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第二のサッカー人生、開幕【FOCUS ON:宮崎泰右】

明治安田生命J1リーグから数えて「J8」の東京都社会人サッカーリーグ2部に所属しているTOKYO CITY F.C.。渋谷区をホームタウンに活動するクラブには、いったいどんな選手が在籍し、どんな思いを胸に秘めてプレーしているのだろうか。選手1人ひとりのパーソナリティに焦点を当てる連載企画「FOCUS ON」がスタート。第14回は大宮アルディージャや湘南ベルマーレ、栃木SC、ヴァンラーレ八戸などJリーグで活躍した経験を持つ今季新加入のFW、背番号25の宮崎泰右に迫る。

宮崎泰右のプロフィール詳細

もっと大人になれていたら…

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 実は僕がサッカーを始めたきっかけは、「野球を始めるための体力づくり」でした。

 父は僕に野球をやってもらいたかったらしく、その準備のためにボールを蹴り始めたらサッカーの方が楽しくて。小学4年生の頃に野球もやったけど、結局つまらなくて半年で辞めてしまいました。

 幼稚園の頃に始めたサッカーはずっと続いて、中学に上がると同時に地元の大宮アルディージャのジュニアユースに入って、トップチームまで昇格することができました。武器は今も昔もずっとドリブルで、小学生の頃は監督に「もっと周りを使え!」と怒られたけど、今になって考えればドリブルがあったからこそプロにもなれたんだと思います。

 でも、振り返ってみると、自分がもっと「大人」なサッカー選手になれていたら、また違ったサッカー人生を歩めていたのかなとも感じています。高校3年生でプロの公式戦に出場したものの、いざトップチームに昇格して本格的にプロサッカー選手としての生活が始まったら、試合に出られない日々が続いて「ふざけんじゃねえ!」という気持ちもあって、尖ってしまっていた自分がいました。

 自分が幼かったことで周囲に反発してしまった時期もあったので、もっと冷静に物事を考えられていたら…と考えることもあります。試合に出られなかったことで腐っていたわけではないけど、結果的に試合に出たいがためにいろいろなクラブを渡り歩くことになったので、落ち着いて1つの場所にいた方がよかったかもしれない、もっと大人になれていたらより良いクラブに巡り会えていたかもしれないとも思います。

Jリーガーでなくなっても

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 昨季限りでヴァンラーレ八戸を退団することになり、もうサッカーだけで生計を立てるのは辞めようと考えてJリーガーとしてのキャリアを終えました。もったいないサッカー人生だったと思うところもあるけど、プロサッカー選手としての日々を終えてからの人生の方が長いし、違う道を模索するのもいいかもしれないと考えたんです。

 もし自分に一瞬でも何千万円と稼ぐような時期があったら、もう少しJリーガーとしての将来にしがみついていたかもしれません。でも、ずっと同じような状況が続いて、そうはならなかった。だからJリーグを離れることは結構すんなり決められました。とはいえ、何だかんだで大好きなサッカーをすっぱり辞めることはできませんでしたね。

 そんな時にTOKYO CITY F.C.と出会いました。一樹さん(山内一樹CEO)や深澤監督(深澤佑介GM兼監督)から話を聞いて、クラブが掲げるビジョンは純粋にすごく面白く、多様な考えを持った人間が集まっていて、将来の自分にプラスになる魅力的なことしかないと感じました。

 加入にあたって家族にも相談しました。やっぱり「まだプロサッカー選手としてプレーを続けて欲しい」という妻や子どもたちの思いも理解しています。でも、好きなことだけをやっていればいい状況ではない現実も考えて、話し合って、最終的にCITYへの加入を決断しました。

 Jリーグからカテゴリを下げることには、全く悲観的になっていません。まずは純粋にプレーすることを楽しみたい。今はそういう気持ちで日々サッカーに取り組めています。

応援を力に変えて

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 新型コロナウイルスの流行が収まったら、ピッチ外での活動にも積極的に参加していきたいと思います。僕がCITY加入にあたって魅力的に感じたことの1つでもあるので、いろいろなことを感じながら活動していけることを楽しみにしています。

 Jリーガー時代、特に若い頃はホームタウン活動に対して何も考えずに参加してしまっていた部分もありました。それでも26歳くらいになって、プロサッカー選手として潮時かな…と感じ始めていた頃に、ようやくホームタウン活動を通して自分たちがどれだけ多くの方々に支えられているかを実感できるようになってきました。

 J1だとファン・サポーターの数は多くても、1人ひとりの声が僕たち選手にダイレクトに届くかというとそうでない部分があると思います。でも、カテゴリがJ2、J3と下がっていくとファン・サポーターの皆さん1人ひとりに耳を傾けてコミュニケーションをとる機会が増えて、応援の声1つひとつが心に響き、なおさらそれが自分の力になることを実感しました。

 CITYにもファン・サポーター、パートナーの皆さんなど応援してくださる方々がたくさんいるので、クラブがやろうとしていることや、今後自分がやっていきたいことも、それぞれがいい方向に進めるように有意義なコミュニケーションをとっていければと思っています。

 数年前からアパレルブランドやサロン経営を始めていて、そういった事業面でも自分が知っていることをCITYのために還元できればとも考えています。周りから知識を取り入れたり、一緒になって新しいことに取り組んだり、お互いにいい関係でいろいろな可能性を探っていければいいですね。

 選手としては加入した当初、1人ひとりの選手に対してどこまで踏み込んでいいのか、どのくらいの強さで要求していいのか、Jリーグとは全く違う環境での振る舞い方を模索しながらやっていた部分はありました。でも、数ヶ月一緒に活動してきて、チームメイトのみんなの感覚もつかめてきました。今はもう何の違和感もなく馴染めていると思います。

 チームとして、もちろん東京都社会人サッカーリーグ1部昇格は必ず成し遂げなければいけない目標です。そのために若い選手たちに自分の経験や思っていることは積極的に伝えていきたいし、逆に周りからも吸収しながら、新しいチャレンジを楽しんで、みんなと笑顔でシーズンを終えられたら最高です。

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