見出し画像

「母親になって後悔してる」はなぜ売れたのか!?

2022年の12月放送の NHKの「クローズアップ現代」で
この「母親になって後悔している」という本が取り上げられていた

その番組を、偶然目にした私は「この本、読みたい」そう思った

図書館で予約をして 長い間待っていたこの本が ようやく手元に届いた
図書館から予約本を持ってきてくれた夫は
「この本には ブックカバーを掛けて」と頼んできたので
言われる通り ブックカバーを掛けて読んだ

本「母親になって後悔してる」

衝撃的なタイトルのこの本は イスラエルの社会学者(女性)が
「過去に戻れるとしたら母親にはならない」とする
イスラエル人女性23名への行なった調査をまとめたものだ

母親からのインタビューによると
文字通り「母親になったことも、子どもの存在も後悔している」と
訴える母親もいるが

「子どもは愛しているので、子どもの存在は否定しないが、母親という役割になったことを後悔している」と語る母親もいる

インタビューの中で語られる言葉はこうだ
・この役割に耐えられない
・子どもを産まないと認められなかったから産んだ
・今の知識があれば、子どもを設けなかった
・今私は自分の楽しみのためではなく、誰かの世話をするためにここいる
・私は祖母としての役割をもちろんになっているが、実はそれには興味はなく自分らしくないと思っている
・子どもが幼い頃は無条件の愛だが、それがいつしか成長と共に複雑になり、時に短剣のように突き刺さる
・私に似ているわが子が自分の同じ辛い目に合っているのをみて、辛い人生を2度味わっている

インタビューで語られる 母親たちの言葉は
「母親であることは 苦しく逃げられないことなのか」と
私の中で後味悪く響いた
でもこれが現実なのだと思った

この本はなぜ売れたのか?

この衝撃的なタイトルに 驚いた人も多くいるだろう
しかし この本は爆発的に!売れた
なぜ売れたのか・・・? そこにポイントがあるのだ

母親にとって 一番タブーである
「母親たちの心に ずっと押し込めてきた内面」を敢えて タイトルにしたからではないか

タイトルと全く同じように「母親になって後悔している人」
もしくは それに近しい思いをわずかでも持った母親が
「私だけじゃなかった!」とこの本を手に取ったからではなかろうか

つまり母親になったことで
後悔に似たような感情を持つ母親は
数多くいるということだ

自分の言葉として語ることはタブー
もしも「母親になって後悔してる」、「私は良い母親ではない」と自分の口から語ったら
周囲からこう思われるのではないかと言う不安

・もしかしたら、この母親は子どもを捨てるかもしれない
・育児放棄するかもしれない

「他者の言葉で語られる一冊の本なら」
と思って手を取るのではないか

この本が賛否両論ある理由

この本が賛否両論ある理由は色々だと思うが
一番は「母親が後悔していると、子どもが知ったらどうするのか!」ということであろう

他には
「産む前によく考えろ」とか
「望んでも授かれない人もいるのに、親失格だ」という声も聞こえてきそうだ

「母性」とはなにか

女性だったら 誰しもが当たり前のように 持ち合わせているとされる
「母性」とはなにか

・子犬を見たら 可愛いと思う気持ち?
・女性なら 一度は子どもを産んでみたいと思って当然?
・母は「神聖」で「聖母」のような存在?
・母親は自分を犠牲にして 子どもに尽くして当然?

「母性」の作者 湊かなえ氏の言葉

この本と一緒に紹介されていた小説がある 
湊かなえ氏の「母性」である
映画化もされている

私はこの本も貪るようにして 読んだのだが
その著者 湊かなえ氏も
クローズアップ現代の番組の中で こう語っている
「全ての女性には生まれながらにして、母性が備わっているとされることへの違和感がある」

そしてこうも 付け加えている
「みんな母性という言葉を定義づけ過ぎてるんじゃないかと。生まれた瞬間に(母性を)持つものだっていうなにか神格化されたものがあって、精神的にも追い詰めるようなことを周りがしてるんじゃないかって」

私の中に「母性」はあるのか

二児の母である この私も
自分の中に「母性」なるものがあるのかないのかは分からない
この「母性」という言葉の響きに
実は正直言って ぬるっとした気持ち悪さがある


母性など備わっていてもいなくても良いが
私は母性で子どもを育てているのではなくて

「自分が望んで生んだ子どもであるから その責任のもと育てている」
という言葉の方が的確である

母親や女性に求められる「無限の役割」

女性であれば 周囲からはこんな言葉を
何度も投げかけられたのではないだろうか

彼氏はいないの?
結婚しないの?
お子さんはまだ?
2人目はまだ?早く産まないと!
子育ては大変だけど、子どもは可愛いでしょう?
出産は大変だけど、また産みたくなるよね?
やっぱり母乳で育てなくちゃ!
産めば、なんとかなるから
父親より母親でなくちゃ、
母親は太陽!笑っていなくちゃ!
○カ月になったら離乳食、一歳になったら〇〇
絵本をたくさん読んであげてね
手抜きはしても、愛情は掛けてあげてね
母親は強い
今の時代、母親も働く時代よね
親の育て方が悪い!
母親はなるべく家にいた方が良い
疲れて帰ってくる旦那さんにこそ、優しくしてあげて

おいちょっと待て
女性であるだけで、母親であるだけで
世の中が思う「こうあるべき」という
無限の役割を押し付けすぎだろうよ

私は 本心はそう思っていても 不要な諍いは面倒なので
うすら笑いを浮かべて
「ええ・・・まぁそうですね」と答えてきた経験が山ほどある

女性であれば子どもが好きなはず
出産と同時に「母性」が芽生える
あなたもそうでしょ?と言わんばかり

社会の望む聖母のような「母親像」を否定しようもんなら
非難の対象になるから そっと胸の内にしまっておく


だからこそ
「女性であれば、母親であればみんなができていることが なぜ私にはすんなりできないのだろう」なんて思い悩むのではなかろうか

父親だったら後悔しないのか

「父親になって後悔している」人がいるのなら
どなたか続編の本を書いてほしい
男性や父親ならではの 苦しみももちろんあるのだろう

母性、父性いずれにしても
「こうであるべき」に押し込められることの 違和感であると思う

母親になり、変化せざるを得なかった事への悲しみ

私は「母親になって後悔している」訳ではない
母親になり今の子どもに出逢えたことは幸せである


でもこう言い表すことはできる
「母親になって 失ったものはたくさんある」
「母親になって 変化せざるを得なかった事への悲しみはある」
「母親として うまくやっているかは分からない」
「母親という立場から 逃げ出したいことはある」
「なるべく早く母親から卒業し 親子を対等な関係にしたいと思うことはある」

そういう想いを語ることさえも 憚られる世の中なら
母親であることは とても苦しいと思う
その想いを表出することさえも許されず
ただ笑って目の前の子どもを必死で育てているのだから

完璧な母親になれずに苦しんでいるよりも
「完璧でない母さんでもいいよ」と 寄り添ってくれる社会なら
偶然母親になった誰かだって 誰かに支えてもらいながら
どうにかやっていけるのではないのかね

私は母親だからと言って
社会が求めるような「○○すべき」を全てできなくても良いと思ってる

私は「母性」と形容されるような良き母にはなれなくても
不器用でも自分のやり方で 子どもを大事に思い 
側にいてあげるくらいの「私らしさ」を失くさないでいたい

※本を読みたいけど、なかなか読めないという方は
NHK「クローズアップ現代」の見逃し配信か、以下の記事
をご覧になると良いかもしれません

おまけ!!
偶然にも「母親になって後悔してる」が図書館の予約本として
届いたと同時に、届いた本がこちら

「ママはきみを殺したかもしれない」
本を抱えてきた夫は、ブルブル震えていたのは言うまでもなかろう(笑)

(あらすじ)
仕事に邁進してきた 母である主人公は
息子のことで呼び出しをくらう
担任は「息子さんは支援級がいいかもしれない…」と告げる

私が仕事をこんなにしていなかったら
もっと息子に向き合えていたら
私や息子は また別の人生を送っていたのだろうかという話

この本も面白かったので、読書好きの人はぜひ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?