マガジンのカバー画像

小川志津子の文。

91
20年来取り組んだライター職を離れた派遣社員が、日ごろ見聞きし感じたことを記す随筆マガジン。
運営しているクリエイター

2020年4月の記事一覧

47歳、初めての会社勤め

47歳、初めての会社勤め

経緯はここに詳しいけれど、1年2ヶ月の会社勤めを、昨日、卒業してきた。

もともとフリーランスで長く働いてきた身だ。決まった時間に起き、出かけ、決まった時間に仕事が始まり、その後は夜まで自由がきかない、そんな生活が長く続くことは、ほぼ初めてだったんじゃないかと思う。

最初のうちは、自分のメンタルを保つことに必死だった。私の中にはどうしても、「望んでいたフリーライターとしての能力が限界を迎えたので

もっとみる
「怒り」はどこへどうしたものか。

「怒り」はどこへどうしたものか。

もやもや、むかむかしたときは、何らかの手仕事をすることにしている。

技術や厳密さを要するものであってはいけない。なんなら、目をつぶっていてもできる手仕事に限る。先日の私は餃子を作った。材料を刻んでボールに入れる。ぐっちゃ、ぐっちゃと練り上げる。包むときは、ひだをつけない。ひだには技術がいるからね。水を塗って、押しつけて。小麦粉さんのお力で、おんみずから、くっついていただく。

むかつくものからは

もっとみる
母の「おてがみ」

母の「おてがみ」

小さい頃から、ひとりで過ごすのが好きである。

なにしろ「おるすばん」が大好きだった。家に帰ると、父も母もいない。静まり返った我が家に足を踏み入れると、言いようのないわくわくがこみあげてくる。寂しさとかはまったくなかった。ただ、自由がまるごと、そこにあった。それをのびのびと享受できていた理由を、最近、突然思い出した。

母が、いつも、手の込んだ「おてがみ」を置いていってくれたのだ。

母とは朝、学

もっとみる