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私の好きな人

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「キミは嘘をつかない」スピンオフです。ホソク部長への片想いストーリー、全13話(2022.11〜連載)
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2022年11月の記事一覧

私の好きな人 1

私の好きな人 1

秋らしい和やかな朝の光が無人のオフィスを柔らかく包み込んでいる。いつも通り誰も出社していない静かなフロア、その南東側に法人営業部のエリアがある。窓側には二人の部長の大きなデスクが、そしてそれぞれを起点に楕円を描くように各営業チームのデスクが並んでいる。椅子にバッグを置いたらPCを起動し、引き出しから拭き掃除のシートを取り出す。私の日課、それは、朝イチで部長と同僚のデスクを拭くこと。新卒の頃から続け

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私の好きな人 2

私の好きな人 2

朝、鏡の前に立つと2割増に浮腫んだ顔の私がいる。はぁ。生理。いつもより重そう。目覚めた瞬間から頭も重いし全てにおいてやる気が出ない。着ようと思って出しておいたオフホワイトのパンツをクローゼットに戻し、あまりお気に入りでもない黒のスカートを憂鬱な気持ちで履く。ああ、今日はホソクさんが出張から戻ってくる日なのに。

直行で訪問したアポ先からオフィスへ戻ると、ドアを開けた瞬間に大好きな明るい笑い声が耳に

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私の好きな人 3

私の好きな人 3

人事部からの一斉メールが届くと周辺のデスクからぽつりぽつりと小さなため息が聞こえた。人事評価面談の季節だ。この会社には世界共通の人事評価プロセスがあり、それにかなり力を入れている。年初に社員自身が伸ばしたいスキルを設定し、定期的にチェックしながら一年を終える前に上司と共に振り返る。システムとしては素晴らしいのだが、年末のこの時期になると煩わしくてたまらない。何故なら上司との面談前までに年初に設定し

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私の好きな人 4

私の好きな人 4

定時まで1時間あるのに外はもう真っ暗だ。電話も鳴らない静かなフロア、同僚たちは各自デスクでPC作業をしている。残りの仕事を優雅に終わらせて今日は定時で帰ろう、そんな雰囲気が漂う中、私は余計な思考が邪魔をして仕事に全く集中できない。ホソクさんが、先ほどからずっと「東京カレンダー」を読んでいる。片肘を立てて、真剣な表情で「艶やかな夜を約束する珠玉の10軒」なんて特集が大見出しになっている雑誌を読んでい

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私の好きな人 5

私の好きな人 5

会議室フロアでミーティングを終えアシスタントの黒木さんとエレベーターホールへ向かうとホソクさんが女性と楽しそうに談笑している。モデル並みのスタイルにハイヒール。高価そうなバッグとジュエリー。スパイシーな香り。くっきり入ったアイラインとストレートの黒髪。私は一瞬、吉田さんの言う「帰国子女っぽさ」とやらを思い出した。ホソクさんが私たちを部下と紹介すると彼女はバッグからブランドロゴが目立つ名刺入れを取り

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私の好きな人 6

私の好きな人 6

犬も歩けば棒に当たり、女が営業で出歩けばセクハラに遭う。しかも近頃は手口が巧妙化していたり単に好意を寄せられている場合も紛れたりするからセクハラかどうかの見極めが難しい。

広告代理店のCFOからこのところしつこく食事に誘われている。役職だけ見れば煌びやかだが、世界的広告代理店グループに所属しているというだけで社員数が100人程度の日本支社の財務担当に過ぎない。そう聞けば、肩書きの割に若いことも、

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私の好きな人 7

私の好きな人 7

昨夜、ホソクさんはチームメンバーに朝イチミーティングの招集をかけた。急なミーティングが開かれる目的は大体悪い話のことが多い。だから朝、会議室へ向かう私たちの足取りは重かった。

全面ガラスで日当たりのいい会議室には既にホソクさんとソクジンがいた。ソクジンに何かあったのだろうか。私は一気に不安になる。

「よし、全員揃ったな…おい、みんな!ほら!なんか表情暗いぞ!」

ホソクさんが冗談っぽく声を上げ

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私の好きな人 8

私の好きな人 8

東京の街がクリスマスムードで華やぐ頃、法人営業部は担当クライアントへの挨拶回りで忙しい。今日は朝からソクジンから引き継ぐ企業を二人で回り、最後はホソクさんと合流して例のグローバル契約が破棄になったJ社へ訪問するという外回りデーだ。

高身長で美男子のソクジンとの同行だ。私はいつもより気合を入れて化粧をし、髪も美しく整え、7cmヒールを履いた。平日のオフィス街をソクジンと並んで颯爽と歩けば確実に気分

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