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Vancouverの書店レポvol.3/元カウンセラーからヒーラーまで。店員が強者揃いのスピリチュアル系書店

レジ

レストランの一角で、ダンボール5箱分の本からスタート

「うちはユニークな書店なので、他のお店にはない本を目当てにお客さんが訪れます。すると『あれ、また会いましたね』って、お客さん同士に出会いが生まれることがある。同じ本棚の前で何度か会うのはお互い趣味嗜好が一緒なわけだから、当然会話も弾みますよね。そんなふうにして付き合うようになったカップルがいて、ある日、その男性が出会いのきっかけとなった本棚の前で彼女にサプライズでプロポーズしたんです。もちろん答えはYES。お店全体でふたりの友人たちとお祝いしましたよ、『おめでとう!!』って」

 バンクーバーでユニークな体験をしたかったら、『BANEYEN BOOKS AND SOUND』に行け。ヒッピーや旅人たちの間で、一時期共有されていたフレーズだ。もちろん地元の人々、さらにライアンレイノルズ(バンクーバー出身の俳優)やエイミーアダムス(アメリカ出身の女優)、その他多くのセレブリティたちからも愛される。年代、性別、ジャンル、国境、さまざまなボーダーを超えて、多くの人たちがこの店の独特の”色”の虜になり、今日も足を運んでいる。
「ヒッピー全盛期の1970年。この書店はベジタリアンレストランの一角を借りて、ダンボール5箱分の本からスタートしたんです」

案内人

 書店員のAletheaはそう語った。4th street とDumbar streetの角に立つ『BANYEN BOOKS AND SOUND』は、いまや約25人のスタッフとともに、平日にも関わらずたくさんの人で賑わっていた。

「オーナーのColinも、彼の周りにいた人々も、当時スピリチュアルなカルチャーに魅せられていました。そんなある日、Colinが経営を手伝っていたレストランのオーナーから『本を選んで欲しい』と頼まれたのが『BANYEN~』の始まりなんです」

スティーブ・ジョブズも愛した一冊の本が、この書店の未来を決めた

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 例えば『BE HERE NOW』という、ラム・ダスというアメリカのヨギーニが書いた伝説的な本がある。
「その頃はまだ、今みたいにライフスタイルの手本になるような本をうまく探すことができなかった。だからみんなこの本を読み、そして次を探していました。この本が、店の未来の方向性を決める一助になったのは確かです」

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 スティーブ・ジョブズも愛読したという非常にユニークな体裁の『BE HERE NOW』は、この店でもロングベストセラーとなり、ページをめくると92万8300部と記されていた(2020年9月現在)。以降、『BE HERE NOW』のテイストの延長線上で”自然に根ざしたスピリチュアリティ”というコンセプトを掲げ、『BANEYEN BOOKS AND SOUND』は拡大を続ける。そしてレストランの一角にあった49年前と同じように、お客さんに細やかに本を提案・発信し続ける姿勢は今も変わらない、いや、むしろ加速している。
「オーナーのColinは、実はライターでもあるんです。HPの全てのブックレビューは彼が書いているし、カタログ『BRANCHES OF LIGHT』を季節ごとに作っていますが、それもほぼすべて彼が書いています」

④カタログ

カタログからYoutubeまで。パワフルなオーナーのもと抜群の発信力を誇る

 驚いた。webのブックレビューの数を見て、スタッフの人たちはよく本を読んで発信してるなあ、こんな情報量の多い冊子をオリジナルで作っているなんてすごいなあ、と呑気に思っていたが、まさかそのテキストをほぼ一人が担当していたとは。そういえば今日Colinは、秋のカタログの締め切りが近づいているため来られない、と言っていた。
「たくさんのお客さんがそれを楽しみにしてくれています。他にも、Buddist centerやYoga centerと一緒にイベントをやったり、作家にインタビューをしたり、それらをYoutubeチャンネルでアップしたり。いろいろな方法で発信してますね。新しいお客さんも増えているし、なんというか、彼らの本を探す旅に参加できること、地球や自然、神聖なものとつながるための手助けができることは、私たちにとって最高の経験なんです。

この店の基盤となっているカテゴリー、例えば自然や仏教、ヨガに関する本のラインナップは、昔から変わりませんし変わることもありませんが、時代の変化に応じてジャンルは広げていく必要があると思っています。最近だと”racism(人種差別)”のカテゴリーを作りました」

 「実際今はどんなカテゴリーが人気ですか?」と訊くと、Natureを筆頭にChertic spirits、Sharmanism, Spiritual ceremony などなど、他の書店では決して聞くことのない言葉が返ってきた。

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「そもそもうちの店員たちは、強者揃いなんです。元ヨガティーチャー、カウンセラー、開業医、サウンドヒーラー、禅ブディストなど、幅広い経歴を持っている。それは大きな強みのひとつですね」

 本だけでなく、スピリチュアルに関連したさまざまなグッズも、広いスペースに所狭しと並んでいる。
店名にも”Sound”が入っているだけあって、ヒーリングのCDは充実しているし、「タロットカード、Singing bowl、ヨガグッズ、お香は、このお店のもうひとつのベストセラーですね」。

⑥グッズ

 お香、紙の本の匂い、そしてそこに集まる人の熱気も混じり合って、独特の心地いい香り漂う空間は、まるで気軽に立ち寄れる隠れ家的パワースポットのようだ。

「そうですね、確かに。私もね、オンラインではなくて実際の書店が好きなんです。パンデミックで世界は一時的に状況が変わってしまっているけれど、みんな私たちみたいなローカルビジネスの大切さに気づいて、サポートしたいと思ってくれている。そして、他の人と繋がりたいと思っている。もちろんオンラインでも誰かとつながったり、本を買ったりすることはできるけど、”実際の体験”が必要だと感じているはずです」

 インタビューがひと通り終わった後、ふと思い出したことを聞いてみた。その答えが、このお店の雰囲気、魅力を一言で表しているような気がした。
「そういえばHPのお店の紹介文の中に”Banyen Books and Sound is now earthnested”という一文があったけど、”earthnested”はどういう意味ですか?」
「ああ、それはオーナーのColinの造語です。地球に抱きしめられて温かな状態、といったところかな」

②外観

Recommended Books for BOOKS&PRINTS

おすすめ本5

"Your Guide to Forest Bathing" by Amos Clifford
https://www.banyen.com/products/your-guide-forest-bathing

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."To Bless the Space between us" by John O'Donohue
https://www.banyen.com/products/bless-space-between-us

おすすめ本4

"To Speak for the Trees" by Diana Beresford-Kroeger
https://www.banyen.com/products/speak-trees

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"Braiding Sweetgrass" by Robin Kimmerer
https://www.banyen.com/products/braiding-sweetgrass-0



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