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【小説】死刑にいたる病 (櫛木 理宇)

稀代の連続殺人鬼である榛村大和から手紙を受け取った大学生の筧井雅也。
そこには「罪は認めるが、最後の1件だけは冤罪だ。最後の1件を誰が行ったかを調べて欲しい」と依頼をうけるのだが...
というお話。

ぞわぞわして落ち着かない作品。
一体この物語の最後に何があるのか?
着地点は何処なのか?
蠱惑的かつ幻惑的なドライブ感はなかなか。

8件の殺人と1件の謎が残る殺人。
それを主軸に描かれる様々な人々の過去。
それは異常な病だろうか?
それとも人間の持つ、あるひとつの自然な側面なのだろうか?
誰もが認めたくない、加虐性を問うてくる物語に、戦慄と快感の念を禁じ得なかった。

榛村は自分の欲求に忠実で、身勝手な秩序を持っているという実に忠実なサイコパス像的キャラクターである。

個人的にはそれにネクロフィリック的な感性を感じた。
扱いやすそうなモノを自分の好きなように動かす。
根源的な恐怖で支配し、それに気付かせ無いように違う感情、例えば愛や敬意の様な感情に誤解させて植え付け、傅かせる。
マインドコントロールさながらに同調に誘われ、悪意の元になるであろう種を振り撒き、伝染を促す行為は実に悪である。

平穏である日常に感謝しつつも、平穏である日常に奇跡を感じぜざるを得ないのであった。

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