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白レバーのたたき

雰囲気の良さそうな居酒屋を見つけて、
仕事終わりにふらっと入る。

串がメインの居酒屋のようだが、
一品料理のメニューも充実していた。

「何食べたい?」

そう聞かれたので、真っ先に目についた
私の大好物を答えた。
「白レバーのたたき」

「おっけー!」

串は2本からの注文。
これにはふたりの合意が必要である。

「皮?」
「いいね。」

「つくね?」
「間違いないね。」

「ぼんじり」
「外せないよね。」

「あ、ところで、何か苦手なものある?」
7年も友だちだけど、改めて気になったので、
おもむろに聞いてみる。


「うーん、レバーが苦手。」

「そうなんだ!初めて聞いたかも〜」
と、さりげない相槌をし、
(それじゃあ、白レバーのたたきはなしにしよう)
と、心の中で呟く。
 

定員さんが注文を聞きにくる。
「きゅうりと〜、皮、つくね、ぼんじり…
 とりあえず以上でお願いします!」
私はメニューを閉じて元の場所に戻す。

すると、スッと横から、カウンターの隣の彼が
「あ、白レバーのたたき1つ!」
と言った。


へっ…?
何?今、思いやって注文してくれた…?
えっ…何この優しい気持ち…。
す…好き…。

ってなことがあってさ〜、と友だちに話したら、
「えっ、そんな男沢山いるよー。」
「どんだけチョロいの?」
と言われてしまったけど、
私もわかってる。

きっと、前の彼は全ての注文が終わって、
定員さんが去ってから、
「白レバーのたたき食べたかったんじゃないの?」
「頼まなくてよかったの?」
と、聞いてくるタイプだろう。

前の前の彼は、注文が終わりかける頃に、
「白レバーのたたきも頼む?」
と、一度聞いてくるタイプ。

どちらも、そう言われたら、
「いいよ、だって一緒に食べられないから。」
という回答しか用意されてない。

「私が食べたかったから。」
という理由で、なんの迷いもなく、
白レバーのたたきを頼めるこの男は、
私にとって唯一無二なのだと感じた。
この人とずっと居たら私はきっと
幸せになれるんだろうなぁ。と思う。

居てみないとわからんから、
知らんけど。

あ、白レバーのたたきは、美味しかったです。

おしまい。

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