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やさしい時間をつくろう 〜茶の湯入門〜

少しだけ緊張しながら「おはようございます」と挨拶をして扉を開けると、お香の匂いとお釜の湯気が心地いい。
2週に一度、土曜午前のお茶のお稽古で、私の生活リズムは整います。


茶道を習いはじめたきっかけ

「どうして茶道教室に通おうと思ったの?」と、聞かれることが多いので、まずは私が茶道を始めた理由をお話します。

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きっかけは、ぼんやりとした願望で。
「家に遊びに来てくれた人に、自分が立てたお抹茶を出せたらいいなあ」と思ったこと。
本当はコーヒーを出せるとかっこいいなと思ったのですが、あんまりコーヒーが得意じゃなくて。

あともう一つ、社会人になって「自分で稼いだお金で習い事をしてみたい」と思ったから。
思い返すと、子供の頃からありがたいことに多く習い事をさせてもらっていて、「何かを習う」ということが私にとっては刺激的で楽しい時間でした。新卒の収入なんてたかが知れていて、生活するので精一杯。だけど、何か少しでも自分の成長に繋がっているという実感が欲しかったのかもしれません。

茶の湯の世界の方々には大変恐縮なのですが、お茶を習い始めてから、「日日是好日」の映画と本を読んで、境遇が同じすぎる!と驚きました。


というのも、日日是好日に出てくる黒木華さん演じる主人公は
文章を書くお仕事をしていていつも締め切りに追われています。
朝から晩まで自宅でも文章を書いて、お仕事とプライベートの境目がない人でした。
「仕事=生活」
それが悪いとは全く思いませんし、そういう働き方が理想であるとすら思います。
ただ、パソコンを打ち続ける日常でどこか強制的にでも情報や仕事から切り離される、別世界のような場が欲しい。
その場所にどれだけ救われることか……
これは私も同じでして、ありがたいことに、自由な働き方が可能な会社にいます。
仕事の開始と終了の時間を自分で決められる。リモートワークOK。服装髪色ネイルも自由。副業OK。
右手にたいまつを持っているのかと錯覚するくらい自由な会社です。

そんな会社での日々のお仕事はもちろん楽しいけれど、
お茶の時間は他のことを一切考えない、空白の時間で。
その時間をつくることが、生活のリズムや心を整えてくれる大切な存在なのです。


お茶の魅力

とはいえ、茶道ってそんなに身近なものではないと思います。
特に私と同世代の人からすると、始めるとしてもあと10年してからかな、とか。
まあまあ、そう言わずに。
このnoteで少しでもお茶の魅力を知っていってもらいたいです。

お茶の魅力の一つ目は、「美しい言葉を知れる」ことだと思います。
いきなり、「美しい言葉」だなんて、興味ないよと思われるかもしれません。

でも、言葉って私たちの世代(20代前半)が一番簡単に身につけられる色気だと思うんです。

「20代で得た知見」などの名言でTwitterで話題になったFさんは、
著書「いつか別れる。でもそれは今日ではない」で教養を学ぶことの目的について以下のように綴っています。

いつか出会うであろう、自分の手に届くか届かないかもわからない、魅力的な人を、ほんの少しの会話で、獰猛に自分の世界に閉じ込めてしまう=色気を手に入れるため

ただ、いつもの場所を一緒に散歩しているだけなのに、街が見違えて見えてくるような人。それはその人の世界解釈のおかげ。そして、その人の教養おかげです。

ここでFさんが言っている教養とはもちろん「言葉」だけではありませんが、美しい言葉を知っている人は、より美しい世界を想像できる人だと思います。

私は日本語、漢字、季節の言葉がなぜだか凄く好きです。
茶の湯では季節を表現する美しい言葉がたくさんあります。

例えば、「松風」。

織田信長・豊臣秀吉の茶頭 をつとめ、「茶の湯天下一の名人」とうたわれた千利休は、湯の沸き加減の音を「蚯音(きゅうおん)」「蟹眼(かいがん)」「連珠(れんじゅ)」「魚眼(ぎょがん)」「松風(しょうふう)」の5段階に分けて表現しました。

中でもお茶に一番よい温度とされている「松風」はシュンシュンという音で、水の沸騰音を松林に風が抜ける音にたとえています。
お茶を沸かす音ってすごく心地いいです。

他にも茶の湯(表千家だけかも)では「吹雪」を「雪吹」と書きます。
雪がふぶいていると、前後見境がつきません。
それにちなんで、この形がフタも実の部分も同じ形状に見えることから雪吹(ふぶき)とつけられたのだそうです。

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天候は「吹雪」ですが、茶器は「雪吹」で「ふぶき」と読ませています。
上下を逆さまにしても同じカタチなのにちなんで、漢字もひっくり返しているのです。洒落てますね。


お茶の魅力の二つ目は、「普段出会わない人たちとの出会い」があること。

私の通っている教室の生徒さんには、元宝塚の方や、博物館の学芸員さん、85歳のおばあちゃんがいます。
茶道をはじめなかったら出会えなかった人たちとの出会いは、人生の選択肢の幅をどんどん広げていってくれます。

お茶の魅力の三つ目は、「とにかく美味しい!」(笑)。

茶道で出てくるお抹茶って苦いイメージもありますよね。
私もはじめる半年ほど前まで、「苦くて飲めなかったらどうしよう」「残してしまったら失礼だよね……」と思っていました。

でも、全然違うんです。
泡がきめ細かくてふわ〜っとしてて、
口に含むととろ〜っとしてて、

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特にお濃茶を初めて飲んだ時は、これまでのお茶の概念が壊されました(笑)。

茶の湯でのお抹茶は、先に出された和菓子を食べ終えてしまってから飲みます。
ここはセットなので、和菓子の美味しさもぜひ語りたいです。

和菓子って本当に美味しいんです、美味しくて美味しくて、目の前に出されると過呼吸になるくらい。

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<春の野 / 萬年堂>

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<干支せんべい / 太市>


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<早春の日 / 両口屋是清>


私は神楽坂にある清水さんというお店でよく購入します。

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季節ごとに違ったデザインで、細かな仕事ですよね。
和菓子の魅力についてはまた別のnoteで。


デザインの関連でいうと、茶道具も素敵なものが沢山あります。

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私が狙っているものリストです。美しい〜

茶道には「拝見」と言って、亭主が用意してくれた茶道具を拝見してどこで誰がつくったものなのかを聞ける時間があります。
そこでデザインの知識を共有されます。
普段はお目にかかれないような質の良いものをじっくり拝見することのできるありがたい時間です。

茶道は総合芸術といって、日本の伝統的文化を多く内包しています。

お茶を頂く茶室や露地などの空間、お茶を点てて頂く作法としてのお点前、もてなしの心を示す季節や状況に合わせた道具や掛け軸、花、香、着物など、幅広い分野と関わりを持っているのです。

なので、とーっても奥が深い。

本物、いい物を見て、もっと目を育てたいです。


そういえば先日は寺田美術で村上躍さんの作品を見てきました。

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私の生活が23歳とは思えないとよく言われるので、誤解を恐れず写真を掲載。
先月、床の間のある和室に引っ越しました。

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この日の出ポットがとにかく好きで、何かあればお湯を沸かしてしまいます。

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ティーライトキャンドルでもアルコールランプでも使えます。

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「字」のポスターや、緑色の容器、お香、風炉など、話せばキリがないのですが、今回は割愛……

これは父方の祖母が描いた掛け軸。

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先生が本当に良い方でたまに着付けも教えてくだって
着物を着てお稽古をすることも。
ちなみに母も着付けと、お茶(裏千家)を習っていたそう。
母は、私が着物を着る機会ができたことをとても喜んで
呉服屋で働いていた祖母のものや、母の友人からもらったものを私にたくさん送ってくれます(汗)。

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どんどん増えてきている……
YouTubeで勉強して、先生に教えていただいて、
ようやく一人でも着られるように。

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(どうして町娘感が出てしまうのだろう・・・?)


お茶の歴史


この記事を書くにあたって「茶道の歴史」と検索してみると

室町時代から発展を続け、受け継がれ、今や世界的にも人気となった日本の茶道。
その魅力は、抹茶の味わいはもちろんのこと、簡素な茶室でわびさびを味わう禅の精神性や、千利休が説いた、「客人を思って全力を尽くすおもてなしの心」にもあるのではないでしょうか。

と。
私のなんとなく遊びに来てくれた人にお抹茶を……という動悸は
実は合っていたのかもしれません(笑)。


「浮世離れした場所」と言われる茶の湯は
戦国時代、日常で起こるあらゆることから一度心を切り離して
落ち着ける時間だったのだろうと想像できます。

家でもお茶を立てるようにしていて、
遊びに来てくれた人にはお茶とその人のイメージにあった季節のお菓子をお出しします。※味は保証できません☆

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頑張り屋さんな皆さんにこそ、自分を大切にする、やさしい時間もとってほしいです。
ぜひ遊びに来てね。

ただただお茶への愛を綴ったオタクブログになっていまいましたが、少しでもお茶の魅力が伝わればうれしいです。


私もいつか茶名をいただけるといいなあ。精進します。

最後にフィルムでも撮ってもらったので。

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着ている羽織は祖母のおさがり。
絣(かすり)というデザインで、模様の輪郭がかすれて見える柄が特徴です。普段使いしやすい素材で、とっても気に入っています。

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茶道への愛と熱量だけで書き上げたこのnote。
果たして最後まで読んでくれた方はいるのでしょうか?(笑)
それでは、また。




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