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『熱源』 と 私の熱

今年の本屋大賞ノミネート作の『熱源』を、ただの「歴史小説やから読まない」では勿体ない。読んで良かった。

この小説から自分の生活に当てはめて、3つのことに対して自分の想いを書きたくなった。熱量を抑えて書いたのだけど、溢れていたらごめんなさい。

興味がない人はここで引き返してね。

あらすじ
樺太(サハリン)で生まれたアイヌ、ヤヨマネクフ。
開拓使たちに故郷を奪われ、集団移住を強いられたのち、天然痘やコレラの流行で妻や多くの友人たちを亡くした彼は、やがて山辺安之助と名前を変え、ふたたび樺太に戻ることを志す。
一方、ブロニスワフ・ピウスツキは、リトアニアに生まれた。
ロシアの強烈な同化政策により母語であるポーランド語を話すことも許されなかった彼は、皇帝の暗殺計画に巻き込まれ、苦役囚として樺太に送られる。日本人にされそうになったアイヌと、ロシア人にされそうになったポーランド人。
文明を押し付けられ、それによってアイデンティティを揺るがされた経験を持つ二人が、樺太で出会い、自らが守り継ぎたいものの正体に辿り着く。金田一京助がその半生を「あいぬ物語」としてまとめた山辺安之助の生涯を軸に描かれた、読者の心に「熱」を残さずにはおかない書き下ろし歴史大作。(Amazon.co.jpより)


1.差別

差別はどこにでも、いつの時代にもある。それが昔より緩和はされてても、根強く残るんやなと感じる。今もコロナ(Covid-19)の影響で、アメリカに住む中国人が危害を加えられてるのも現実。彼らに何の非もないのに、中国人てだけでそんな目に遭う。

差別したことがある方にも、される方にもなって思うのは、差別の元は「お互いの人種について知らない」ことが原因だと感じる。

旦那さんに「差別と区別のちがい」を教わってから、自分の無知さといい加減さが恥ずかしくなってしまった。今読み返しても、旦那さんの言葉はグサッと来る。

 「白人、黒人、中国人、日本人っていう括りとか見た目で、Maiは友達を選んでんの?やとしたら、それはかっこ悪いし、相手にめっちゃ失礼やと思うで、俺は。」

今では、中国人は〇〇だから〜とか言う人、相手が日本語が分からないと思って、その人の隣で日本語で文句を言う人に会うと、「彼らの何を知ってそんなこと言うてるの?どうせなら、英語で言ったら?それができないなら、その人の前で言うのは控える方がいいんちゃうかな?」って本人に言ってしまう。恥をかかされたような気分になった相手は、友達だったとしても私から離れていく。だけど日本語が分かるもの同士でも、目の前でコソコソされたら嫌やん。

嫌いな人と歩み寄れないのと同じで、受け入れられない物事や人種を受け入れるのは難しいかもしれないよね。

それに、差別や偏見は無くならないと思っている。

だから「差別はいけないんだよ!やめなよ」と一方的に言うつもりはないよ。ただ勉強して、その人らと充分に「人」として関わってからジャッジしようよ、って思う。それでも無理なら、仕方のないことだと思うし、仮にその人の考えに同調はできなくても尊重することはできる。

中国人が、日本人が、黒人が何?ゲイ、レズ、トランスジェンダーだから何?人種や性別もまるっと含めて、その人だと考えるのはアカンのかな。旦那さんの言葉を借りると…人種や性別で人の話をするのは、背が高い・低いの話をしているみたい。見た目や文化の違いがあっても、大事な人が亡くなれば悲しむし、嬉しいことがあれば喜ぶ、差別されたら傷つく。同じ人間には変わりないやん。だから人種や性別に優劣をつけるのも、つけられるのも好きじゃない。

2.教育

学校には寝に行くために通ってたから勉強はほとんどしていない。歴史はもちろん、小説『熱源』のアイヌ民族のことも、ほぼ初めて知るようなことばかりだった。こんな私が、高校まで卒業できたのが奇跡。

旦那さんは「”自分の人生の幸せ度を高めるため”の教養が大事。」と口を酸っぱくして言っている。私はそれを、心の教養だと考える。

テストで100点とる、いい大学に入るって意味の教養も大事だけど、毎日の生活に関わってくるのは世の中がめまぐるしく変化する中、自分がどう生きていくかだと思う。変化を嘆いて、誰かに助けてもらうまで何もせずに苛立ちを募らせるか、変化するものだと考えて、じゃあ今の自分が楽しく生きられる方法はないのかと考えて行動するか。

『熱源』にも、福沢諭吉の『学問のすすめ』にも、ユダヤ人の教えでも共通して書いているのは、

 「理不尽な出来事、人から搾取されないために、教育が必要」だということ。

それは言い換えると、「自分で考えて行動して解決する力が必要」ってことなんじゃないかな。早い段階でそれに気がついた旦那さんは、やっぱり悟り開いてんのかなって思う。教育、大事やで。

3.暴力

戦争、虐待、いじめ。「恐怖心」が一番服従しやすく、支配感を得られるから、そんな簡単な方法で人を傷つけコントロールしようとする。何でもそうやねんけど、簡単な方法で築き上げたものはすぐに崩れる。

でも『熱源』のように、教育が大事と考え「識字学校」を建てて、彼らの子孫の平和な未来を考えてくれた人たちがいる。この人たちが文字通り、「死ぬ」覚悟で築き上げてくれたおかげで、今の私たちが充分な教育を受けられて、日々の中で命の危険にさらされることなく過ごせているんだと感じる。

何かをより良くするために築き上げたもの、時間をかけたものは、後世にも残っていく。暴力、競争から学ぶべきことは多いかもしれないけど、残るものは喪失感とトラウマだけ。

日本に戦争がなくてもコロナ(Covid-19)の影響で、人は恐怖心を煽られて、食べ物やトイレットペーパー買い占め、自分さえ良ければになることも多い。

それが、じゃあ今後もっと酷くなって、今の生活が機能せんくなったとしたら…自分さえ良かったらって思う人が増えたら…生き残るために殺し合ったり、奪い合ったりすることが増えるんじゃないかと想像を巡らせてしまう。見境いなく、人が人を「虫」のように殺していく世の中になったら、これは戦争と同じくらい怖い。


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『熱源』をただの「歴史の話」だけに捉えたらアカン。背景や置かれている状況は違えど、このお話のような世界になる可能性もある。今起きていること、海外に住む自分と重ね合わせて読むと、全然他人事ちゃうかった。

読書は、そういうことを身をもって教えてくれる。


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