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人事担当者やマネジャーは要注意?「マタイ効果」とは

「〇〇さん、あのプロジェクトの成功がきっかけで、今度リーダーに抜擢されたんだって!」

キャリアアップを目指す上で、何かの成功が次のチャンスを生む「マタイ効果」を活用することは極めて重要です。

しかし、人事担当者やマネジャーの立場からすると、気を付けたい効果のひとつでもあるんです。




キャリアアップで意識したい「マタイ効果」とは?


「マタイ効果」は、優秀と認識された人物がさらに評価を受け、その結果として新たなチャンスを得る一方、そうでない人材はチャンスを失ってしまうという現象です。
この概念は1960年代に米国の社会学者ロバート・K・マートン氏によって提唱されました*1。

例えば、ある学生が高校時代に優秀だと認識され、先生からの推薦で名門大学に進学したとします。その学生は、名門大学の卒業生という学歴によって、就職活動を有利に進めることができました。そして、就職後も経験を積み、スキルを磨き、昇進や昇給の機会を得ることができました。

このような好循環は、もちろん本人の努力や実力も大きいでしょうが、ある側面ではマタイ効果が働いているということもあるのです。

ビジネスの世界でも、このマタイ効果はよく見られます。

たとえば、あるプロジェクトで顕著な成果を上げた人材が、次の年度には重要なポジションに抜擢されることがあります。そして、その後も、さまざまなチャンスに恵まれ、昇進へとつながるケースがあります。これらの例を見ていると、成功は偶然ではなく、一度成功を収めるとその後も成功が続く傾向があることがわかります。

さて、我々一人ひとりにとってみれば、このマタイ効果をいかに自身の周囲で生み出すかが重要になってくると言えます。なぜなら、成功の好循環を一度作り出すことができれば、その後のキャリアを有利に進めることができるためです。

しかし、人事担当者やマネージャーから見ると、この効果の捉え方は少し異なります


「マタイ効果」に囚われず、いかに公平な機会提供を実現すべきか?


たしかに個人視点で見れば、自身の周囲で「マタイ効果」を生み出すことは、成功への一つの道筋と言えるでしょう。

しかし、公平な機会提供を目指したい人事担当者やマネジャーにとって、この「マタイ効果」は慎重に取り扱うべき現象です。

なぜならマタイ効果が働くと、個々のメンバーが実際の能力に比べて過大評価(または過小評価)される可能性があり、結果を出しているメンバーとそうでないメンバーとの間で、格差が広がってしまうからです。

経営・人事的視点から見れば、将来有望な人材に対する機会提供は、組織の成長と幹部育成にとって重要です。しかし、その評価や成長機会の在り方においては、マタイ効果が働いていないかどうかを押さえておくことが重要です。特に、まだまだポテンシャルのある新人に対して早期にマタイ効果が働き、格差が広がってしまうことは避けるべきです。

キャリア初期に不平等な差が生まれないようにするためにも、人事担当者やマネジャーはマタイ効果の存在を理解し、現場と調整しながら対策を講じることが重要です。そのためには、評価制度の透明性を確保し、公平な機会提供が行われるようにすることが求められます。また、新人の育成においては、各個人の能力やポテンシャルを見極め、適切な育成プログラムを提供することも重要となります。

このように、マタイ効果を理解し、その影響を最小限に抑えつつ、組織全体の成長を促進するための戦略を練ることが求められるでしょう。


(参考情報)

*1 日本の人事部「マタイ効果」https://jinjibu.jp/keyword/detl/1625/(2024年5月13日アクセス)

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