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連載22 第四集 7~9月編 『お月さまー そこから海が見えるかー!』あきとまさきのおはなしのアルバム '90


七月・八月・九月

あき 五才八か月~十か月

まさき 三才十一か月~四才一か月


#274 夏の思い出


まさき 「うみ いった とき、おひさま わらったよね。まさき、ジャバーって おみずんなか はいったから」

#275 レストランで


おじさんたち 「おっ、犬がいたんだな」
まさき 「キューちゃんだヨ。あのね、おかあさんは、めが みえないの。だから、キューちゃんが めなんだって」
おじさん 「ホオ、たいしたもんだなあ。ところで、ボクは、何才だ?」
まさき 「3さい」
おじさん 「いいなあ。おじさんの年と、足して二で割らねぇか?何でもくれるぞ。とりあえず、この腹の贅肉は、どうだ?」
まさき 「べ~」

#276 夏祭り


お祭りは、キュリーがもみくしゃになりそうなので、行こうか、どうしようかと思っていたら、おばあちゃんが子供たちを連れて行ってくれるというので、お願いした。
私 「おかあさんは、何もいらないよ。それより、おばあちゃんの言うことをよく聞いてね」
あき 「それが おみやげ?ヨシッ」
まさき 「ウソ つくと、ドロボウおみやげに なっちゃうもんね。フフフ…」
おばあちゃん 「それじゃあ、行ってくるよ。さあ、行こう」
私は、母屋の玄関で、三人を見送ってしまうと、少しだけ、淋しい気がしたのかも知れない。すり足で、庭のはずれまで出て、もう一度、手を振った。すると、ひとり、ハアハア言いながら、坂を駆け戻ってくるようす。
あき 「あき、げんかんまで おくりに きたよ」
私は泣きそうになって顔がくしゃくしゃ。あきは、そんな私を玄関まで手引きしてくれた。
あき 「ここだよ。じゃあね!」

#277 おかえりなさい


あき 「じいちゃん、かえってきた!ビール ビール!」
まさき 「コップ コップ!」
帰って来た祖父母も、笑顔だったのだろう、子供たちも、ビールとコップを縁側に置いて、クスクス笑っている。
おじいちゃん 「ばあちゃんにも、いっぺえ やれ。田んぼは、喉が乾くからなあ。よしよし‥ トマトがな、赤くなってきたど」

【写真・まさきくんが描いた、とんぼとり】
〔説明 丸い頭に4枚の羽をいっぱいにひろげたとんぼが右に左に何匹も書いてあります。「なつやすみ おかーさんととんぼとりしたの」のコメントがあります〕

#278 虫とりセミナー 

     
たかし君 「こんだあ、しずかに してろよ。しずかーに よーく みてっから とるんだ。よーく みてー、よーく みてー…」
今度こそと、みんな、息を止めて、たかし君を見守っている。ところが、まさきは、またも叫んでしまった。
まさき 「ソレーイ!」
一同 「あーあ、もう…」
たかし君 「たのむよオ、チビー」

#279 内灘海岸の思い出 ついに泳いだ その日


夏休み。念願かなって、神山さん親子と一緒に、金沢の森直弘先生をお訪ねすることができた。そして、二日目は、子供達にとって、初めての海。
けい君 「イーッパイ イーッパイ!」
かおるちゃん 「おかあさーん、すべりだいみたーい!」
まさき、生まれて初めて波をかぶって 「…」
あき 「キャー!おもしろい!おもしろーい!」

#280 月に聞く 

  
まさき 「あっ、おつきさま。われた おつきさまだ。オーイ、おつきさまー!そこから うみが みえるかー!」

#281 盆飾りとお供え


まさき 「きれいでちょ?じいちゃん、まさきの ちょうちんと、にいちゃんの ちょうちんと、でんき つけて くれたの」
私 「お参りしてたの?」
まさき 「うん。まさき、ほとけさまの スイカ、たべたいなあって おもって」

#282 年長児キャンプ


今夜は幼稚園の年長児キャンプ。あきのいない初めての夜になった。
おじいちゃん 「今頃、何やってるだず」
おばあちゃん 「八時…今度は、花火だねぇ」
おじいちゃん 「そりゃあ、喜んでるだず」
しばらくして、夫と、キャンプファイヤーを見に行っていたまさきが帰って来た。
まさき 「はなび、スゴイ スゴイ!いっぱい やった!でっかい はなびと、ちっちゃい はなびと。ウオ~」
私 「よかったね。おにいちゃんも元気だった?」
まさきは、急にしょんぼりして 「バイバイだって…」

#283 こぼれたミルク


私、夫に正面衝突。ミルクが、バシャッ。
私 「おとうさん、ここにいるよって、言ってくれたらよかったのにな」
夫 「おかあさん、今から行くぞって、言ってくれたらよかったのにな」
あきとまさき 「アハハ アハハ… そりゃ、ぶつかれば こぼれるよなあ」「そうそう」

#284 おはなしのアルバム 三集づくり


宇野さん、朝子さんに、会話の元原稿を送るため、子供たちが、プリントを手伝ってくれた。
あき 「いい?いくよ」
まさき 「スカート!(スタート)」
「やあ、アララーン アララーンって。アララーン アララーンって。 きかい わらってるよ」
あき 「ほんとだあ」

#285 キューちゃん、人間だったの?


まゆこちゃん 「この いぬ、くちんなか てー いれても かまない?」
私 「ほうら、ねっ。どう?だって、この子は、人間だもん」
まゆこちゃん 「あれー!あたし、しらなかったの。ごめんね」

#286 こんだけになった!(お誕生日の朝)


まさき、布団の上にくるりと起きあがると、指をみっつ立てて、私の胸に押しつけて 「まさき、こんだけに なった?」
私 「ううん。もう一本、立てて」
まさき 「ピーン!」
私 「そうそう、よっつ。いっぱいになったネ」
まさき 「ヤッター!」
夫、笑いながら起きあがって 「まさき、おめでとう」
私 「おめでとう、まさき」

#287 四才のバースデイによせて


まさき、お誕生日、おめでとう。1メートル27センチ、17キロ、やんちゃぼうず。よく無事で、大きくなってくれました。君ときたら、全く危なかったんだから… おとうさんとおかあさんは、キューちゃんや、おにいちゃん、おじいちゃん、おばあちゃん、先生や、みんなに、どんなに感謝しても、感謝しきれないくらいです。
 みんなから愛情をもらって、山の木みたいに、思いきり育っていくまさき。でも、その本当の剪定と接ぎ木は、いつか、神様が、してくださることでしょう。少々の苦労には、耐えられるくらい、十分、幸せに育ってください。
 楽しみだよ、まさき。大きくなあれ!

#288 暮らしに色をとりもどすために


夫の友人でもある、宮島さんの熱意ある働きかけで、世界で初めて、色を識別して音声で知らせる装置が開発された。そのデモンストレーションビデオをうちで撮ることになった。
宮島さん 「そこの花びらの色を見てくれるかな?」
あき 「ここだよ。ここ」
あきは、装置を持った私の手をぎゅっと花びらに押しつけた。
装置 「アカ アカ」
宮島さん 「花のまん中も、見てくれるかな?」
装置 「キイロ」
あきとまさき 「あたり!」
私 「まん中が黄色で、赤い花びら… こんなお花が、お庭に咲いてたなんてね。目がさめるみたい」

#289 いっぱいオッパイ


あきは、陶芸子供会で、先生の「いっぱいオッパイ」という陶芸作品に触らせていただいた。その晩、
あき 「あき、おいちゃんが いちばーん きにいってる オッパイ、しってるんだヨ」
私 「おっきいオッパイだった?」
あき 「ちゅうくらい。おくさんの オッパイと おんなしくらいだって」
それから、しばらくして戻ってみると、あきは、その場にしゃがんだまま、まだ考えこんでいる。
あき 「おいちゃん、みた こと あるのかなあ…」

#290 敬老の日


あき、はね起きて 「じいちゃん いる?」
私 「うん、雨だからね」
あき 「ヤッター!あき、ケン つくる」
私 「ケン?」
あき、忙しそうにドアを開けながら 「かた たたく ケンだよ。じゃあね」

#291 就学時健診


私 「おかあさん、気が重い」
あき 「なんで?」
私 「健診で調べたことがもとになってね、病気の子や、不自由なところのある子が、みんなと同じ組に入れてあげません、養護学校とかへ行きなさいって決められちゃうことがあるからよ。たとえ、みんなと同じ学校へ行きたくてもね」
あき 「おかあさん、ようごがっこう?」
私 「ううん。おかあさんも、盲学校へ行きなさいって勧められたんだけど、おじいちゃまやおばあちゃまが、弟と同じ学校へ行かせたいからって、一生懸命に頼んでくれたの。そうじゃなかったら、おとうさんやおかあさんや、弟やお友達とも、ずっと離ればなれだったかも知れない」
あき 「あっ!あっ!」
私 「なあに?」
あき 「アトピーは?!まさき、あきと おんなし がっこうへ いけなくなっちゃうの?!」

#292 親子障害物走


運動会では、あきと手をつないで、親子障害物走に参加した。
あき 「かあさん、あたま さげて!」
私 「え?」
と、言っている間に、もうネットをくぐっていた。
あき 「はい。ここ ここ。マット マット」
私 「エイッ」
と、一回転。パチパチッと、観客の皆さんから拍手を頂く。
あき 「えーと バッチ バッチ…」
和子先生 「はい。先生がやってあげるわ」
あき 「かあさん、こんど てー つなぐんだヨ!」
私 「はいっ」
あき 「ヤッター!3とうだ!」
ふたりで、お腹の底から笑った。

#293 ぼくの今いるところ


まさき 「まさき、いま いる とこ どーこ?」
私 「大宇宙の中のー 銀河系宇宙の中のー 太陽系の中のー 地球の上のー 太平洋の中のー 日本のまん中の 長野県の中の 町の中の えー、おうちの中の お布団の上の おかあさんにペッタリくっついたとこー」
あきとまさき 「フフフ…」
あき 「じゃあ、あきが いま いるのはねぇ、だいうちゅうの なかのー ぎんがけいうちゅうの なかの… なんだっけ?」
まさき 「おかあさんに ペッタリ くっついた とこー」

#294 ヤダ、しらない


私 「この頃、あきちゃんのお返事は、ヤダと知らないばっかりになってきちゃったね。なぜかなあ」
あき 「しらなーい」
私 「あーあ」
あき 「おかあさん、あきの おはなし かいとく とき、こまるの?」
私 「ううん。ヤダと知らないばっかり書いとくからいいのよ。どうぞ、いっぱーい言ってくださーい」
あき 「ウフフ… ヤダー」

連載23へ続く

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