僕は、不良ではなかったが、不良と呼ばれるその子と一緒に居た。 自転車の後ろに僕を乗せて、仲間の何人かと裏山へ赴き、タバコを吸いながら、とりとめもないことをとりと…
僕は、夜の街を歩いていた。 埃っぽい街で、特別予定もなく、夜道をほっつき歩いては、人を眺め、騒音に耳を澄まし、灯りのある方へ、音のする方へと歩を進めていた。 そ…
客人の迎え方がよく分からない。 かの太宰治も同様のことを晩年の紀行文『津軽』で残している。 とても、チャーミングな文体で共感ポイントが多く大好きだ。 これを少々…
労働の味。というものがあると知ったのは、わりと最近のことだ。 そう、僕が結婚をして両親となった2人の事業を手伝うようになってからのこと。 両親は、牛飼いをしてい…
僕は、記号で人を総称したくないので仮名で話をしたいと思う。 その人は、杏さんといった。 小学生の頃の友人が誰もいない、中学校の入学式で同じクラスであることを知っ…
DEAN & DELUCA MAGAZINE を東京に居るうちに手に入れたかった。 ちょうど、小動物が木の実を集めるのと同じように、 山陰での冬を乗り切るには、良質な書物の入手が必要不…
Ogura Kentaro
2020年1月25日 09:26
僕は、不良ではなかったが、不良と呼ばれるその子と一緒に居た。自転車の後ろに僕を乗せて、仲間の何人かと裏山へ赴き、タバコを吸いながら、とりとめもないことをとりとめもないまま喋っては、無為に時間を過ごしていた。彼は、僕にタバコを勧めはしなかったし、僕も吸いたいとも思わなかった。そのように、タバコを吸わない僕が、なぜあそこに一緒に居たのかは不思議ではあるが、ともかくそういうことになっていた。僕
2020年1月25日 09:14
僕は、夜の街を歩いていた。埃っぽい街で、特別予定もなく、夜道をほっつき歩いては、人を眺め、騒音に耳を澄まし、灯りのある方へ、音のする方へと歩を進めていた。その男は、後ろのガラス壁を背にして、物思いに耽っていたご様子。不意に目の前に現れた、東洋人の男に少し驚きの顔を見せたあと、何を思ったか手招きをして自らの店へと誘った。僕は、比較的警戒心の強い方であり、人見知りであり、面倒なことが何
2019年12月18日 14:13
客人の迎え方がよく分からない。かの太宰治も同様のことを晩年の紀行文『津軽』で残している。とても、チャーミングな文体で共感ポイントが多く大好きだ。これを少々拝借させて頂き、私の煩悩を露見したいと思う。“これは私においても、Sさんと全く同様なことがしばしばあるので、遠慮なく言うことができるのであるが、友あり遠方より来た場合は、どうしたら良いかわからなくなってしまうのである。ただ胸がわく
2019年12月17日 13:54
労働の味。というものがあると知ったのは、わりと最近のことだ。そう、僕が結婚をして両親となった2人の事業を手伝うようになってからのこと。両親は、牛飼いをしている。乳牛を60頭近く飼って、365日、毎日の朝晩と世話をするのだ。もちろん、仕事はそれだけには収まらず、機械の整備や、牛糞の処置も兼ねた堆肥の作成、様々な問題ごとの調整(ことに、世間知らずで、分からず屋の娘と息子から持ち込まれる問題
2019年12月16日 16:32
僕は、記号で人を総称したくないので仮名で話をしたいと思う。その人は、杏さんといった。小学生の頃の友人が誰もいない、中学校の入学式で同じクラスであることを知った。杏さんは、誰よりもか弱そうな身体の女性だった。自身の身体を傾けなければ歩くのもままならなかった。僕は、僕が今までに生きてきた中では出逢うことのなかった同級生に、いささか戸惑った。一人一人が新しい環境に浮き足立つ教室で、
2019年12月3日 15:58
DEAN & DELUCA MAGAZINEを東京に居るうちに手に入れたかった。ちょうど、小動物が木の実を集めるのと同じように、山陰での冬を乗り切るには、良質な書物の入手が必要不可欠だからだ。それは、思い付きで手に入るものではなく、既に1軒目に飛び込んだDEAN & DELUCA のカフェでは、取り扱いがないとフラれていた。私の情報収集力の詰めの甘さは、大抵こういった事態を招く。