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電気グルーヴ「KARATEKA」

1992年発売の3枚目のアルバム。所謂初期のコミックソング路線のアルバムとなるが、卓球曰く「新しくやりたい音楽が出来たのにパブリックイメージ通りのものを作らなければならない辛さがあった」と語っており、本作に対してあまり良い印象がなかったようである。とはいえ、電気らしいおふざけ感満載のカッコいいサウンドばかりで電気ファンにとっては十分に満足できるアルバムである。
本作はインディーズアルバムの「662 BPM BY DG」以上に多くの他者アーティスト等からサンプリングしているらしく、歌詞カードの最後のページにはサンプリングリストに国内外、音楽ジャンル問わず様々なアーティストの名が掲載されている(分かりやすいものもあれば原型が留めてないものも恐らくあるので探るのはちょっと難しいかも…)。
前作の制作途中でメンバー加入した砂原が本作からフルで参加になる。

メンバー
石野卓球・・・ボーカル、シンセサイザー、プログラミング
ピエール瀧・・・ボーカル、瀧
良徳砂原・・・シンセサイザー、プログラミング
※歌詞カードにはメンバーの記載がなかったので担当に関しては憶測で書いてます。

収録曲
スネークフィンガー

作詞・作曲 石野卓球
バラエティ番組「浅草橋ヤング洋品店」のオープニングテーマ。初期の電気らしいシンセポップなサウンドに直球な歌詞が特徴。歌詞はダイエットしてもどうせ無駄だよ、とストレートにダイエットする人たちを馬鹿にするような内容。間違ってダイエットしている人の前で聴かせでもしたら後が怖い。個人的に瀧パートの生々しいほどの詳細な歌詞がとても好き。ちなみに番組的によろしくない歌詞だった為、番組使用時は改詞されていたらしい。
この曲はシングルカットされ、本アルバムと同時発売されていた。このアルバムに収録されているのはアルバムヴァージョンとなっているが、主な違いはイントロ前に数秒ほどサウンドが追加されている(おそらく何かのサンプリングだろうか)ぐらいでほぼ変わらない。

Twist Of The World
作詞・作曲 石野卓球
NHKの教育番組「まんが日本史」のオープニング。全体的にノリノリな感じに盛り上がったサウンドが特徴でイントロのファンファーレのようなサウンドが個人的になんかツボ。間奏では彼らの前身であるZin-say!の楽曲「男の中の男」が登場する。
歌詞は上辺で彼女をベタ褒めするけど裏ではボロクソに貶す、要は体だけが目当ての男の叫びを歌っているこれまたとんでもない歌詞w 流石にNHKの教育番組でこのような歌詞を扱うわけにはいかないので「スネークフィンガー」同様教育番組用に改詞されている。

ザ・ケトルマン
作詞 ピエール瀧
作曲 石野卓球、良徳砂原
本アルバム唯一の卓球と砂原による共同作曲でレゲエテイストなサウンドが特徴。
歌詞はハゲ頭の人を励ます内容。フォローしているんだがしていないんだがわからない歌詞が彼ららしい。歳を食うごとに歌詞に共感できる人が多そうだ。「なんか男って感じがするじゃん」が一番最高のフォローな気がする。個人的には「そのまま一生ハゲてりゃいいじゃん」という歌詞が好きw

人事を尽くさず天命を持つ
作詞・作曲 石野卓球
どこか青空の下爽やかに流れるような青春的なシンセサウンドとちょくちょく登場するラッパの音が特徴。ストーン・ローゼズの楽曲「I Am the Resurrection」をサンプリングしている。イントロと最後らへんに登場する「あばばばば~どるげぇ~」(?)という音声はどこかの特撮番組からのサンプリングだろうか?
歌詞は色んなアーティストが歌うような「頑張れば夢は叶う」とか「やればできる」というような励ましソングを、見事真向に全否定するような内容で「今日できることなら明日すればいい」「そのままにしてたらなる様になっちゃうよ」など教育者が間違っても口を滑らせてはいけない様な事ばかり言っている。努力してもダメだった人、人生に疲れちゃった人、色々あって思いつめちゃった人などにはある意味励ましになりそうな曲とも言える。
最後の「愛と欲なら最後に欲が勝つ バイクを盗んじゃいけません」という歌詞がすごく好き(前者はともかく、後者は正論である尾崎豊「」)。
ブラボー小松がギターで参加している。

ドカベン
作詞 ピエール瀧
作曲 ピエール瀧、良徳砂原
瀧と砂原の共同作曲で瀧のメインボーカル曲。どこか不穏な感じのドラマチックでかっこいいサウンドが特徴。
歌詞は水島新司原作の漫画「ドカベン」の事・・・でなく、子供の頃に描いた夢が叶わず挫折した人々を歌っており、聴いているとなんだか切なくてやるせない気持ちになる。特に最初の歌詞に登場する趣味でSMに通う鳴かず飛ばずの自称クリエーターの男の「これでメシが食えればいうことなし痛む背中さすり金を払う」は非常に悲しく感じる。
ドカベン要素は最後のとってつけたような「がんばれドカベン」と球場の応援の音声のみ。

Hi-Score
作詞 ピエール瀧
作曲 石野卓球
ゲームをテーマにした曲でピコピコ音やゲーム音があちこちでかき鳴らされているのが特徴のダンスナンバー。よく聴くとYMOの楽曲「ブリッジ・オーバー・トラブルド・ミュージック」で使用されている音がちょくちょく聴こえてくる。イントロ部分は9-10-Boyの楽曲「Robocop」をサンプリングしている。
歌詞は90年代当時のゲームセンターを題材にしており、ゲームにハマる若者を皮肉ったような内容。「糞の役にも立ちゃしねぇ」が全てを物語っている。歌詞の中に唐突にアナゴさんが登場する(海山商事をサボってゲーセンに来たのだろうか)
個人的にこのアルバムの中で一番好きな曲。
余談だが、最近のゲームセンターの多くがUFOキャッチャーで占めている店が多く、昨今アーケードゲーム自体が流行らなくなってきたとはいい、ちょっと殺風景に感じる今日この頃。そもそも景品が全然取れなくて楽しくないんじゃボケェ!!

デマリンピック
作詞 ピエール瀧
作曲 石野卓球
全体的に音頭調のちょい和風テイストなサウンド。卓球曰く「オルタナティヴ・ロックやインダストリアルからしかサンプリングしていない」らしい。
歌詞はタイトル通りデマを歌っているが、本曲で並べられているデマがじつに生々しい。個人的に「電信柱ってあるでしょう あれってロボットなんだって(中略)だから電気が通ってるんだって」が本当にそれっぽくて好き。
最後の「空き缶潰してぇポッケに入れてぇ~ww海外旅行で捕wまるおやじぃ~↑w」は即興らしい。

KARATEKA
作曲 良徳砂原
アルバム表題曲で本作唯一のインスト曲。バラエティ的なノリの明るい曲調となっている。イメージ的にはその辺の空手家が軽いノリで空手を群集に披露してるような感じ。
合間合間に俳優・声優の熊倉一雄による空手家の語りが入る。

March
作詞・作曲 石野卓球
タイトル通りマーチ調の曲。イントロのグルグル周っているような旋律とどこか悲壮感がにじみ出たようなギターの音がいい味を染み出している。
歌詞は電気グルーヴ解散を想定して書いた曲で、こりゃまた投げやり感溢れるネガティブ思考に富んだ内容となっている。なんだかんだ言っても最後に「切ないね」という本音っぽい言葉をトッピングする事でより切なさを感じさせる。個人的に「どんな人だって百年後は死んじゃうよ 最後も変わらずやるせない気持ち」が一番グッときた。このアルバムの中で(というか電気の曲全体で見て)は一番真面目な曲であろう。
ブラボー小松が4曲目に続いてギターで、GO-BANG'Sの森若香織がコーラスで参加している。
2017年あたりのライブで歌われた事があり、「完璧な仲間と歩きたいよ ずっと続けている事もあるし」と一部ポジティブに改詞されており、アレンジも合わさって感涙ものである。
これからもずっと完璧な仲間と変わらず歩いていってほしいものだ。

Let's Go! 無間地獄
作詞 石野卓球
作曲 良徳砂原
前曲のどんよりとした感じから一転して、瀧の雄たけびから始まる明るい曲調のシンセポップ。XTCの楽曲「Merely a Man」をサンプリングしている。
歌詞の内容はサラリーマンの子供に生まれた子供が小学生まで普通に育つが、中学から何があったのかグレ始めて最終的に幹部(悪の組織?ヤクザ?)になるという不条理な内容。未来なんて本当にどうなるのか分からないねというメッセージが多分込められた曲。
卓球と瀧の掛け合いが地味に好き。

DS Massive
作詞 石野卓球、ピエール瀧
作曲 石野卓球
アルバムの締めは「電気ビリビリ」や「B.B.E」のような激しくスピーディーなハードテクノナンバー。ボーカルすべてに音割れのようなエフェクトがかかっている(勿論ちゃんと聴きとれる)。DSとは「土方スピリッツ」の略で、レコード会社的にアウトワードなのでピー音が入る。イントロと間奏に差し掛かるところのピンポンのラリー音が心地がいい。
歌詞は「B.B.E.」同様シュールかつ不条理な内容が散りばめられている。個人的に好きなのは「盗聴テープもスカトロビデオも500倍速でダビングだ」と「コラ~よいこのみんな元気かな~ 土管で暮らしちゃあいけないよ」。
曲が終わると熊倉一雄が再び登場し、「このアルバムをもう一度お聴きになりたい方は、このコンパクトディスクを捨てちゃって、新たにもう一枚お買い求めください」と聴者に語り掛ける。
いい加減にしろ!

現在所有しているアーティストCD・音源(邦楽編)
https://note.com/odmssyw/n/n4d7ea2d38165

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