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連載21 第四集 4~6月編 『お月さまー そこから海が見えるかー!』あきとまさきのおはなしのアルバム '90


四・五・六月

あき 五才五か月~七か月

まさき 三才八か月~十か月


【写真・第4集の表紙】

#254 もうすぐ入園


私 「まさきまで幼稚園に行っちゃうと、おかあさん、淋しいなあ」
まさき 「しんぱいすんなよ。また かえって きて やるよ」

#255 通園初日


あき 「まさき、これ きるんだゾ。ヤッホーッ ヤッホーッ ヤッホーッ!あき、ボタン とめて やる」
まさき 「まさき、じぶんで やるヨ。ほら でーきた。ヤッホーッ ヤッホーッ ヤッホーッ!」  
バス停でも、
あき 「まさき、よーく みてろ。かっこいい バス くるからな。ほら きた!」
まさき 「イヤッホーッ!」
あんまり嬉しくて、ふたりとも振り向きもしなかったろう。私は、一生懸命手を振っていたのに…

#256 通園初日のおみやげ話


まさき 「まさきさー、おともだち できたヨ」
あき 「なんて なまえだ?」
まさき 「ニーサーイ だって」
あき 「それ なまえか?」
まさき 「そうだヨ。まさきさ、『オーナーマーエーワ ナーンーデースーカ?』って、きいといたんだヨ。そいでネ、もひとっつ ともだち できた」
あき 「なんて なまえ?」
まさき 「タ ン ポ コ グ ミ だって。まさき、ちゃーんと きいといたんだ」
まさき 「まさきの せんせい、やさしい せんせいだヨ。まさきの ズボン、シャツ いれて くれた。せんせいも、むかーし むかーし、じぶんで しゃつ いれたんだって」

#257 通園二日目


あき 「まさき、はやく たべろ。あき、かわ すてて きて やる」 「これ きろ。てー だして」 「あき、リュック しょわせて やる」 「まさきー、くつが はんたいだヨ。ほらっ、こうやって こうやって」
まさき 「ウフフ… あきんなかに まさきんとこ なんでも やって くれる ムシ、いるのかなあ?」
私 「あき、ありがとね。でも、まさきにもやらせてみて。あきが、ずっとついててやれるわけじゃないものね」
あき 「あき、もう これから ずーっと ついてられるヨ。ずーっと ずーっと」

【写真・あき君の絵 おやこねこ】
〔説明 丸太の上を歩く2匹の猫。前を行く大きい猫はついてくる子猫を気遣うように見ています〕 

#258 やおえ先生、おばあちゃん、がんばって!


まさき 「ずうっと まえに いった とこさ。まさきとー おかあさんとー おにいちゃんとー、いった とこさ。まさき、また いきたいなあ。ほら、えー かき いった とこさ」
私 「絵のやおえ先生の所ね。おかあさんも行きたいんだけど、先生のおかあさんが、重い病気になってね、とっても苦しいんだって。先生は、昼間も夜も、おばあちゃんのお世話をしてるの」
まさき 「どうしたら いーんだろう?」
あき 「どうすれば いい?」
私 「お手伝いに行けるといいんだけど… ねえ、絵をプレゼントしようか。先生、頑張ってって」
あき 「おばあちゃんには?」
私 「うん、そうね。おばあちゃんにも」
あき 「おはなの えは?ボタンの おはなは どう?あき、ようちえんで みたんだ。ようちえんの クレヨンで かいて あげるよ」

#259 三人でつくった詩


バナナ ふんじゃった  ズルッ
カニ ふんじゃった  イテエ!
ネコ ふんじゃった  ギャー!
うしの ウンチ ふんじゃった  グジュッ ゲロゲロッ
あな ふんじゃった  ストーン ゴッチーン!
みず ふんじゃった  ドッボーン ブクブクブク… アーレー!
イチゴ ふんじゃった  ああ もったいない もったいない
あし ふんじゃった  ゴ メ ン

#260 みのむし電車(三井ふたばこさんの詩から)


私 「電車がとまる チタチタとまる みのむしブラリ とうさない。アーラ 困った みのむし駅よ。ブラブラ ガッターン」(笑い)
あき 「おつぎは かわです。とまりー!でんしゃが とまる チタチタ とまる かわは ザアザア とうさない」
私 「アーラ 困った 川駅よ」
まさき 「ドッボーン!バッシャーン!ギャー!」 (笑い)
電車ごっこでバス停から帰ってくると、じゅんちゃんのおばあちゃんが、飴をひとつずつくださった。
まさき 「ここ なんの えき?」
私 「ここは うれしい オバ」
あきとまさきは声をそろえて 「おばあちゃんえき!」

#261 くじらの赤ちゃん


まさき、お風呂の中で突然 「くじらの あかちゃん、どうやって ねるのかな?こうやって ねるのかな?こうやって ねるのかな?」 バシャッバシャッ 
「こうやって ねるのかなあ」 ブクブクブク…
まさきがお風呂に沈む
私「ヒャー!」

#262 戦いのあと


おじいちゃん 「まさきも、こいよ。ヤオフク(スーパーマーケット)へ行くぞ」
まさき、袖口で、涙をえいと拭いて 「まさきも いくヨ!」
おじいちゃん、玄関で、まさきのシャツをズボンに入れてくれながら 「泣いてただか?ん?そんでもまさき、兄ちゃんとこ、はまっていけたなあ。今度っからは、泣かずに、はまっていけよ、いいな」
まさき 「まさき、まけちゃうんだヨ。おおきーく ならなくちゃ。つよーく ならなくちゃ」
おじいちゃん 「ワッハっハ… よしよし、じゃあ、ばあちゃんに顔、拭いてもらえ」

#263 西宮おすもう大会


あき 「ゆうき?ほんとに あとは どうでも いい?そいじゃ、やって みるか」
おじさん 「よしよし、さっ 靴を脱げ。頑張れよ」
一方まさきは、おすもうなんて知らないのに、まっ先に土俵に上がった。
行司のおじさん 「ハッケヨーイ!ん?ハッケヨーイ!ワッハッハッハ…」
神社の境内で、子供相撲を見ていた大人や子供から、どっと笑いがおこった。
私 「ん?どうかしました?」
そばの奥さん 「ハッケヨーイって言ったらね、まさきちゃんが ウフフ… 股の間から、こっち覗いてバアってやったの」
そして、帰り道、
ご近所のおばさん 「ほお、すごいすごい。あきちゃんは、勝っただ?まさきちゃんもかい?」
あき、とび跳ねながら 「まけたよ。ゆうきが あったから もらったんだよ。あき、こんどんとき また やるんだ」
まさき 「こんだあ かつゾ!」

#264 遠足の思い出


動物園へは、盲導犬と一緒に入場できないと言われた。そのために私とキュリーは、あきについて行ってやれず、あきとは、広い恐竜公園内で、はぐれてしまった。あきは、よほど心配して私たちを捜してくれていたのだろう。ようやく会えた時には、私を突き倒すほど、激しく泣いた。そして、翌日の月曜日。
あき 「えんそくで、おもしろかった ことの え、かく ひだったんだよ」
今回は、楽しい思い出など、ひとつも作ってやれなかった気がする… 私は、胸を押さえながらあきに聞いた。
私 「あきは、何の絵を描いたの?」
あき 「きのこの おうち。ほら、いっしょに すわったよね」

#265 一緒に行きたいからさ


まさきは幼稚園に行く用意をちっともしない。
まさき 「まさき、ピーターパン みてから いく ことに した」
あき 「ダメだ。いかれなく なっちゃうゾ。はやく こい!」
まさきは、やっとこ仕度をしたが、今度は、おもちゃを放さない。
あき 「スーパーボールなんか、もってっちゃ いけないんだ。まさき、おいてけ。いいこだから なっ」
あきと私が、キュリーに排便をさせて、家に戻ってみると
あき 「コラッ、げんかん そうじしたばっかなのに、なんで すななんか いれんだよ」
あきは、まさきがばらまいた砂を手ですくって、一生懸命外へ出してくれた。
まさきは、歩き始めても止まってばかり。
まさき 「ストップ ストップ!」
あきと私 「もういいかーい?」。
まさき 「まだまだまだ まーだだヨー」
バス停でも
あき 「まさき、やめろ。その ぼう よこせ」
まさき 「ヤダ」
あき 「えーいっ」
まさきから棒を取りあげる。
まさき 「ウエ~ン!」
バスが来たのに
まさき 「ヤダ」
あき 「バカッ、こいったら」
まさき 「ヤダ ヤダ」
私 「あき、先に乗っていいよ。まさきは、おかあさんが連れてくから」
あき 「だって… ウワーン!!」

#266 手鏡


幼稚園からのお便りに、自画像を描くので、手鏡を持ってくるようにと書いてあった。ところが、朝になって
あき 「やだよ、こんな おおきな かがみ!」
私 「せっかく、おばあちゃんが貸してくれたのに」
あき 「あき、ぜったい やだからね!」
あきにしては、珍しい。手鏡を持たない私は、胸が傷んだ。
私 「これは、どう?」 コンパクトを持ってきてみた。
あき 「ヤダッ、こんな おけしょうの!」
私、バキッ!
何とかしてやりたくて、コンパクトをまっぷたつに割ってしまった。
あき 「あっ…」
私 「これで、ヨシっと。さあ、行こう」
あき、しばらく唖然としていたようだったが、小さな声で 「ありがとさん」
そして、幼稚園からの帰り道。あきは、私に会うと、少し嬉しそうに、少しすまなそうに、コンパクトの半分を手渡した。
あき 「はい、これ。おけしょうの もってきてた ひと いたよ。おかあさん、もったいなかったね」

#267 付き添い (入院その1)


あきとまさきが、総合病院で、アデノイドと扁桃腺を切る手術を受けなければならないことになった。
おじいちゃん 「だが、付添いは、どうするだ?酷なようだが、しんちに仕事を休ませるわけにはいかねえ。子供は一番に大事だが、子供が大事っつうことは、仕事も大事にしなきゃならんつうことだ。わかるな。特にこんだあ、川の工事にへえるからな、くたびれて仕事してるようじゃあ、命にかかわるだよ」
私 「わかりました。友達やボランティアの方も、きっと助けてくださると思うし、なんとかやってみます」
おじいちゃん 「ボランテア、ボランテアっつうがな、里枝子、おめえもボランテアやってるだか?」
私は、ボランティアをしていてはいけないのかなぁと、一瞬思って、ギクッ。小さな声で 「少しですけど」
おじいちゃん 「だら、一生懸命やれよ。自分が一生懸命やるからこそ、こういう時にも、お願いしますっと、頼めるだからな。いいか」
私は、はりきって 「はい。一生懸命やります」
おじいちゃん 「よしっ、ワッハッハ…」

#268 入院前日 (入院その2)


私 「さっき、ちえ先生からお電話あったの。まさき、お休みすると淋しいなって。みんなで、まさきのこと覚えて、お祈りしていてくださるって」
まさき 「まさき、せんせいに でんわする」
私 「電話番号がわからないし、もう遅いから」
まさき 「もう!おかあさんはー!もう!」
まさきは、黙りこんだまま、のっしのっしと、部屋を歩き始めた。思いつめた様子で、いつまでも、行ったり来たり。それから突然、窓に駆けよると、今度は、思いきり開け放った。
まさき 「せんせい、げんきで… げんきでな…」

#269 点滴 (入院その3)


看護婦さん 「点滴は、ご飯の代わりなの。栄養とお薬が入ってるのよ」
あき 「じゃあ、おかあさん、あきが てんてき やってる とき、ごはん たべんだよ」
あきに言ってもらって、私はふたりの手術後、初めて自分の食事のことを思い出した。

#270 頼もしかったまさき君 (入院その4)


夜中にあきが、病院の寝台から落ちてしまった。私は、急いであきを抱き上げて、寝台に寝かせ、もう落ちないよう、寝台の配置を変えてやろうと思ったが、寝台はびくとも動かない。私は、あきの体調が、心配でたまらなかったこともあって、おろおろした。
まさき 「かんごふさんに おねがいしようよ」 
まさきは先に立って、ナースセンターへと私をひっぱって行く。
看護婦さん 「どうなさいました?」
まさき 「あのね、にいちゃん、おっちゃったの。おふとんから おっちゃったの。おかあさん、うごかないんだって。はやく きて」
看護婦さんは、病室に来ると、さっそく子供たちの寝台に柵を付けてくださった。こんな方法があったなんて…

#271 入れ歯 (入院その5)


まさきは、爪先立って、隣りの洗面台で入れ歯を外しているおばあさんの様子をじっと見ていたらしい。突然、声を震わせて
まさき 「とれちゃったの?」
おばあさん 「そうだよ。ほら、ぜーんぶ歯がなくなっちゃったの」
まさき、泣きそうになって 「いたい?」

#272 できない時は… (入院その6)


せっかくもらったプラモデルなのに、私にも、あきにも、作れなかった。ところが、まさきはめげない。プラモデルの箱を持って、病院の通路に立ち、大声でみんなに尋ね始めた。
まさき 「おばあちゃん、これ できる?」
おばあさん 「いいのだねぇ。おばあちゃんは、少ししかできないよ」
まさき 「おじいちゃん、これ できる?」
おじいさん 「ごめんな」
まさき 「おじちゃーん、これ できる?」
おじさん 「ああ、いいよ。こっちへおいで」
まさきは、おじさんの病室へ、ひょこひょこついて行ったらしい。お菓子まで、どっさりいただいて帰って来た。
まさき 「おじちゃん、まちがえて おかしまで いっぱい くれちゃったあ!」

#273 ワープロ


夫が、書類をワープロで打ち直していると、
あき 「おとうさん、なーぜ かいて ある こと、また かくの?おかあさんは、かきたい ことを かくのに」

連載22へ続く

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