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WKWKWKW…… / ウォン・カーウァイ・カーウァイ・カーウァイ……

王家衛、ウォン・カーウァイ、WKW……。いろいろな表記がなされるけれど、全て同じ人物を表している。いかつい黒眼鏡がトレードマークの香港の映画監督だ。『花様年華』『ブエノスアイレス』『天使の涙』『恋する惑星』『2046』『欲望の翼』……と彼の代表作は、それぞれがひとり立ちをして走り出してしまうほど名の通った作品が多いけれど、彼の作品群は共通して物語が優れて面白いわけではないけれど、共通して画にエレガントさが漂い、映画ファンを魅了している。ここまで書いたら、次に僕が何を言いたいのか、流石にもうお分かりかもしれないけれど、WKWのようにアルファベットの3文字で表される映画作家といえば、ジャン=リュック・ゴダールを思い出す。WKWにしろ、JLGにしろ、黒眼鏡をかけることはある種の素質なのかもしれない。

2022年の夏も後半に差し掛かった頃、WKW作品群のうちの5本が4Kレストア版として蘇り、というか生まれ変わり、東京で上映が始まり、現在も絶賛巡回中である。僕が住む町・京都では京都シネマにて上映されていたが、僕は結局行かずじまいだった。この度上映される5本は全て観たことがあるからだ。すでに知っている映画を観るよりは、まだ知らない映画を観ることに時間とお金をかけたい僕は、京都シネマへWKWを観に行かなかった。

けれど、僕はシネマ尾道でWKWを観た。『花様年華』と『ブエノスアイレス』の2本を観た。2年ぶりに観た。京都のWKWに行かない僕が、なぜ広島の尾道までWKWを観にいくのかというのは理解し難いかもしれないけれど、映画監督の須藤蓮が上映後にトークをするイベントがあったからであり、前日は広島市内で大切な用事があったからだ。そういうわけで、僕はシネマ尾道でWKWを観た。

そもそも、僕とWKWの出会いは今から2年前、まだ僕が映画を観るようになってからまもない頃だった。POPEYEの映画特集号では必ず取り上げられる『ブエノスアイレス』をどうしても観たい僕は、アップリンク京都で特別上映されることを知って興奮した。そして調べていく中で『ブエノスアイレス』の監督はWKWであることを知り、WKWの『花様年華』が配信されていることを知った。それから時が経ち、「シネマメンバーズ」という配信サイトでWKW特集が組まれ、WKW作品群の多くを観た。例によってWKW映画の映像は鮮烈だけれど、物語はこれっぽちくらいしか面白くないから、WKW的な映像の印象しか残っていない。これが僕とWKWの歴史だ。

『花様年華』は互いに伴侶のいるトニー・レオンとマギー・チャンのふたりの物語である。お互いに伴侶がいるのだけれど、その伴侶の姿を映さないという高等テクニックによって、トニー・レオンとマギー・チャンの浮気を崇高でエレガントな恋愛であるように思わせてしまう。『ブエノスアイレス』は2人の香港人のゲイがアルゼンチンにあるイグアスの滝を見に行こうとする物語。お互いがお互いを必要としていて、でもお互いに身勝手だから、救いようもないふたりの行動を見ているこちらはイライラしてくる胸糞物語だ。だけど、そうなのだけれど、やはり画面から目をそらすことができない。WKWは不思議なちからを持っているのかもしれない。

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