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映画・法廷遊戯 〜私にとって人生最高の作品

 まず最初に。
私は普段映画館に行くことはあまりない。自宅で映画を観る時だって開始5分で飽きてしまうことが多く、自分にとって間違いない映画じゃないとそもそも興味を持たない。それでも映画館の雰囲気は好きだし演技力の高い俳優は観たいので、どんな作品が上映されるのかなんとなくチェックはしている。
 そんな中、目に留まったのは法廷遊戯。永瀬廉くんは演技はあまり観たことがないのだが大注目をしていて応援している。どんな演技をするのだろう。北村匠海くんは演技力が好きで以前から出演作は観るようにしていた。そして杉咲花さん。出演陣にまず興味を持った。
 そして高評価に後押しされ、重たい内容は苦手ながらも鑑賞。すると余韻が凄まじく、観終わったばかりなのにまた観たくてたまらない。我慢できず3日後に観に行き、その後も2週間で5回鑑賞。計6回鑑賞し、それでもまだ鑑賞したかったのだが映画公開が終了してしまった。もう少し早くに観に行くべきだった。
 
 そもそも興味を持たない私が何回も足を運ぶなど初めてだし、それほどの感銘を受けた法廷遊戯は私にとって間違いなく人生で1番の傑作だ。
 以下、ネタバレありでつたない感想を述べるが、もしここは違う、こうではないかと思われるところがあれば指摘して欲しい。その方が有難い。

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 予告通り、2転3転どころか4転5転して目が離せなく、テンポがよくあっという間に感じる。

 結城かおる(北村匠海)は強い恨みを持って久我清義(永瀬廉)と織本美鈴(杉咲花)と同じ法学部に入学したと思われる。美鈴の部屋のドアにアイスピックを刺したり脅迫の手紙を郵便受けに入れたり、殺意を感じさせている。清義には出来ない。彼は寮に住んでいるからだ。
 冒頭の無辜むこゲームでは清義の暗い過去を暴いた事により清義の反応を見ているのではないか。
 しかし清義に近づき仲良くなるにつれて本当は清義はいい奴なのではないか。と馨は思い始めたのではないか。なので盗聴がバレた事を機に嫌がらせはやめて、同害報復について研究。目には目を、歯には歯を。憎い相手を殺さずに目だけを奪ってゆるそう。大学に残って1年間で8本も論文を書いている。

 清義が幻の馨に
「なぜ馨は大学に残ったんだ?」
と問う場面がある。
 清義を許す方法を研究するため、清義、あなたの為だよ!と思うと、清義本人が問いている事になんともやるせなく切なく感じる。

 話が展開するにつれて次々と明かされていく事実。1回目鑑賞では分からなかった清義の表情の意味が2回目からは理解できるようになってきた。

 墓に馨の父親の名前がなく、馨の家を訪ねる清義。そこで初めて、過去に清義と美鈴で冤罪に陥れた警察官が馨の父親であることを知る。まず馨の義母の話から、もしかしてあの時の警察官のことかと思い始め、馨と薫の父母が写っている家族写真がクローズアップされていきあの時の警察官だと確信。この時の清義の表情から感情の揺れが感じ取れて、衝撃の大きさが計り知れないと思えた。
 裁判所での美鈴を見つめる清義も、表情や間の取り方だけで感情が伝わってくる。
 パンフレットも読んだのだが、法廷遊戯の作製が決まってから真っ先に清義役は永瀬廉くんが浮かんだらしく、脚本もできる前にまず話を持っていったそう。スクリーンの中には確かに永瀬廉くんではなく清義が居た。的確な人選だと思った。

パンフレットより


 馨も、何気ない仕草や間の取り方、美鈴と対峙する場面での歩き方も感情が滲み出ていたし杉咲花さんも迫力があった。脇を固める俳優陣も流石の演技で、大森南朋さん、生瀬さん、筒井道隆さん、戸塚純貴くん、また冒頭の無辜むこゲームでの皆さんも検察官も裁判官も演技派ばかりで惹き込まれる。

 清義と馨は深い友情で結ばれていた。最後の階段の場面で特に感じるが、在学中に外の机で勉強していた清義に話しかける馨。言葉を発せず目を合わせて笑うところからも分かるし、卒業後、寮から出たところでかかってきた馨からの電話を愛おしそうな表情で受ける清義からも分かる。
 
 最後の階段の場面からの主題歌。あれはいい意味でずるい。とてつもなく感極まる。仲の良い清義と馨、もう帰ってこない日々。そこから流れる主題歌の「いとし生きること」は全てを拾って包み込んでくれる。歌まで含まれることでこの映画は完成され、相乗効果が何乗にもなって返ってくるように思う。
 美鈴にとっては清義は蜘蛛の糸のような存在(パンフレットより)。言えない秘密の過去を共有していることで特別な感情があり、最後に清義が馨を選んだことで壊れてしまい、無罪判決を受けての笑い。私はこの時の美鈴の感情は1回目の鑑賞では確信が持てなかったのだが、回を重ねて鑑賞しパンフレットも読んだことで答え合わせが出来て理解できた気がした。

 俳優陣が素晴らしいことは間違いないのだが、話の構成も良く、カメラワークにも特徴があり目を引いた。パンフレットを読み、俳優陣、監督、カメラマン、脚本家、音楽、全てのプロの方々が意見を出してこだわりを持って作品に挑んでいることが分かった。お恥ずかしい話、私は監督の指示通りに映画は作製されていると思っていたので申し訳なく思ったし、パンフレットを読んだことで考えを改めることが出来て良かったと思う。
 どの方も欠かすことのできない、代わりのいない方々が集まったからこその作品。制作に携わって下さった皆様への尊敬の念が止まない。

 私にとって間違いなく人生最高の作品。他にも共感してくださる方が多いと嬉しく思う。


 

 


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