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書籍【罰ゲーム化する管理職~バグだらけの職場の修正法】読了

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◎タイトル:罰ゲーム化する管理職~バグだらけの職場の修正法
◎著者:小林祐児
◎出版社:インターナショナル新書


「管理職は罰ゲーム」とは衝撃的なタイトルだが、決して誇大な比喩ではないと言える。管理職はどうなるのか?
管理職の役割が益々複雑化し、ハマったら抜け出せない底なし沼のような状況に陥ってしまっている。
何とかこの負のループを抜け出さなくてはいけない。
原因を断ち切れば解決するという単純な話でないことは間違いない。
しかしながら、原因を特定しない事には先に進めない。
現実的に原因は複雑に絡みあっているが、それを少しずつ紐解く必要がある。
実際にどうすればよいのか。
本書ではデータなども駆使して、原因を追求してくれているが、個人的に実感と合致している点も多かった。
ここでは「職場がバグっている」と表現しているが、課題がある状態を放置したままでいることが、バグと言える。
過去のやり方を今も変わらず継続してたら、この時代では上手く行かない点は多い訳だ。
簡単に言えば「おかしな状況を放置している」という問題であるが、これを放置しているのは経営や人事であって、現場は課題から逃げられる訳がないから、何とか対応しているのが現実なのである。
しかしながら、現場レベルで出来ることには限界がある。
当然根本的な解決は出来ないために、どうしても対処療法になってしまう。
それでこぼれる水を何とか塞ぐ訳であるが、穴が完全にふさがって解決した訳にはならない。
こんな状況が様々な職場で起きている。
これについては、私自身が現在人事部に身を置くために、非常に耳が痛い話である。
人事として良かれと考えて様々な制度や施策を導入する訳であるが、これが現場からは悪評なことが多い。
人事は人事で「もっと次の時代の変化に合わせて」と考えて、新しい施策を入れようとするのだが、現場からすれば「そんなことよりも、もっと現場で困っていることを助けてほしい」となる訳だ。
この「現場で困っていること」を全て背負ってしまっているのが、現時点の「管理職」ということになっている。
構造的にこうならざるを得ない役割になっているからだ。
例えば現場で新しい課題が出てきた際も、誰もその対処を経験したことがない場合が多い。
そうなると、誰がどういう判断をして物事を進めるのかという話になる。
結局ある程度の解決の方法が見えたとしても、現場で勝手に対処する訳にはいかない。
ここが「コンプライアンス重視」「ガバナンス重視」となっている昨今の難しいところである。
結局はある程度役職についている人が判断したことにしなければいけない訳であるが、それは取締役や社長にまで上がることはほとんどない。
当然超重要なことは社長判断となる訳であるが、現場で起きている様々なことは社長が出てくるほどの事ではない。
むしろ社長が出てきた方が、課題が増える場合すらある。
これは社長の能力云々の話ではなく、今の現場はどんな所も相当に複雑になっているということなのだ。
現場の深くまでデジタル化がされているし、さらにSNSがあることで、一つの判断ミスが大きな炎上に発展しかねないほどリスクもはらんでいる。
結局これらのことを全て背負って、管理職が判断をし、日々のトラブルを解決させているということなのだ。
これが仕事である以上、管理職の方々も自分の業務として対応せざるを得ないだろう。
物事を複雑にするのは、ここに「残業時間」「ハラスメント」「テレワーク」などが絡む事だ。
働き方改革によって、法律が益々厳しくなっている。
当然ハラスメントは撲滅されるべきであるが、この厳罰化によって上司は部下に怒れなくなってしまった。
勤務時間についても同様である。
こうなると、現場でトラブルが起これば、管理職が直接解決に向かわざるを得ない。
部員に対して、時間外まで対応を強要することは出来ないし、無理強いをすればそれこそハラスメントと訴えられかねない。
そもそも部員がテレワークしていたら、トラブルを解決できる範囲は限られていて、結局管理職が現場に駆けつけて対応せざるを得ない。
これらは課題解決の話であるが、今は新しい時代の変化に伴って、会社の制度やシステムもどんどん更新されてしまっている。
「新たな人事制度は~~です」と人事から説明されても、内容を理解して運用するのは現場の管理職である。
社内システムだって同様だ。
そもそもITやデジタルに強ければまだ対応できるが、それらが苦手な管理職は本当に罰ゲームだと思う。
部下からは白い目で見られ、経営や人事からは「何とか対応してやってください」と言われるだけである。
経営や人事がシステムを直接使う訳ではないから、勝手なものである。(私自身が人事のため、戒めのためにここで記載している)
こうして様々なことが絡み合って、負の連鎖は再生産されていく。
現実的にこれらを断ち切る方法があるとは思えない。
本書では解決策も示しているが、実際に行うことは難しいかもしれない。
だからといって、このまま放置する訳にもいかない。
1つの案として出ていたのは、管理職の役割を分業するということだ。
部長が1人だから、その1人に仕事が集中する訳で、1つの部門で部長を2人にする。
さらに役割を分業するという案があった。
現実的にこれで対処できる職場もあるかもしれない。
しかしながら、当社を考えてみると、そもそも現場の人材が不足しているという状況なので、この方式が機能するとは想像できない。
出来そうな部門や職場から試しながらやってみるという感じだろうか。
「メンバーに対しての研修や情報提供をもっと行うこと」は、効果があるかもしれない。
結局メンバーが「上司が何で悩んでいるか分からない」という意思疎通のミスマッチが、この問題を増幅させている原因でもある。
「管理職研修でこういうことをやっている」など、メンバーにも人事からサマリーを共有することで、少しは上下の意思疎通のミスマッチを解消できるかもしれない。
後はやはり「特別感を出す」「ギャラを上げる」ということだろうか。
私の会社も、かつては部長になると特別な権限を持つことができた。
小さなことであるが、出張の手当が増えたり、グリーン車の使用が認められたり。
交際費やタクシー使用の権限は基本的に役職者以上だった気がする。
これらが今は「管理職だろうと無駄な経費は削減」となり、特別な権限はほとんど残っていない。
しかも給料については、管理職手当が少々付く程度の差。
これが今の仕事量と見合っているのか?
当社内でも「部長を降りたい」と自ら訴えて、現場仕事に戻った人がいる。
とにかく今はメンバーを管理するのが大変である。
ハラスメントで訴えられるよりは、現場でコツコツと、自分に合った仕事をしている方が気が楽かもしれない。
いずれにしてもこの問題は根が深い。
著者の言葉通り「このまま放置する訳にはいかない」のだ。
今の職場は、本当にギリギリの状態で回っている。
経営陣には、この状況を中々理解されない訳であるが、ここは何とか人事が盾になって解決していくしかないと思う。
このままでは、現場が崩壊してしまう。
人材を大事にしない企業に未来はない。
一発逆転の具体的解決策は見当たらないが、まずは空いた穴を完全に塞ぐことから行う必要がある。
バグが生まれる構造を根絶やしにしなければ、この負のスパイラルが続いていつか崩壊してしまう。
速やかにバグの原因を究明して、一つずつ対処していくしか方法がないのだ。
こう考えると、実は人事部門も罰ゲームだったりするのだが、とにかく何とかするしかない。
時間はあまり残されていない。
(2024/3/14木)


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