【目印を見つけるノート】368. カラーの小さなものがたり
きょうは、花のものがたりです。
🌿
とある小さな街の
まがりかどのおうちに
カラー(オランダカイウ)の株が植えられていました。
3月の半ばに最初の花が咲きました。
恥ずかしがりやさんなのか、数日隠れていました。
「こんなにきれいで白い花なのに、もったいないなあ。本当に恥ずかしがりやさんなのね」
通りがかりの女の子が、しゃがみこんでのぞきこみます。
3月の半ばに、
もうひとつの花が咲きました。
ちょっとツンとして、はじめのお花にそっぽを向いているようです。
「わたしもママに怒られると、こんな風にぷいっとするなあ」
学校の帰りに、女の子はまた
カラーの前にしゃがみこんでいました。
そして、タタタッとうちに入ると
お母さんにカラーの話をしました。
「お花はね、あんまりくっつかない方がいいの。特に大きいお花は、離れていないと栄養がうまくとれないのよ」
お母さんは笑っていいました。
「そうなんだ。なかよしになりたくないわけではないのね」と女の子はつぶやきました。
それから何日か経った夜、
雨がざあざあ降って、
風がびゅうびゅう吹きました。
春の嵐でした。
「お花さん大丈夫かな」
女の子は晴れ渡った翌朝、ランドセルを背負って小走りでカラーのところに行きました。
「あっ!」
まだ昨夜の雨つぶで濡れている葉を従えて、
はじめのカラーがつぎのカラーをかばうようにすっくと立っていたのです。
女の子ははじめのカラーをなでてあげたくなりました。でも、お花にペタペタとさわることはできないので、
「あんなに恥ずかしがりやさんだったのに、よくがんばったね」とほめてあげました。
そういわれたカラーは誇らしく、うれしく、堂々と立っていました。
なかよしになったふたりの時間は
長くは続きませんでした。
はじめのカラーは、
誰かのいたずらでポキンと折られてしまいました。
つぎのカラーは、
どんどん元気がなくなって、
ツンとすましていた自慢の白いひらひらも、茶色くなっていきました。
そして、
あっという間に枯れてしまいました。
女の子は春休みになって、学校はお休みだったのですが、朝は外に出て毎日そのようすを見ていました。
はじめてのカラーが折れていたのも、
つぎのカラーがすぐに枯れたのも
見ました。
女の子は泣きながら、お母さんに訴えました。
「せっかくなかよくなれたのに、お花がかわいそうだよう、かわいそうだよう」
お母さんは、
「そうだね、本当にかわいそうだね」
と女の子をぎゅっと抱きしめました。
明日から新学期です。
女の子はお母さんと買い物にいくとき、
カラーの植え込みを見ました。
そこには、3番目のカラーがすっくと立っていて、4番目のカラーが子どものようにちょこんとしています。そして、5番目と6番目のカラーがもうすぐ咲きそうです。
「最初と次のお花のように、なかよしになるといいわね」
お母さんは女の子にそういいました。
今日の空は晴れていて、
おひさまもカラーを見守っています。
花もにこにこしているように
女の子には思えました。
Fin
・・・・
追伸 フィクションですが、
最初のカラーがなくなって、
次のカラーが枯れていくのは
とても悲しかったので、
写真を撮れませんでした。
おがたさわ
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