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夢か現実か異世界か

僕が担架で運ばれている時にうっすら見た記憶は、離れた場所で暮らす友達が看護師さんたちの後ろからふざけた感じでチラッとこちらを覗いたり隠れたりするふざけた光景でした。なぜかあずき色の着物を着ていたのを覚えています。

「なんか笑ってるねえ」「何かそこにいるの?」と看護師さんが言いました。

「うん。友達が来てるんだあ」と答えました。

これから話すのはいつ見たものかはわかりません。

意識が少しだけ戻る前の期間ずっと見ていたものだったかもしれません。

その友達が、何やら話しかけてきます。

『本当に大人しくしてて、何とかするから、みんな幸せな世界に行けるんだって、清晴は途中でいなくなっちゃったけど、あの後みんなでしっかり立て直したんだって!』

「そうなの?そっかあ、みんな元気でやってるんだあ」

『そもそも俺らも何がこんなに悪いことばっか起きるんだって真剣にみんなで考えたんだよ!清晴のお母さんも姉ちゃんも……それでわかったんだ。立て直しが必要だったんだ』

その友達の話によると、自分の家系の故郷に時代を逆行していける方法があるという。そしてその友達はもう【立て直し】というのをやってのけたらしい。僕の家族もだ。

『もっと先の未来にはもっとすごく楽しいものが待ってるんだ!』

「本当に?」

『ああそうだ。だからなんとか生きてくれ!』

「でも俺、お金ない。手術とかお金かかるのに……」

『いくらかかっても俺が払うから……いやいくらでもってのは……まあとにかくこっちの世界では相当金持ちな方なんだよ、俺は。知らないだろうけど』

「ねえ、今ちょっとだけ連れてってよ」

『んー……じゃあ一つ約束して。向こうで余計なことマジでしないで。変なことしないで大人しくしてて、マジで』

「しないよ〜、もーわかったって〜」

そして目を開けると、古い昔の京都のようなお屋敷が立ち並び、行き交う人は着物を着ているところだった。

でも町の街灯や電飾がやけに未来っぽいところだった。

友達はあずき色の着物を身にまとい横に立って僕と目を合わせた。

腰に小刀をさしていて、何かの漫画の重要キャラみたいな出で立ちだった。

普通の友達がその世界では相当な権力者と見ただけでわかった。

花魁の格好の女性が友達に挨拶して、またある女性は遠くから〇〇さんだ!とすごく信頼のあるこの町の大役人のようだった。

お寺のような建物の入り口に入ると人が少なくなった。友達は僕の腕を引っ張り耳打ちをする。

『いい?どこから来たのかは答えちゃダメだよ。大変なことになる。ただ俺の友達だって言っておけばいいから。あとは余計なことはしない、言わない。わかった? 本当に守ってね。 さすがに助けられなくなる』

そういうとついてきてと合図して建物の奥に行く。

入り組んだ廊下を進んでいくと、向こうからこちらを見てニヤッと笑った女性がいた。

友達の方を横目で見ると『あーしまった』という顔をしていた。

その女性は近づきながら『あら、〇〇さーん』と呼びかけたがその声はすごくわざとらしい。

すぐに僕の方を見て『こちらは?お客さん?』と聞いてきているがそれは僕がここの人ではないのを見透かしているようだった。

『友達だよ』とだけ言う友達は半ばもう観念したような言い方で

『あの時代の?』と女性が言った瞬間に僕は何がどうやばくなるのかもわかってないが【あの時代の友達】と答えたらきっと、友達が一番避けてた事態にはなってしまうのだろうとわかった。

友達が気まずそうに『あー、えー、まあ、う、うーん……』と濁すと女性がすごいテンションで僕に質問してきた。

『え!?じゃあ〇〇さんと一緒のところから!?じゃあ私見てみてください!お友達さん!』と僕の目を見てくる。

目を合わせると、その人がこれからどうすると一番いい人生を送れるのかがなぜかわかる。向いていることがわかるし、将来何があるのかが全部わかった。

「あ……えっとね……」と言いそうになったところで友達が『まあまあまあ!』とその女性と僕を離した。

何を話したのかわからないが、何か納得した様子で女性はどこかに消えていった。

僕は友達に怒られた『ここで余計なことはしない言わないって言ったじゃ〜ん……も〜……本当困るって〜……あれさ……うちらがもともといたところあったじゃん?あの世界からこっちに来ると見える(千里眼?)ようになるんだけど、それが半端でもしも間違いだった場合に大変なことになるんだよ。言うなら言う、言わないなら最初から言わない。そうしないと相手が……だからさ?』

何かを言いかけたのが気になったが、どうやら自分は未熟でまだ迷いがあるから最初から「見て」と言われたら見ない方がいいらしい。

その答えに違うかなあとかやっぱこうかなあってここで言っちゃうととんでもないことになるらしい。

そして大広間についた。

時代劇やなんかで見るその大広間よりももっと豪華で未来的だった。

自分と友達だけでそこで話をした。

友達はどうやってここに辿りついたかを話してくれた。

『あのさ、覚えてるかなあ。高校の時に付き合ってた〇〇ちゃん。あの子とさ、一緒になるなんて話していながらも全然何もかもうまくいかなくて、仕事も思っていたのと違うし、ずっとお金もなく、家族も仲が悪い。しまいには〇〇ちゃんもいなくなって、何でこんな何もかもうまくいかないんだろうと俺も悩んだんだよ。それで清晴のお姉ちゃんが元々の家系の出処を立て直したらうまくいくって教えてくれたんだ。だから生まれ故郷の〇〇〇〇のお墓と実家を【掃除】した』

「掃除……」

『気づくとね、元の世界で言うところの江戸時代のようだけど全然知ってるのとは違う大昔にいた。それからどこかで失敗するたびに、何度も飛んだ(時間を)しくじらないように慎重に慎重に、どこかで挫いては飛ぶってのを繰り返した。それで今いるここ。自分で言うのもなんだけどここの通貨なら今腐るほど持っている。一から築くのは超大変だったけど、ここら辺で一番の金持ちは俺だね』

「みんなもそっちにいるの?お母さんもお姉ちゃんも?」

『もうみんな一回は会ったよ。今は清晴のお母さんと姉ちゃんはもっと先の時代にいる。自分らはもう仕組みを変えたから自由に行き来できるんだけど』

「連れてってよ、ここからもっと先」

『もっと先って?』

「行ける所まで一回見せてよ、すぐ帰るから」

『多分、行かないほうがいい』

「何で」

『清晴ほんと昔からこうだからなあ。例えばどの時間軸にも移動できるとしてさ。この時代嫌だなあって思うところにこんなに滞在しないでしょ?』

「そういうこと?」

『そういうこと。じゃあ何でこの先に清晴のお母さんとお姉ちゃんたちがいると思う?』

「なんかやることがある……とか……?」

『うん、【立て直し】をしながら進んでる』

そんな話をしていると、若い男の人がその大広間の襖を開けた。

何かを手伝って欲しいと頼んできたその若い男に、友達はすぐ行くと言って僕も一緒に下に降りていった。


そこもすごく広い場所で、着物を纏った人たちが丸まった白い大きな布を数人で囲んでる

友達がどうした?とその人たちに聞くとその大きな白い布を広げたいんだけどそれができないらしい。

何でそんなことできないの?バサってやるだけじゃないの?と思っていると友達がすぐにバサッとそれを広げたら「おお。さすが○○さんだ」とみんな感心している。

『この世界は昔当たり前に人間ができていたことができないんだ』と教えてくれたけど、全然意味がわからない。

何人かがまた僕に向かって○○さんの友達なの?じゃあ……と言って、【見て】と言ってきたけど笑いながら流した。

けど、一人だけぽっちゃりな女の人が妙に気になった。

私はどう?と聞いてきて、僕が今何の仕事をしているのか聞いたら【夢見】(ゆめみ)と言った。

夢の中に迷い込んだ人の話を聞いて、それが何であるか調べたりする、夢占いのようなものということはわかった。

そして僕は、自分のいた世界で言うところの精神科のようなものに近いと思った。

バッと頭に入ってきたことをつい口に出して言ってしまった。

「君はやめたほうがいい。他に興味のあることを勉強して、その先は心配することはないんだけど」

そういうとそれをメモしていた手を止めて「何で?」と聞いてきた。

僕は見えたものそのまま「そのうち夢に喰われるから」と答えた。

その子がおかしくなるのが見えたから。

近くで友達が馬鹿でかいため息をついて我に帰る(あ!しまった!)

『だからー……も〜……』と言いながらその子に『いや、ね?ちょっとこの子は普通じゃないから真に受けないでね!?』と必死になだめるんだけど

もうその子は遠い目をして心ここに在らずというのが見てわかる感じになっていた。確実に様子がおかしいのである。一言も発さなくなったその子は、パニックになりそうな感じだった。

『清晴の言った今の、間違いだよ。ただの雑念みたいなのが見せた千里眼だ。その証拠が今のこの子の状態。違うこと言うとこうなる。だから連れて来たくなかったんだよ!』

そういうと友達はその子を処置室?に運ぶように周りに指示して僕を外に連れ出した。

すごく町は騒がしくなってチラチラ僕の方を見ている通行人たち。

こっちこっちとずんずんぐねぐね道を行くと、しだれ柳の下についた。

普通に元の世界で見たことあるお地蔵様が近くにあった。その友達の実家の近くの駅にあったお地蔵様だとすぐにわかった。

『後はなんとかしておく。次飛ぶところで〇〇ってやつがいる(その友達の一文字違いの名前)でもそっちでもちゃんとそいつの言うこと聞いてね。マジで』

そういうと『大丈夫だから』と笑顔で僕の顔に手のひらを被せてきた。

一瞬で睡魔が襲う感覚はあのシロサギを見た時の気持ち悪さにすごく似ていた。



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