マガジンのカバー画像

小川志津子の文。

91
20年来取り組んだライター職を離れた派遣社員が、日ごろ見聞きし感じたことを記す随筆マガジン。
運営しているクリエイター

#仕事

激動の秋、アリ地獄にはまる。

激動の秋、アリ地獄にはまる。

ちょっと今までにない秋を過ごしている。

10月になったとたん、コロナになった。びゅんびゅん上がっていく自分の体温。しかもなかなか下がらない。痛むノド、痛む節々。1日に2回、母に必ずLINEをするという約束を交わし、粛々とそれを遂行した。生きてます、今日も生きてます、おかーさん。味も匂いもしないけれど、でも「黒糖フークレエ(蒸しパン)」と「ロッテ クーリッシュ」だけは美味しいです。だから明日も生き

もっとみる
「イラ立ち」の知覚過敏

「イラ立ち」の知覚過敏

研修の日々である。

小さいころから、人の声にひそむニュアンスに知覚過敏だ。喜びや、悲しみや、孤独や、イラ立ちが、その人の声にまみれて聞こえるのだ。ひとりっ子の私にとって、まわりの大人たちを味方につけておけるか否かは死活問題だったので、各種の匂いをいち早く嗅ぎ取っては、先回りしておどけてみせる。それが当時からの、私のファースト・ミッションだった。

大人になってもその習性は変わらない。相手が自分に

もっとみる
仕事中の雑念たちを記録するという試み

仕事中の雑念たちを記録するという試み

「なにか、考えごとしてるからじゃないですか?」

 データ入力業務のタイムがなかなか縮まらず、しかもとてもくたびれるのだと申告したら、職場の若い先輩にそう言われた。

 考えごと……してる。してるわ。

 私の脳みそは、ほっとくと雑念だらけだ。この職場にやってきて2年半。手が勝手に動くようになってきて、脳みそに隙間ができると、その隙間があることないこと、考えている。あっ、イカンイカン、と思って意識

もっとみる
人並みに働くって大変ね

人並みに働くって大変ね

週4だった派遣仕事を、週5に増やそうとしている。

ライター職を完全に失って半年、蓄えをちょっとずつ切り崩してきたけれど、そろそろ先が見えてきた。この歳でゼロから副業探しもちょっとキツい。今している仕事を増やすのが一番現実的な気がしたのだ。

派遣会社にその旨を申し出て数日、上司に呼ばれた。

まず、「私達の、オガワさんと働きたい気持ちは、相当なものです」と言われた。勤怠も良好だし、コミュニケーシ

もっとみる
仕事が好きでも、好きでなくても。

仕事が好きでも、好きでなくても。

「好きを仕事にしよう!」とかなんとか、人はよく言うけれど、現実は、もともと興味があったわけではない仕事に就いて、粛々と働いている人が大多数なのだと思う。そういう人たちが、「好きを仕事にする」ための転職をはかるよりも、今、手の中にあるその仕事をゆかいにすることの方が先なんじゃないかと、私なんかは思っている。

 その仕事が嫌いで嫌いで、毎朝気が重くて重くて、這うようにして職場に通っているなら別である

もっとみる