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「戦闘妖精・雪風」神林長平

不気味の谷、という言葉があるそうで。
意味はというと、ロボットを人間に近づけていく過程で、ロボットらしさと人間らしさが微妙なところに来るとすごい気持ちの悪い感じになると。
ロボットっぽかったらロボットと認識するし、完全な人間だったら違和感はないが、ロボットと認識しづらいけど人間としても認識できないから不気味に感じるのだという。

その言葉を先日「われはロボット」の記事を書いた時に思い出した。

外見だけでなく、内面も同じことは言えないのかと。
AIも、コンピュータとしてロジックのみの思考と感情から生じる人間的な思考が微妙な狭間に来ると気持ち悪いと感じるのではと。
気持ち悪いというか、恐怖かな?

ロボットやAIが現実的なものになりつつあるので想像してしまうが、要は人間とは異なる知的な存在に対する恐怖なのだろう。

例えば異星人。
「ソラリスの陽のもとに」という海外のSF小説がある。
これは惑星ソラリスの探索に来たメンバーが、ソラリスの海自体が知的生命体で、それから干渉を受けるというストーリーだ。
これもその生命体が何を考えているかわからない、未知の恐怖がある。

本作はダブルだ。
AIに対するものと異星人に対するもの、未知の恐怖のダブル。

ストーリーとしては、こんな感じ

ある時、異空間ゲートから地球に進行してきた異星生命体。
地球側はなんとか彼らを撃退し、さらにゲートを通った先に前線基地を設置、次からの攻勢に備える為に軍を配備する。
その軍にて超大型の戦闘機が配置されるのだが、この戦闘機はAIを搭載しており、パイロットをサポートしてすごい性能を出す。
ただ、ドラえもんみたいに寄り添うのでは無く、基本コミュニケーションは取らない、何考えているかはわからない。
異星人は異星人でいったい何考えているかわからない。

何考えているかわからない人工知能に乗りながら、目的が理解できない生命体とコンタクトをとるという、なんとも心細い任務だ。
そして衝撃なのが、ログを見てみるとAIが異星体と交信しているふしがある。
怖い。人間が置いてきぼりになる感覚。怖い。

昔親父が宇宙人だとかUFOとかにはまっていた小学生の俺の、「お父さん、宇宙人ってどんな姿かな?」という質問に対して「宇宙人は想像を絶するよ」と答えたのを思い出した。
「想像を絶するってこんなの?」とイラストを書いたりしたのだが、「想像を絶するんだから、お前が想像できないよ。いつか会った時に初めて感じる概念だよ」と言っていた。
あの頃は「???」だったが、今ならなんかわかる。

異星体、我々の尺度外の生命体なはずだ。
そしていつか自分たちの手を離れるかもしれない人工知能。

未来は楽しいことだけじゃないのかもしれない。

続編も出ており、今シリーズ3作かな。

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