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美容医療の物理③ 『波長』

今回は機械の説明で必ず出てくるワード
「波長」について書きたいと思います✎




波長は「電磁波(光)の長さ」


美容医療の機械であるレーザー・高周波・IPLは全て電磁波です。電磁波には波の性質があり、波の長さのことを「波長」といいます。


機械により波長が異なりますが、波長が違うと何が違うのでしょうか。

波長で押さえておきたいポイントは以下の2つです。

①深達度
②吸光度    

⋆⸜💡⸝⋆POINT
波長が違うと①深達度②吸光度が変わる


①波長によって届く深さが変わる(深達度)

波長の長さが違うと皮膚に届く深さが変わります。
皮膚のどの深さにレーザーを届けたいかを考慮して波長を選ぶことになります。


皮膚の解剖生理と繋がってきますね✨️
(どこにシミ・アザ・毛根がどこにあるのかなど…)  

図が小さくなってしまったのでアップしてください🥺🔎


シミ治療の場合、シミは比較的浅い層にでにるため
532nm(KTP:YAG)・694nm(ルビー)の波長を使うと思います。シミより深い層である肝斑治療では1069nmを使用します。 

脱毛でよく使う波長は
・755nm(アレキサンドライト)
・800nm(ダイオード)
・1069nm(ヤグ)


脱毛で狙いたい発毛組織は比較的深い所に存在しているため、シミ治療に比べると長い波長を使います。

ヒゲやVIOなど深い部分にある毛にはヤグレーザー(1069nm)を使うなど、毛根の深さで波長を変えてるクリニックもあるかと思います。


図の右側1550nm以降は数字的にはすごく深くまで届きそうですが、水分への吸収率が高いという特徴がある為皮膚表面でレーザーが吸収され深くまで届きません。
(皮膚のほとんど水分出できているため)

ただフラクショナルモードは真皮まで届くので機械の特徴の違いもあると思いますが…(勉強不足すいません💧)



②波長によって吸収されやすいモノが変わる(吸光度)


以前、私はレーザーの波長について「波長が変わると届く深さが変わる」と短絡的に解釈していました😭(←これではダメです)
波長を考慮するのは「目的としている治療の深さ」だけではなく「吸光度」も影響しています。
※他にも色んなことが影響するのですが… 

メラニン・ヘモグロビン・水分がそれぞれ吸収されやすい光の波長があります。
何をターゲットにするかで、効果的な波長か変わるということです。

それを表にしたものがあります↓

▫️メラニンの光吸収率
表を見てみると…

①532nm(KTP)🥇
②582nm(ダイ)🥈
③694nm(ルビー)🥉
④755nm(アレキサンドライト)
⑤800~900nm(ダイオード)
⑥1069nm(ヤグ)
の順で吸光度が高くなります。

→シミ治療によく使う532nmはメラニンの吸光度が1番高いす。波長が短い方がメラニンの吸光度が高いということになります。

②のダイレーザーはメラニンの吸光度は2番目に高いですが、シミ治療では使われず赤みの治療に使われます。メラニンの吸光度は高いですが、同様にヘモグロビンの吸光度も高いからです。

逆に③のルビーレーザーはダイレーザーよりメラニンの吸光度は低いですが、ヘモグロビンの吸光度がかなり低い為ヘモグロビンに邪魔されずより選択的にメラニンのみ破壊できます。

▫️ヘモグロビンの光吸収率

①582nm(ダイ)🥇
②532nm(KTP)🥈
③1064nm(ヤグ)🥉
④755nm(アレキサンドライト)
⑤694nm(ルビー)
の順で吸光度が高くなります。

→ヘモグロビンの吸光度が高い波長を使う治療は、血管(赤み)の治療になります。582nmのダイレーザは血管(赤み)の治療で使用されます。ダイレーザの代表的な機械に「Vビーム」があります。

▫️水分の光吸収率

炭酸ガスレーザーの波長(10600nm)とEr:YAGレーザーの波長(2940nm)は水分に高い吸収を示します。
皮膚のほとんどは水分でできるため、照射した皮膚が蒸散されるという特徴があります。これでホクロやイボを削ったり、フラクショナルレーザーとして毛穴やニキビ跡の治療に使用したりしています。
※ 蒸散 = 皮膚組織を加熱気化させて消失させること 

深達度のところでも、お伝えしましたが1550nm・2940nm・10600nmの波長は水分の吸収率が高いため皮膚の浅い部分で吸収され深くに届きにくいという特徴があります。

⋆⸜💡⸝⋆POINT
・波長が短いとメラニンの吸光度が高い
・ヘモグロビンの吸光度が高いのはダイ(582nm)
・波長が長いと(赤外線に近い)水分の吸光度が高く皮膚が蒸散する


波長による治療方法の違い一覧

それぞれの波長による主な治療を表にまとめてみました。

ピンク文字は機械の名前です
(この波長の機械は少なめなので記載してみました💡)



波長まとめ

 
波長と聞くと皮膚に届く深さ(深達度)をイメージしやすいですが、ターゲットにしているモノが「メラニン」なのか「ヘモグロビン」なのか「水分」なのかでそれぞれの波長の吸光度が異なります。

波長により①「深達度」②「吸光度」が異なるということは押さえておきたいポイントです️📝

レーザー治療においては波長だけでなく他にも色々なことが影響するので複雑だなぁと思いますが…

「波長」というワードが出たら「深達度」「吸光度」について理解しておくとレーザーについて理解しやすくなります🐼💡

📋波長まとめ✨️
・波長とは光の長さ
・治療目的によって波長は変わる
・波長が変わると光が届く深さが変わる
・メラニン・ヘモグロビン・水分がそれぞれ吸収されやすい光の波長がある

波長のレーザー名って独特ですよね!
ルビーやアレキサンドライトなど…
レーザーの原料が名前の由来になっています👇🏻


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