ やっつけちゃうんだろ?まさき、こまったんだヨ」
私 「今日のこと、考えてみようか。えーと… おやつまでは、仲よく遊べたでしょ?おやつの時、まさきが一個余分にアンパン食べてたら、にいちゃんたち、隠れちゃったのよね。追いかけても追いかけても、走って他の所へ隠れちゃって、それから、まさきヤッツケゴッコになったんじゃなかった?」
まさき 「あっ、わかったヨ!こんど、ゆうじちゃん きて くれたらネ、まさき、いっそいで アンパンマン たべる ことに した」

#197 キューちゃんのシッポ


まさき 「キューちゃんは、おしりに シッポ あって いいネ。マーキは、シッポ ないんだヨ。だから おくちで、ハーイって おへんじすんの」

#198 あきんちは展望台


あき 「あき、まち みてるんだ。こないだ じいちゃんと ポンプ かいに いったのはー、ここを まっすぐ いって、おおきな みちに いってから…」
私も、サンダルをつっかけて、あきの隣に立ってみた。
私 「へえ、下の町も、お山も、よく見えるんだろうな。それであきは、いつも地図の絵を描くんだね」
あき 「あき、いつも みてるんだ。たかい とこに いる ひとしか できない ことだよ」

#199 いっしょ いきたい


あき 「あき、いって くるからな。まさき、ここで まってろ」
あきは、ドアを閉めて押さえてしまった。
まさき 「ウワーン!にいちゃん、つれてって くれなーい!」
私 「おにいちゃんね、まさきと一緒に行きたい時と、ひとりで行きたい時と、あるんだって」
まさき、パッと明るい声になって 「マーキと いっしょ いきたい とき ある?」
私 「あるのよ」
まさき 「やっぱり そうか。ヨカーッタ!」

#200 おかあさんの絵


まさき 「おかあさんの かーお。めーめ くち はーな あーし」
私 「お耳も描いて。まさきのお話しが、よーく聞こえるように」
まさき 「おおきな おみみー」
私 「おてても描いてくれる?まさきが困っちゃった時、だっこしてあげなくちゃ」
まさき 「てーて。いっぱい いっぱい いっぱい いっぱーい」

#201 みんなでネンネ


まさき 「クーマさん、まさきと ネンネするか?」
まさきは、しばらくクマのぬいぐるみと寝てみたが、他のぬいぐるみも、かわいそうに思ったらしい。
まさき 「ウサギさんも、いっしょ ねるか?ゴリラも、いっしょ ねるか?トラちゃんも… あれ?まさき ねる とこ ない」
あき 「バカだなあ。こんなに いれるからだヨ」
あきは、見かねてぬいぐるみを全部布団から放り出した。
まさき 「ウオーン!!」
真上を向いて、すごい泣き声。
私 「シズマレー!いい?ここに、もうひとつクマさんたちのお布団、持ってくるの。一番ふかふかのね。… ほらっ」
まさきは、ほっとしたのか、枕元に敷いた布団に寝かせたぬいぐるみたちを見上げながら、弓なりにそったまま眠ってしまった。
私 「あき、見て。まさきったら、こんなかっこうで寝ちゃった。かわいいね」
あき 「うん。ちょっとバカだけどね。ウフフ…」

#202 蝉しぐれ


まさき 「おかあさん、セミ ないてるヨ。こんにちはーって。おかあさんも、こんにちはーって いお」
まさきと私 「セミさーん、こんにちはー!こんにちはー!」
その時、ふいに窓が開いて、婦人の声 「こんにちは。お暑いですねぇ」
私 「あっ、どうも」とか何とか。
まさき 「わあ、おへんじしたネ。ウフフ…」

#203 映画「火垂るの墓」


あき 「ばくだん おっこちると ばくはつするの?おちる まえに、むしあみで ヒョーイって とったら どう?そいでも ダメ?じゃあ、やっぱり ひこうきを やっつけなきゃ」
私 「でもね、飛行機にも、他の国のおじさんが乗ってるのよ。強いおじさんに命令されて、しかたなく乗ってるのかも知れないでしょ」
あき 「なんで そんな こと めいれいするの?」
私 「自分の国は、絶対正しくて、相手の悪い国をこらしめてやらなきゃって思いこんでいるからかな」
あき 「へんだなあ。こらしめるってさ、ちょっとぐらい いかしといて、もう わるい こと しないように、おこっとくって ことでしょ?なんで ころすの?」

#204 ハイジ


あき 「あき、ハイジに あいたいなあ。あの ひと、いま いる?」
私 「たぶん、もうすてきな女の人になってるでしょうね」
あき 「もしかして、それ おかあさん?」

#205 通園バスから降りて


私 「あき、温かーい」
あき 「エヘヘ… あき、おいも ほったの。あき、おひさまの いっぱーい はいった おふとんみたいでしょ」

#206 絵本読んであげる


まさきは、日だまりに足を投げ出して、キュリーに絵本を読んでやっている。
まさき 「『あまい いちごが たくさーん ありました…』ね、キューちゃん、よかったね。あれ?キューちゃん、みて ないな!」
私 「キューちゃんはね、まだわかんないんだって」
まさき 「まあだ?マーキっくらいに ならないと?そう?あっ、じゃあ、マーキ、あかちゃんの ほん もって きて くれる」バタバタバタ…

#207 母方の祖父母の家にて


あき 「おかあさんは、この おうちで うまれたの?」
私 「ううん、このおうちにも、いっぱい思い出があるけど、産まれたのは、海のそばの沼津っていう所。今度おじいちゃまが、ご苦労さまって、お仕事をやめたら、また沼津へお引っ越しするかも知れないんだって」
あき 「なんで?なつかしいから?」
私 「そうよ。みんなの気持ちがよくわかるのね」
あき 「この おうちとー、おじいちゃまの おにわとー、きとー、ひっぱってくんでしょ?」
私 「なんで?」
あき 「だって なつかしいもん」

(連載17へ続く)

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