あなたの組織のひずみ、等級制度の設計ミスが原因かも?
「組織がどうも活性化しない…」
こんな悩みを抱える人事担当者は少なくありません。
何とか問題解決しようと、エンゲージメントサーベイを導入し、社員との対話の場を作り、パーパス浸透を図る取り組みを進める企業も多いでしょう。
ただ、どれも大きな成果を上げていない…なぜでしょうか?
実はその根本的な問題は、等級制度の設計ミスに起因しているかもしれません。
等級制度が機能しているかーー注目すべきポイントは非管理職から管理職への転換点
等級制度とは、従業員をその能力・職務・役割などによって区分・序列化し、業務を遂行する際の権限や責任、さらには処遇などの根拠となる制度を指します*1。
誤解を恐れずに言えば、「人をランキングする仕組み」とも言えるでしょう。
さて、この等級制度は、評価制度や報酬制度とともに、人事制度全体の基盤を形成する重要な要素です。一方、他の制度と違って、等級制度は組織の「骨組み」にあたるため、一度設計されるとその変更には大きな労力を要します。
例えば、等級制度に基づいて給与や昇進基準が設定されているため、等級の見直しを行うと、それが報酬や評価基準にも波及し、全体的な人事制度の再設計が必要になります。さらに、等級制度そのものが変更されると、全社員の役割や位置づけを再調整する必要が生じるため、人事にとっては手をつけにくい領域となりがちです。このような理由から、等級制度は柔軟な見直しがしづらいものでもあるのです。
では、こうした等級制度が実際に機能しているかをどう判断するべきでしょうか?
注目すべきポイントの一つとして、非管理職から管理職への転換点が挙げられます。
たとえ痛みが伴っても、取り組み"やすさ"ではなく取り組む"べき"領域から改革を始めるべき
非管理職から管理職への転換点のデザインは、等級制度運用において極めて重要なポイントです。
しばしば目にするありがちな失敗パターンを見てみましょう。
例えば、年功序列的に管理職が登用されるケースです。
右肩上がりの経済成長が続いていた時代とは異なり、現在の環境でその前提をもとに制度を運用すると、管理職の比率が増加し、人件費が高騰するだけでなく、無理にチームを増やすことでサイロ化のリスクを招く恐れがあります。
一方で、管理職の昇格基準が厳格化し過ぎるケースも問題です。
未来に希望を持った非管理職が、この組織では昇進の機会が得られないと感じると、閉塞感を抱くことがあります。その結果、モチベーションが低下するだけでなく、最悪の場合、若手や中堅社員の離職が増える恐れもあります。
このように、非管理職から管理職への転換点をどう設計するかは、まさに人事部門の腕の見せ所なのです。
ただし、そこで悩ましいのが、管理職と非管理職の間で適用される、異なる種類の等級制度の存在です。
すべての日本企業に当てはまるわけではありませんが、多くの日本企業では、
・管理職は職務等級制度(担当する職務の内容や困難度によって従業員を序列化する制度)
・非管理職には職能等級制度(職務遂行能力を基準に従業員を区分・序列化する制度)
が適用されています*2,3。
このような構造があるため、非管理職から管理職への転換点のデザインは難しくなるのです。
もちろん他にも注意すべきポイントは多くありますが、大切なのは、組織にひずみを感じたとき、取り組み"やすい"ところから始めないことです。
特に研修やワークショップの開催は、人事にとってすぐに取り掛かることができ、それなりの達成感も感じられるので、安易に手を出しがちです。
しかし、その効果は一過性であるため、覚悟を決めて、組織の骨格である等級制度なども見直すことが真に重要だと考えます。
*1 日本の人事部「等級制度」https://jinjibu.jp/keyword/detl/1252/(2024年9月28日アクセス)
*2 あしたの人事 Online「等級制度とは?職能・職務・役割等級の概要と事例を基に作り方を解説
」https://www.ashita-team.com/jinji-online/institutional/12236(2024年9月28日アクセス)
*3 弁護士法人AIG Associates「職務等級制度とは|メリット・デメリットや導入方法など」https://人事労務alg.com/roumu/personnel-evaluation/job-based-grade-system/(2024年9月28日アクセス)
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