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#まとめ 「将来が不透明だからこそ、人生を選び取っていく」

こんにちは。物語のある雑貨店NUTSの編集担当、カタヒラです。

NUTSの代表・ヌマオさんの創業からの物語を中心に、“働くこと”にも焦点を当てお届けしてきた連載「20年つづくNUTSの仕事」。11回すべての記事の公開を終え、最後に筆者であるカタヒラの視点から連載を振り返ってみたいと思います。

青山を拠点とするオンラインショップ「物語のある雑貨店NUTS」は、ヌマオさんが世界にも名を知れる大手時計メーカーであるSEIKOを辞め、起業したところから始まりました。それは90年代後半、社会一般では“中堅”と呼ばれるご年齢でのことです。

会社員の平均給与が高水準で安定していた時代。バブル崩壊があったと言えど、現在との差はデータで見れば一目瞭然。当時はきっと多くの会社員が、会社を出て自ら稼ぐことなど考えもしなかったと思います。実際にヌマオさんもインタビューのなかで、次のように語っていました。

「僕が会社を辞めた頃は、“退職=転職”という意味でした。起業なんてするな、という空気感があった。出身である慶應大学の知人にも0から起業した人なんて、ほとんどいないね。お父さんの会社を継いだ人なら慶應には沢山いるけど…(笑)」

それでもヌマオさんは独立して、自らの足でここまで歩いてこられた。会社を20年以上守りつづけてきた。これは本当にすごいこと。簡単に真似できるものではありません。

そんなヌマオさんの姿から感じたことは、自分で選び取った人生を生きていくことの大切さ。当たり前のことのようですが、忙しさや置かれた環境に身をゆだねるあまり、自分で自分の道を選ぶということを忘れてしまう人も多いのではないかと思うのです。

ことに現代はいろいろな障壁があります。感染症に自然災害、お金の問題や人間関係…。しかし、大変な経験を強いられる中でも、この人生は第一に自分のものであるということは覚えておいた方が良い。私はそう思います。

独立して最初はコネも実績もなかったというヌマオさんは、作った商品を持って自ら営業に行ったり、売上を得るために仕入れられる商品を探したり、たくさんの工夫を凝らしてきたといいます。そんなように自分のキャリアや人生を良いものにするという泥臭い心をどこかに持っておくこと。そうすれば、気づかないうちに自然と“自分にとって生きやすい生き方”になっていくのではないでしょうか。

また、大切に温めておいた“好きなもの”は、いつか強い味方になってくれる。これもヌマオさんのお話から学びました。

ヌマオさんはSEIKOを辞めてから、横尾忠則さんをはじめとしたアーティストとのコラボウォッチ「NUTSコレクション」を作りました。これもご自身のアートやデザイン好きが高じてのこと。また、フランスのデザイナー、フィリップ・スタルクとの商品をセレクトしたとき、このように語ってくれました。

「スタルクとのコラボで、もうひとつよく売れた商品があります。それはカバンのエースっていう日本の大手鞄メーカーとのコラボ鞄です。(中略)そしたら、エースの方に『まだ在庫があるのでもっと売って欲しい』と言われて。1000個以上あったんじゃないかなあ…。それを全て買い取ったんです。

そしたらある日、オフィスの前に2tトラックが2台も来て、届いたカバンでオフィスが埋まっちゃった(笑)『どうすんだこれ!』って思ったんだけど、心配する間もなく完売しました。NUTSのお客さんにスタルクファンが多かったってことだね。

その時は、『あ、自分の好きなものって結構売れるんだ』って感じました。」

どんなものでも“好きであること”は力になる。ヌマオさんのお話を聞き、それが確信になりました。このnoteでも描かせていただいていますが、イラストは私の持つ“好き”の一つ。この先どうなっていくのかは分かりませんが、大事に温めていきたいと思います。

インタビューを通してヌマオさんとNUTSの物語を書かせていただき、私もその人生や時代を少し経験したような気持ちになりました。

アメリカの同時多発テロによる世界の震撼をその身をもって感じたり、社長であるご自身の給料を一銭も払えなくなったり、言葉で書くのは簡単だけど、人生は想定外のことばかり。それでも自力で、あるいは周りの人の力を借りて、ヌマオさんが自分の仕事と人生を続けてきたことに大きな大きな勇気をいただきました。

自分にも社会にも、何が起こるか分からない先のことを考えて恐怖感を覚えるときもあります。でも、先にも述べたように自分だけの人生を選び取っていけばなんとかなる。私はそう信じています。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

そして取材にご協力いただいたヌマオさんに、多大なる感謝を申し上げます。

本当に、ありがとうございました。

(カタヒラ)

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