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連載20 第四集 1~3月編 『お月さまー そこから海が見えるかー!』あきとまさきのおはなしのアルバム '90


一・二・三月

あき 五才二か月~四か月

まさき 三才五か月~七か月


【写真・まさき君の絵 おかあさん】
〔説明 たいへんちからづよい線で描かれています〕

#230 雪のおさそい


私 「そろそろおうちに入らなきゃ」
まさき 「でもー、みんなが ここに いて ください ここに いて くださいって いうんだヨ」
私 「みんなが?」
まさき 「うん。おとうさんゆきは(低い声で) ここに いて くださーい ここに いて くださーい。おかあさんゆきは(特別高い声で) ここに いて くださーい ここに いて くださーい。あかちゃんゆきは(かわいい声で) ここに いて くだちゃい ここに いて くだちゃいって いうんだ。どうしようか」

#231 朝日


あき 「わあ、きんの かわだあ!うしろを むくと… ほーら、ながーい かげー。おかあさんの かげと キューちゃんの かげ、いっしよに なったあ!キューちゃん、あし いっぱいに なっちゃったよ。ほらっ、みて ごらん」

#232 雪をのせた竹


あき 「はい、こんにちは!」
私 「どなただった?」
あき 「タケだよ。タケさん、こんにちはーだって」

#233 雪ウサギ


まさき 「できた できた!まさきウサギとー にいちゃんウサギとー キューちゃんウサギとー じいちゃんウサギとー えーと これはー…」
私 「できたねえ。兎さんたち、夜になったら、雪の上、走り回って遊ぶんじゃないかしら。お月様見ながら、ピョーンピョーンて」
まさき 「ほんと?じゃあ、めー つけて あげなきゃ」
南天の実が残っていなかったので、とっておきのプチトマトで、八匹みんなに大きな赤い目をつけた。
まさき 「きれい きれい きれい!ワーイ!ヘッホッホ ヘッホッホ ヘッホッホ…」
まさきは、ウサギになったように、そこらの雪の上を跳ねて跳ねて笑った。

#234 手袋


あき 「あき、きょうね、かずひろくんと ゆきだるま つくったんだ。ボタン ついた ゆきだるまだヨ。でも、てぶくろ ビショビショに なっちゃった」
これを聞いて、私は、すぐにでも、防水の手袋を買ってやりたい気持ちになっていた。ところが、その晩
あき 「あき、あたらしい おいのりしたよ。こんどの クリスマスに、ぬれない てぶくろ くださいって。あと 1ねんの しんぼうだね」

#235 泣きむし天使


泣いていたまさきを抱きあげると、背中にビニールテープで十字架が貼ってあった。
私 「なあに?これ」
あき 「なきむしてんしの しるしだよ」

#236 いいオニは、うち


あきと まさき 「いい オニはー うち!わるい オニはー そと!」
家中に響く元気な声。ところが、そのうちに…
まさき 「にいちゃん おまめ とっちゃったー、えーん!」
私 「あれまあ、お豆なら、まだいっぱいあるのよ」
まさきは、とたんにニコニコして 「じゃあ、にいちゃんに はんぶん あげられるネ」

#237 スケート場の受け付けで


受付の男性 「ちょっと奥さん!」
こんなふうに呼びとめられる時は、たいていキュリーの入場を断られてしまう。私は思わず、前を歩いていた夫の上着につかまった。夫も、またかと思ったらしい。
夫、振り向きざま 「なんですか!!」
受付の男性 「あのう… 招待券をどうぞ」

#238 はじめてのスケート


子供たちは、怖がってスケートリンクの柵から離れない。
私 「よーし、じゃあ、おかあさんがやろう。おとうさん、連れてって」
夫 「できるのか?」
私 「いいから、いいから」
実は、立っているのがやっと。夫にしがみつきながら、ヨタヨタと、ようやく一周。
あき 「おかあさーん、ヤッタネー!」
まさき 「ヤッタ ヤッターイ!」
あき 「こんど、あき やる!」
まさき 「まさき やるー!」

#239 キラめいて


私 「今朝は、小鳥たちも嬉しそうね。急に春めいてきたみたい」
あき 「はるめいて?ううん、きらめいて きたんだよ。キラキラーッ キラキラーッて」
私 「わあ、キラキラーッ キラキラーッ…」
あき 「アハハ!キラキラーッ キラキラーッ キラキラーッ…」
雪の残る坂道。足下を気づかうキュリーをぐんぐんひっぱってスキップ。(キューちゃん、ごめんなさい)

#240 はじめて見た星座


あき 「あっ、みつけた!オリオンの みつぼしだ」
夫 「すると、あれがシリウスだな」
あき 「うん、じゃあ、あれが こいぬで、あすこが おおいぬでしょ?おかあさんも きて ごらん… おおいぬざはね、こうなって こうなって こうなって… こいぬざはね、こうなって こうなって…」
あきは私の手をとり、夜空を指しながら、知っている限りの星の位置を教えてくれた。
私 「おかあさん、星は、小さい頃から見たことなかったけど」
すると、あきは、声を弾ませて言った。
「きょう、はじめて みた?」

#241 ねごと


あき 「おかあさん、あき やってあげるよ… おかあさん…」

#242 まさきのお祈り


まさき 「まさき、おいのりした。おかあさん くれて、ありがとうって おいのりした」

#243 もうすぐバレンタインデイ


私 「何を食べさせてあげたら、おとうさんの風邪が治って、元気になってくれるかなあ?」
あき 「あれだよ あれ。チョコレートだよ。もう あげちゃったら?」

#244 ふれあいゲートボール


あきとまさき 「また れんしゅうするのかー?」 「おてつだいして あげるー!」
公園にひとりでゲートボールの練習に来ていたおじいさん 「坊やたち、ありがとう。それじゃあ、お願いするよ」
あきが、思いきり足を開いてゲートになると、まさきが、駆け回って球拾い。足のゲートを十個、玉が通ると、大声で数えて、おじいさんの所へ抱いていく。おじいさんが喜んでくださるので、ふたりとも大張り切り。
あき 「まさきー、こんど こうたいだ。まさき、ここに たってろ」
今度はまさきがゲートになった。まさきは、開いた自分の足の間から、玉が来るのを興味津々でのぞいていたらしい。頭に玉が、ゴチン!
おじいさん 「坊や、大丈夫かい?おお、困った困った…」
まさき、走っていって、おじいさんに飛びついて 「まさき、へいきだヨ。まさき、へいき。まさき、つよーいんだヨ」
そして帰り、
おじいさん 「坊やたち、また遊ぼうな」
あきとまさき 「また あそんで あげるヨー」 「バイバーイ!」

#245 笑ってくれるさ


会社の事務所建築のため、職人の方々が、入れかわりたちかわりみえている。
まさき、あわてて戻ってきて 「ハア、きょうは、おこった かおの おじさんだった。まさき そば いったのに、わらって くんなかったヨ」
私、思わず吹きだして 「じゃあ、これまでのおじさんは、みーんなまさきを見ると笑ってくれたの?」
まさき 「そうだヨ。でも あの おじさん、いっくら そば いっても、おこった かおなんだヨ。おじさん、おなか すいちゃったのかなあ?まさき、おいしいもん つくって あげるかなあ」

#246 チュー裁


まさき 「おかあさん、おにいちゃんに わらって あげたら?」
私 「まだまだ」
まさき 「そう?あっ、そうだ」 ほっぺにチュッ 「オーイ、あき みろ!おかあさん、わらったゾー」

#247 タケノコ太郎


夫 「あきもそのうち、たつのこ太郎みたいになって、かあさんを助けろな」
あき 「あきは、タケノコタロウだヨーン。だって、こーんなに きてんだもーん」

#248 半日入園


タクシーに乗って、私とまさきが家に着くと、すぐにあきがタクシーの窓を叩いた。
あき 「まさき、どうだった?」
まさきは、小さな声で 「だあれも おともだち なって くれなかった」
あき 「バカ、いっかいじゃ むりだ。こい!」
私が後から行ってみると、あきがまさきに、幼稚園の帽子やリュックをせっせと着せている。
あき 「まさき、かがみ みろ。げんき でたか?」
まさき 「ウフッ」
あき 「アハハ… ばあちゃんに みせようぜ」
まさき 「うん!」

#249 2度目の半日入園


おじいちゃん 「まさき、幼稚園は、どうだった?」
まさき 「…」
おじいちゃん 「ん?おまえも内弁慶か?ワッハッハ… よーし、じいと遊ぼう」
まさきを高々と抱きあげて 「ソーレサ、ヨーイヤサ…」
まさき 「キャー! アハハ…」

#250 3人と一匹、列車の旅


のりかえの時、誰かが、しきりに私の肩を押している。
私は、なおも車内に向かって 「あき、まさき、早くおいでー。やっぱりまさきは、だっこして降りるから。あきも、よーく足下に気をつけるのよ」
ところが、なぜかホームの方から、ふたりの声がする。
あきとまさき 「おかあさん、あしもと きをつけて!おおきく あいてるよ!」
「いそいでっ いそいでっ!」
キュリーと私が、あわててホームへ降りると、すぐ後ろで電車のドアが閉まった。

#251 到着


電車が駅に着くと、ホームからドアを叩く音。
あきとまさき 「あっ、おばあちゃまだ!」
母は、ふたりを抱き降ろしながら 「ふたりとも、よく来たねえ。キューちゃんも、ご苦労さま。おじいちゃま、待ってるよ」
まさき 「おばあちゃま、きたヨ!」
あき、相当に責任を感じていたのだろう 「ハア、ついたあ!ヒイ、ついたあ!フー、よかったあ!」

#252 はじめてのお留守番


まさき 「まさきも いくヨ。オーン!」
私 「今日は、大事なお話しをする日だから、どうしても一人で行かないといけないの。二時間で、必ず戻ってくるから」
まさきは、涙を拭きながら 「とけい かして くれる?じゃあ、まさき まってる。とけい もって まってるから」
まさきは、読めない時計を握って、玄関で待っていてくれた。
まさき 「おかあさん おかあさん!かえって きて、ありがとう!」

#253 冬どけ水


まさき 「あしも いれようゼ」
あき 「こおり とけちゃったんだから、もう のれないよ」
私 「靴、脱いじゃえば?こうやってー」
あき 「キャー!アハハ… きんもちいいゾ!」
まさき 「どう… ヒャー、きんもちいいなあ、あきー!」
あき 「なあ、これ ふゆどけみずだよ。ふゆが とけちゃったんだよ。はるが くるからさ、いっそいで にげてくんだよ」

連載21へ続く

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