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酔っぱらいの奇行はどこまで許されるか

土曜にしては、お早い目覚めのAM6:45。
寝ぼけきってトイレに行ったら、前日着用していたワイドパンツ、ストッキング、ガードルが床にあった。
まるで着ていた人間が溶けて消えたかのように。

消えてはいない。
わたしはベッドに戻り、きょうが休日であることへの感謝を神に捧げ、昨夜2年半ぶりに仕事で会食に招かれたことを思い出していた。


めくるめくイタリアワインの世界

自分では、なかなか行けない素敵なイタリアンのお店。
お相手の皆様がワインもセレクトしてくださり、テーブルにはたくさんのグラスと素敵なお料理。
2年半前も同じお店にお招きいただき、「めくるめく」とはこれだ、という体験をした。
昨夜も、めくるめくアゲイン。
ワインは7本くらい空いていたように思う。

とは言え、お仕事。
緊張しているとあまり酔わないので、タクシーに乗るまで何度もお礼を言い、しっかり振舞った。


タクシー降りたら魔法がとけた

正式には、タクシーを最寄りのコンビニで停めてもらったあたりから「わたし酔ってません」の魔法はとけかかっている。

なんか買おうとしているのである。

前菜、なんか珍しい海老のパスタ、布団みたいにふっくらしたお魚、やらかいお肉、チーズ、デザート、エスプレッソ、パン。もちろんワインも注がれた分だけすべて飲んだ。

なのに、まだなんか買おうとしているのである。

金もないくせにわたしが購入したのは、セ○ンイレブン「野菜の旨みタンメン」。1/2日分の野菜が摂れる人気商品だが、やすこ、きょうはもう充分だよ。

そして、タンメン片手に歩いて帰宅したわたしは、トイレで溶けたのである。


シャワー浴びたらタンメンいらなくなった

タンメンに謝ったほうがいいし、当たり前なのだが、シャワー浴びたらお腹いっぱいだと気が付いた。
タンメンを冷蔵庫に入れ、眠りにつく。
冒頭のAM6:45に戻るのである。

AM8:47。
わたしはタンメンを食べていた。
平日であれば出社する時間に、わたしは昨夜のタンメンが食べたくて起き上がった。
朝も早いし、きょうは昨夜会社に置いてきた愛車を徒歩で取りに行かなくてはいけない、タンメンくらいいいでしょ、との思考がそうさせた。

AM11:53。
洗濯と掃除を終え、さて愛車を迎えに行こうと玄関でスニーカーを履いたら、入居以来1度もそこで見たことがない、仕事の手帳が玄関の棚にあった。

「酔っぱらいの奇行こわい」

嘘でも大げさでもなく、わたしは呟いた。
「なんでここに手帳出したし」と訝しがりながら歩き始めて、思い出した。

昨夜、タクシーを降りたあと、領収書を握りしめていた。
帰りの交通費は自己負担になるケースが多いやすこの会社。

酔って気が大きくなったやすこは、納得がいっていなかった。
「確かにめくるめく体験はしたが、これは仕事。納得いかない、絶対交通費申請してやる」とタンメン片手に、わざわざ失くさないよう領収書を手帳に挟み、小脇に抱えて帰宅したのだった。

玄関に入り、そこそこでかい小脇の手帳が邪魔になって、玄関にぽいと投げたのは、想像に難くない。


PM2:03。ピザを食べる

ただの食欲魔人である。

愛車を取りに行き、突然ピザが食べたくなって帰りに購入した。
ピザのあと映画を観て、昼寝ぶっこいて、起きたらコーヒー淹れてピザとともに購入した苺ショートを食べた。

何も我慢する気はないのかよ、と問いたい。
酔いはとっくに醒めているだろうに、本能のままに生きすぎている。

こうしてこれを書いているいま、PM7:11。
こんどはコストコのローストチキンが食べたい気がしている。

果たしてどこまで許されるのか。
魔法にかけられそうな土曜の夜、カエルがお外で唄っている。


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