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月の夜の共犯者 17.


パチンコ店で中原に接近した。
なんとか台の釘読みに成功した俺は、
ヤツよりも先に店のなかに入り
出玉を餌に、ヤツから話を聞くことに成功した。

俺のよみどおりヤツは金に困っていた。
台の読み間違いといい、あの調子じゃいつも、パチンコ 店に意気揚々と来ては金を擦って帰っているのだろう。

嫁は理解があると言っていたが、ヤツの手の甲には紫色に滲んだ部分があった。

おそらく…だが、やつは嫁さんをグーで殴ってるだろう。しかもかなりの力で。
そうじゃなきゃ、あんな痣が手の甲には出来ないはずだ。

嫁さんも大変だな

そう思いながら、
俺は携帯から元刑事の丸さんに電話をした

「丸さん、こちら山本だけど…」

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夜になり、街にネオンが灯った。
色とりどりのネオンが怪しげに光る
それがこの街の特徴だった。

繁華街を通り抜け花見小路を抜けた角にこの店はあった。

祇園四条の高級クラブ「華ノ紀行」。
石造りの階段を10段ほど降りると、木製の重厚な扉が現れる。

店内に入ると落ち着いたオレンジ色の照明が、間接的に灯って、独特の雰囲気を作り出していた。

「あら、山ちゃん今度こそお客様としていらしてくれたん?」

西陣織の一張羅の煌びやかな着物を纏い、
愛らしい京都弁を使ってママは俺を迎えてくれた。

「あぁ、いや…実はここで働く子たちにちょっと話しを聞きたかったんだが、そうだなぁ。ママにも悪いし呑みながら話しでもしようかな」

するとママはコロコロと可愛い笑顔で、

「さすが、山ちゃん。そうこなくっちゃ。
若い子が用意整うまでこちらでお待ちなさって…」

そうして俺は奥にあるVIPルームに通された。

「ママ、この部屋は初めてみるけど、また一段と豪華だね」

あたり一面大理石が敷き詰められ、
そこには如何にも高そうな本革の椅子が並べられていた。

「あら、山ちゃんは特別なお客様ですもの。
ここは、特に大切な御用事で来られた方しか通さないの。」

「けど、ママ…今日は俺そんなにお金を持ってきてないよ?」

「今日くらい良いわよ、だって山ちゃん今回何かを調べにきたんでしょ?きっと他のお客様に聞かれてはいけないと思うわ…。ただね…」

そうしてママは俺の傍に擦り寄り、膝に手を乗せそっと耳打ちしてきた。ふっと甘い香水の香りがあたりを漂う。

「もし、上手くいったら山ちゃんのお気持ちくださいな」

やはりママには、調べていたことがバレてしまっていたか。

俺は苦笑しながら

「ママは本当にやり手だね。分かったよ。
配慮に感謝する」と言った。

その夜何人かから、奏音というホステスについて聞くことが出来た。

奏音はとつぜん家の事情で、この店の門を叩きあっという間にNo.1へと登り詰めていったらしい。

それくらい器量良しで、
そしておそらくフェロモンだろうが、
花の香りで男を惑わせていたと言っていた。

「そういえば…、つい半年前かしら。
この店のふと客の松井様がひどく奏音に肩入れされてなかった?」

「松井様?」

「あー…あんまり大きな声では言えないんだけど、病院とかの理事長やってる偉い人だって聞いたよ?」

「え、そんなすごい人だったの?」

「そりゃあもう、お金なんて吐いて捨てるほどあったんじゃないかしら。あまりにも奏音に肩入れしすぎて、松井様がキャッシュで家も買い与えてしまわれたとか。」

「やだー、わたしもそんなことされたいー」

そこでママが怖い顔でやってきて

「およしなさいっ、お客様のプライベートを口にするなんてみっともないですよ」と若い子たちを嗜めた。

そこで話しは終わってしまったが、

俺は意を決してママに耳打ちをした。

「ママ、今夜少しだけ時間があるかい…?」

ママは俺の意図を読みとったのか、
戸惑いながらも、
うっとりした表情を浮かべながら
「お店が終わってからなら、いいわよ」と言った。

俺は店が終わったママを、近くのそこそこ値のはるホテルに連れ出し、そのまま身体を貪った。そしてその白くて艶かしい身体を満足させながら…

奏音は中原馨だということを突き止めた。

最初は頑なに口を閉ざしていたママも、
よほど飢えていたのか
何度も俺の腕のなかで果てると、
ついに奏音の正体を明かしてくれた。

そうか、奏音は中原馨だったのか…

もしかして、この事件は…
中原馨がキーワードになってるんじゃないのか

ママがスヤスヤとベッドで眠る横で、
俺は煙草をふかしながら

「さて、明日から忙しくなるぞ」とひとりごちた。







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