"早く絶版になってほしい#駄言辞典"

 現役時代に大記録を打ち立てたコメンテーターが、ある女子競技に対して侮蔑的な発言をした。例によって、後日、本意ではなかったとの釈明をすることになった。言葉足らずとのことだが、真反対のことを言っているのに、どのように言葉を補えば、その本意にもっていけるのかということが気になった。

 これほどひどいのは極端な例かもしれないが、前からずっと違和感を覚えていたことがある。

 なぜ女子選手だけやたら「ママさんアスリート」ということを強調するのか?もちろん男子選手でも、報道の中で、「最近子どもが生まれて、ますます張り切って...」といった付加情報が伝えられることはある。しかし「パパさんアスリート」なんていう言い方はまず目にしない。

 子どもらが地元の学校に通っていた頃、PTAの役員を引き受けた。単に自由業なので時間の都合が付けやすいというのが唯一の理由だった。結構こまめに行事や会合には参加できたと思う。そのとき改めて気づいたのだが、定例の会議でも、総会でも、学校行事でも、周りを見渡せば母親ばかり。どうもそのことを誰も不思議に思っている様子がないのが、こちらにとっては "不思議" だった。

 ある時、一人の母親から、「自分の夫がPTAの役員をやったり、学校行事に顔を出すなんて考えられない」と面と向かって言われたことがある。こちらはどう反応すればよいのか困った。オレはそんな "考えられない" ようなことをしているのか?

 ジェンダーバイアスなんていう用語や概念が一般化されていなかった昭和の時代に生まれ、その時代の空気を吸って育ってきた人間だから、自分はそういうものとは無縁だと断言する自信はない。しかし、言葉を扱う商売をしているせいか、言葉選びに関して、時として "何か引っかかる" 状況には敏感になっているような気がする。

 最近、表題の本をたまたま手に取って読んだ。一言でいうと "うけた"。腑に落ちることが満載だと思った。自分の中にあった違和感の正体はこれだったのか。

 この感覚は今後とも大事にしていきたいと思う。

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