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相違なき時間

僕は、不良ではなかったが、不良と呼ばれるその子と一緒に居た。
自転車の後ろに僕を乗せて、仲間の何人かと裏山へ赴き、タバコを吸いながら、とりとめもないことをとりとめもないまま喋っては、無為に時間を過ごしていた。
彼は、僕にタバコを勧めはしなかったし、僕も吸いたいとも思わなかった。
そのように、タバコを吸わない僕が、なぜあそこに一緒に居たのかは不思議ではあるが、ともかくそういうことになっていた。

僕は、問題児ではなかったが、問題児と呼ばれるその子と一緒に居た。
激しい運動をする部活動で、もう嫌だと言うほど、走ったり、飛んだり、飛ばされたり、投げたり、やっぱり走ったりしていた。
どうして、僕たちがそのような運動ばかりを熱心にしていたかは不思議ではあるが、ともかくそういうことになっていた。

学校を卒業して幾年か経ったあと、彼は唐突に、自分は日本人ではない。と、僕に言った。
そうか、そうかと思っただけだったし、実際に、そうか、そうかと言っただけだった。

僕たちは、頻繁には会わないが、年に4.5回は顔を合わせて、互いに「何かできることはないか?」と尋ね合う間柄が続いている。
どうしてかは、やはりわからないが、ともかくそういうことになっている。


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