【激ヤバ小説】三島由紀夫の傑作『憂国』を読んだら、眩暈と動悸でその場にぶっ倒れた話
はじめに
こんにちは。小倉トーストです。
突然ですが、みなさんは小説を読んだあとにぶっ倒れた経験はありますか?
私はあります。この人の所為で。↓
このお方は日本が誇る文豪、三島由紀夫だ。
代表作は『仮面の告白』『金閣寺』『潮騒』など。
彼は小説の執筆だけでなく、映画出演や剣道、民兵組織の結成(!?)など、
マルチに活躍した作家である。
その過激な作風や、例の市ヶ谷駐屯地での事件などの影響もあってか
かなり色々と危険な人物なのではないかと偏見を持たれることが多い。
確かにかなり”ヤバめの思想”をお持ちの方なのだが(三島事件に関しても流石に擁護しかねる)、彼の作品はとても美しく、そして大変読み応えのある名作ばかりだ。
そんな彼の小説のなかでも、一際”ヤバい”作品がある。
それは…….
『憂国』
自選短編集『花ざかりの森・憂国』に収録されている一編だ。
あらすじはこんな感じ。
重い………。とてつもなく重いテーマである。
至って平和なコミュニティであるnoteに投稿して良いか躊躇う程だ。
それうえ、三島由紀夫の変態的な性癖が文章の節々に滲み出ているので、読み進めるだけでかなりの体力を持っていかれるだろう。
具体的な内容を記すと運営からBANを食らいそうなので、ざっくりとした内容と感想を少しだけ書きます。
具体的な感想や考察を求めていた方には申し訳ないが、かなりアバウトな内容なので勘弁してください。
『最後の晩餐的セックス』と、嗚咽するレベルの生々しい割腹描写
!!【この先ネタバレ注意】!!
この短編には、主に2つのピークポイントがある。
ひとつは、”文字通り人生最後の性行為”のシーン。
もうひとつは”ラストの切腹シーン”だ。
究極に悲しい濡れ場
武山中尉とその妻・麗子は、自決の直前に最後(最期)の性行為を堪能する。
その行為の描写はとても緻密に描写される。
夫妻の動作ひとつひとつが美しい文章によって実況されていく。
この部分の文章のみを切り取って他人に見せれば、「官能小説か?」と反応を食らうだろう。
こんな阿保な事を言うのは申し訳ないが、このシーンのみで十分に官能的な気分になれてしまう(普通に〇起した)。
この部分でエロス、生のよろこびを十分に描写しておいて、読者にエモい感情を植え付ける。
この丁寧すぎるほどの下ごしらえが、この後の結末をより過激なものにしてしまうのだ…..
壮絶極まりない最期
文字通り最後の性交を終えた二人は、身を清め遺書を用意する。
その後、武山中尉が軍刀を手に取り、妻に見守られながら中尉は”儀式”を遂行する……..
詳しい内容は割愛する。というか、割愛するしかない。
読んで驚愕するだろう。数ページにわたり、漢の割腹の様子が緻密に描写される。それも三島氏の卓越した文章力によって。
読み進めていくと、冗談抜きで気分が悪くなる。
ここ迄書いておいてなんだが、グロ耐性の無い方はあまり読むことをおすすめしない。
特に、感受性の豊かな方が読んでしまうと、取り返しのつかないことになってしまうぞ。
これは漫画や映画とは違うベクトルの恐怖だ。
小説というのは自分自身でその文章の情景を想像し、補完してしまうので、どうしても自身の想像する最も”グロい”シーンが脳裏に浮かびあがってしまうのだ。
これに関しては、映像作品では到底味わう事の出来ない感覚である。
ゲロ吐きそうになりながら、同時にゾクゾクと興奮が止まらなくなってしまう。故にページを捲る手が止まらない。
とりわけ最後の文章は圧巻だ。
文庫本を手に取り、この悲劇の結末を自分の眼で確かめて欲しい。
『憂国』を読んだ自分の、あり得ない動揺のハナシ
ここからは自分自身の些細な実体験だ。
この記事を書いた最大の目的は、単純に私のアホみたいな話を聞いてほしかったからなんだ。
最初にこの作品を読んだ日の記憶を鮮明に覚えている。
当時高校生だった自分は、当時上映していたvs東大全共闘のドキュメンタリー映画の影響で、三島由紀夫の作品に大変興味を持っていた。
「最初に読むなら短編がいいかな~」なんて軽い動機で、『花ざかりの森・憂国』をもって三島文学デビューを果たしたのだ(今考えるととんでもないな)。
表題になっているほどだし、まずは『憂国』からということで、市立図書館の読書スペースにて読み進めることにした。
そして、例のシーンに差し掛かる。
中尉の自決する場面を読み終えたところで、今までの人生で体験したことのない程の耳鳴りが私を襲った。
その上、畳みかけるように眩暈、吐き気、そして張り裂ける程の動悸が自身の体に降りかかってきた。
生きた心地がしなかった。
図書館の真ん中でゲロぶちまけたら最悪だ。
そう思った私は急いでトイレに向かった。
しかし、足に力が入らない。そのうえ強烈な立ち眩みによって視界はほぼゼロ。真っ暗だ。
しかし、視界が真っ暗なことにすら気づくことができなかった故に歩くことをやめなかった。
結局、本棚に体をぶつけて派手に転んでしまう。
助けを呼ぶ気力もない。
過疎ってる図書館なので、倒れたとて誰にも気づかれなかった。
恥ずかしいとか、焦りとかそういう感情は全くなかった。
あの時の自分は、とにかくゲロを床に撒かないことに必死だった。
トイレ前の休憩スペースに腰かけ、水を飲む。体中からあり得ない量の汗がジワジワ滲み出る。
しばらくして視界が戻った。
その後、数分うずくまって仮眠をとり、本を返却して外に出た。
帰宅してからは、もう何もする気にならなかったので速攻就寝した。
さいごに
流石に、小説を読んでぶっ倒れた経験はこれが初めてだった。
ここまで、良くも悪くも自分の感情を揺さぶってくれる作品はふたつと無いだろう。
当時の自分からしたら最悪な経験だったけど、回想するとあれは三島由紀夫によってもたらされる”神秘体験”のひとつだったのかも。
あの経験が、自分自身のなかで文学のもたらす力というものを神格化させているのだと思うと、人生のなか無くてはならない経験だったんだとしみじみ思う。
以上、『憂国』のレビューとささやかな体験談でした。
すごい自己満な投稿に付き合ってここまで読んでくれてありがとう!
これからもよろしくお願いします!!
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