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不登校の息子と家族を救った、医師の話  〜 その2. 不毛な治療の果て 〜


いじめを告白して部活をやめた後、息子の体調はどんどん悪化していった。
突然の嘔吐を機に、彼を救うため、私は本格的な病気の究明と治療を考えるようになった。精神的なものかもしれないが、脳の病気かもしれない。本来なら若く健康なはずの子どもに、可能な限りの検査を受けさせた。
とにかく、不安要素をできるだけ取り除くために。

幸い、どこにも異常はなかった。

じゃあ、何をどうしたらいいのか。それが次の悩みだった。
私は何度も息子に言った。
学校なんて行かなくていいんだよ、と。

いま思うと、そんなに簡単なことではないのだとわかる。
子どもにとって、世界とは『家庭』と『学校』だから。(まだ10年も経っていないのに、いまは『ネット』っていうのがプラスされて、余計にややこしくなったけど。)
私なんかより、子どもの方がずっと真面目なんだ。そういう意味では、残念ながら、学校教育(義務教育)は成功しているのだろう。それがよいことかどうかは別として。


医師の診断は免罪符である


学校からは、休みのたびに医師の診断を求められる。
それは、高校まで続いた。

そもそも不登校といわれるものに、なぜ医師の診断が必要なのか。
学校の評価基準に出席日数というものがあるから、だろう。
医師の診断書によって、学校はその責任を医師に引き渡すことができる。
欠席の理由が病気であれば、考慮される。しかし、理由なく欠席する生徒は不良なのだ。

‥‥古い。 ‥‥古すぎる。

でも、結局そういうことだ。それ以外の理由があったら教えて欲しい。
だとしても、不登校の只中にいる親子にとって、そんなことは何の助けにもならない。

そして、医師は簡単に『自律神経失調症』とか『起立性調節障害』『不安神経症』など、免罪符ともいえる診断をくれる。その理由の一つは、これらがよくわかっていない病だからだ。
故にこの免罪符は、ありがたい反面、確固とした治療法もない。

不幸なことに、わからないなりにも薬は処方される。安定剤だったり、安定剤だったり、安定剤だったり。
私は、自分の病気の経験上、それらを無理に飲むことは勧めなかった。

不登校の実態


学校に行けなくなった子どもには、おそらくとんでもない葛藤とストレスが襲いかかっているに違いない。

親ですら、心をすり減らし、家庭全体に不穏な空気が充満していく。
夫婦は子への対応や考え方の違いから、言い争うようになり、弟は「なんでお兄ちゃんは学校に行かなくていいの? ゲームばっかりしてるのに」と不満をもらす。

私が一番耐えられなかったのは、夫から「あいつ(息子)に、〇〇と言え。」「〇〇させろ」といわれることだった。
そう思うなら自分で言え! そんなことができたら世話ないわ。
そして、鬱憤がたまりに溜まると、二人の喧嘩に発展する。怒鳴りあって、押し付けあって、でもこれって、何かの解決に繋がっているのだろうか。

なんで彼を理解しようとしないの? 理解ってなんだ
私、こんなに頑張っているのに。 で、いつどうなるんだ?

最終的には、自分を追い詰めて、結果として怒りが息子へと向かっていく。お前だって、もう少しなんとかしろよ!って。

とんでもない親だ。
間違いなく病んでいた。みんな。

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