Annie

釣りとキャンプと酒。ときどき山

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釣りとキャンプと酒。ときどき山

最近の記事

【自称常連】

最寄りの駅前通りに古本屋がある。 古本屋といっても売っているのは本だけではなく、古いフィルム式のカメラ、南部鉄瓶、アコースティックギター、年代モノのレバーアクションのライフル(西部劇に出てくるやつ)、超合金等々、とにかく色んな物を売っている。 店の外にも超お買い得品の漫画やDVDが雑然と並んでいる。 ときどき店先に4本マフラーのHONDA CB750F(巨摩 郡のじゃなくて早川 光のほうね)が停めてあるところも非常に気になっている。 ボクはよっぽどのことがない限りほぼ

    • 思い込み

      午後遅くなって雲行きが怪しくなってきた。 冷たい沢の流れに浸かったまま見上げる空は高層雲で埋まり、その下を黒味を帯びた片積雲が西から東へ流れていく。気象の入門書に出てくる典型的な天候悪化の兆候だ。雨になりそうだった。 (天気予報が当たったなあ) 太ももまで浸かれば容易に渡渉できそうな幅5メートルほどの渓流は、今夜の宿となるキャンプ場の脇を流れていた。キャンプ場といっても小さな橋のたもとにトイレと炊事場があるだけで管理人もいない、見た目は草の生えたただの広場だった。 東

      • オーバーナイト・ハイク

         今から40年ほど前、中学2年の春休みにボクは同級生2人と神奈川県丹沢山地の麓を流れる水無川にキャンプに行った。メンバーはボクと同じ団地に住むタケシ。そして中学に入ってから知り合ったタツヒロだ。  タケシは端正な顔立ちの優等生で物知りだった。小学校のころからボーイスカウトに入っていたのでキャンプや焚火などの野外活動、地形図の読みかたやコンパスの使い方などの知識を豊富にもっていた。だから今回のキャンプではリーダー的な存在だった。  タツヒロは違う小学校だったが中学に入学して

        • 空模様 第4話

          池本は,グループの最後尾を大束と一緒に降りていった.脱落者を拾っていくためなのだが,登りであれだけ苦労していた部長の尾川も,下りは順調らしくほぼコースタイムに準じたペースで下っているように思えた. (これなら問題なく懇親会までには間に合うだろう.”下りのエキスパート” 川口さんみたいだな) 池本は高校山岳部時代のある先輩を思い出していた. 池本が1年のとき,2つ上の3年に川口という先輩がいた.もともと上下関係に厳しい部ではなく,呼称も「~先輩」でなく「~さん」と呼ぶようにと

        【自称常連】

          空模様 第3話

          イタツミ尾根はヤビツ峠から大山に向けて一気に高度を上げていく。上り始めは北東へと登り、標高949メートルの春岳山の山頂南面を横切ると東に向かい、阿夫利神社下社から登ってくる表参道と合流する。そこから頂上までは10分ほどの登りで標高1249メートルの山頂に着く。コースタイムではヤビツ峠から1時間ほどだ. とくに危険なところのない登山道だが蓑毛からヤビツ峠までの道に比べると傾斜もきつく、ところどころにちょっとした岩場や鎖が現れる箇所もあった。 展望はよく、丹沢表尾根の山々とそ

          空模様 第3話

          空模様 第2話

          「池本さんは山岳部だったんでしょ? 冬山とか岩登りとかもやってたんですか?」 隣に腰を下ろしたデザイナーの大束明子が首にかけたタオルで汗を拭きながらが言った。 「冬って言ってもせいぜい3月の八ヶ岳とかくらいで、厳冬期の北アルプスとかは全然行ってないです。岩登りはやってみたいんですけど、今のところは沢登りくらいですね」。 歳はおそらく40代前半、同じくらいだろうか。池本より半年ほど前に中途採用で働き始めた転職組みだ。結婚はしているが子どもはいないらしい。理由はわからない。

          空模様 第2話

          空模様 第1話

          登山道に吹く風はなく10月にしては少し暑いくらいだったが、見上げた空には巻雲があり,その下を綿雲がゆっくりと東に流れ杉林の向こうに消えていった. (秋の風が吹き始めているのか) ほとんどの山が1500Mを越えない丹沢の10月は紅葉にはまだ早く,移動性高気圧が張りだした穏やかな気圧配置の時は、今日のように夏の名残りを思わせる陽気の日も多かった。それでも秋は着実に近づいているようだった。 (やっぱり山はいいな) 社内の親睦登山とはいえ山を歩くのは楽しかった。池本和彦は久し

          空模様 第1話

          「ナースローグ」

          好きな作家に開高 健がいる。もう亡くなっているので正確には「いた」だ。彼のことを初めて知ったのはドラマ「北の国から」。ドラマの中で児島みゆき演じる"こごみ"の愛読書が開高 健の本という設定だった。 開高健はベトナム,中近東,アフリカなどの紛争に記者として従軍したのだけれど、ある日「どこに行って,どこの戦争の記事を書いても結局,同じ言葉の繰り替えしに過ぎないじゃないか」と感じ、ベトナム戦争時代の従軍経験を元に「闇」をテーマとした一連作品の執筆を終えると、それ以後戦争をテーマに

          「ナースローグ」

          【Y君の思い出】

          高校時代の同級生と飲んでいるとき,Y君という共通の友人がいたことが判明した. Y君の家は学区のいちばん端っこにあって小学校まで遠く1.5キロくらいあった.ボクの知る限り彼は一番遠いところから通っていた生徒で,雨の日も雪の日も頑張って通っていたと思う.だけど,確か5年生のときに隣接する学区の小学校に転校してしまったのだ. 彼の家は地元の名士で家は大きく庭も広かった.育ちの良さからなのか,ちょっと内向的でおとなしかった彼とはなんとなく気が合い、学校が終わると良く一緒に遊んでい

          【Y君の思い出】