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【Y君の思い出】


高校時代の同級生と飲んでいるとき,Y君という共通の友人がいたことが判明した.

Y君の家は学区のいちばん端っこにあって小学校まで遠く1.5キロくらいあった.ボクの知る限り彼は一番遠いところから通っていた生徒で,雨の日も雪の日も頑張って通っていたと思う.だけど,確か5年生のときに隣接する学区の小学校に転校してしまったのだ.

彼の家は地元の名士で家は大きく庭も広かった.育ちの良さからなのか,ちょっと内向的でおとなしかった彼とはなんとなく気が合い、学校が終わると良く一緒に遊んでいた.

ある年の冬.ボクの誕生日のこと.
1月生まれのボクの誕生日は当たり前だけど冬まっただ中で,その日は朝から雪が降り、昼前にはすでに数センチの積雪になっていたのだけれど、誕生会にはY君をはじめ4~5人が集まってくれた.

誕生会はいつしか雪合戦となりボクたちは大いに盛り上がったのだけど,
たまたまU君が投げた雪玉がY君の顔面を直撃してしまったのだ.もちろんU君に悪気はなかったし,たかが雪玉だ,とボクらは思っていた.しかし当たりどころが悪かったのか,ショックだったのか,今となってはよくわからないのだけど、Y君はケーキも食べずにそのままひとり家に帰ってしまったのだ.

夕方,母親が「Y君にケーキを持って行っていってあげれば?」というので,ボクは彼が食べるはずだった分のケーキをもって暗くなりかけた雪道を歩いて届けに行った.玄関でケーキを渡すとき、恥ずかしかったからなのか,怒っていたからなのかわからないが,Y君はちょっと顔を見せただけだったように記憶している.けれど彼のお母さんはボクがわざわざケーキを届けに来たことにひどく恐縮して,バスで帰るようにとバス賃を渡してくれた.
そのお金をもらってバスで帰ったのか,断って歩いて帰ったのか覚えていないのだけれど、ボクの人生のなかで一番記憶に残る誕生日になったことは間違いない.

そんなY君が転校した先の小学校にいたのが,高校時代の同級生だったというわけだ.

本当は,この話から,世の中って狭いよねという,【六次の隔たり(Six Degrees of Separation)】の話をしようと思っていたのだけど,小学校の思い出が溢れてきていっぱいになってしまった.
Y君,元気にしているだろうか?


#小学校 #友だち #誕生日 #雪の日 #エッセイ


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