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いつか朗読してみたいお話

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#朗読

膝蹴りから開いた花─耳ビジ1周年と「たゆたう花」

膝蹴りから開いた花─耳ビジ1周年と「たゆたう花」

Clubhouseで平日のほぼ毎朝開かれている「耳で読むビジネス書(愛称「耳ビジ」)」ルームが2022年4月1日に1周年を迎える(当日朝8時からお祝いルームを開催。replayあり)と聞いて、「あれからもう1年経ったのか!」と驚いた。

「1年早かった!」と同時に、「なんと濃い1年だったのか!」という驚き。

「耳ビジ」を立ち上げ、引っ張ってきたナレーターの下間都代子さんと出会って以来、Clubh

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エゴサでは満たされない─箱入り娘白雪姫

エゴサでは満たされない─箱入り娘白雪姫

「鏡よ鏡」は元祖エゴサーチ⁉︎歩いているときに、ふっと何かを思いつくことが多い。たいていボーッとしているからだ。ボーッとして、ゆるんで、できた隙間にアイデアがポコっと顔を出す。

11月13日いいヒザの日「膝祭り」(プログラムはこちら。第二部追っかけ再生はこちら)が近づく2021年のある日、散歩の途中で「ヴァージンスノー膝って白雪。箱入り娘膝枕は、まさに白雪姫では」と気づき、「白雪姫」を下敷きにし

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続・羅生門

 ー芥川龍之介「羅生門」に敬意を表して

 また或る日の暮れ方のことである。一人の男が羅生門へと向かっていた。
下人である。四、五日前にこの羅生門で、女の死骸から長い髪を抜き取っていた老婆と出会い、その老婆の着物を引きちぎるようにして奪って、ひと匙の粟がゆに変えた。草履の紐にしかならない薄汚れた老婆の着物は、一時の腹を満たす糧にすらならなかった。
 ふと、老婆が引き抜いていた、死んだ女の長い髪を思

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ベアトリーチェの死

ベアトリーチェの死

 1599年9月11日、22歳のベアトリーチェは死んだ。
 死刑は、ローマ郊外の石造りの橋の上で行われた。ベアトリーチェは、刑の直前に死刑執行人から渡された白く長い生地を髪が見えなくなるまでくるくると頭に巻いた。切断する首が見えやすくするためだった。ターバンのように巻きあがった布の純白が、ベアトリーチェの肌の白さを際立たせる。ベアトリーチェは丸太で作られた台にうつ伏せになった。死刑執行人が彼女に馬

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雪女と冷たい男

雪女と冷たい男

 ー小泉八雲「雪女」に敬意を表してー

 雪女は殺せなかった。老人と少年を吹雪で山小屋に追い込んで眠らせて、二人まとめて命を奪うはずだった。でもできなかった。その少年、巳之吉が美しかったからだ。老人の方は迷わずいけた。氷と雪の妖は、美しいものを愛してしまう。巳之吉は彼女たち妖の一族にもひけを取らない美貌を持っていた。憂いを帯びたまなじり、黒く澄んだ瞳、形よく通った鼻筋に小ぶりで細い唇。
 「ああ、

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