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石の民族と砂の民族(前編)

本記事は以下の二記事を基にしています。

〇はじめに

中国革命の父、孫文は「中国人は砂のような民族だ」と言った。これは「中国人はバラバラで団結力がない」ということに対する嘆きの言だったわけだが、比喩として実に素晴らしい表現だ。

そんなバラバラでまとまりのない「砂の民族」の対義語としては、「石の民族」といった比喩表現が適当ではないかと思われる。石の民族とは、砂の民族のまさに対極の民族集団のことで、「均一で団結力がある」といった特徴を有する。これには、まさしく日本人が当てはまるだろう。

ただし、ここで注意が必要だ。団結力があるからといって、何も石の民族は砂の民族よりも明確に優れている、なんてことはないのだ。砂の民族には砂の民族なりの長短があり、石の民族には石の民族なりの長短がある。また、ある民族を砂の民族と石の民族のどちらかに、単純に分類できるものでもない。砂の民族である中国人にも石的な要素はあるし、石の民族である日本人にも砂的な要素はある。これは、ある鉱物の集合が石であるか砂であるかを目視だけで簡単に判別できないのと同じことだ。

ある民族が石的な民族になるか、それとも砂的な民族になるかは、その民族が辿ってきた歴史が大きく関わっている。この記事では、世界の諸民族・諸文明の歴史考察を、石と砂の性質に適宜例えながら書いていきたい。

〇石と砂の性質

石と砂の関係は実に簡潔で明瞭だ。砂は石が粉砕されてできるものだ。しかし、石は砂からできるものではない。「石から砂」の変化は容易に起こり得るが、反対の「砂から石」の変化はそうは起こり得ない。一方向への変化のみが生じるのだ。またここから、石と砂の間に前後関係を見出すこともできる。石が前で、砂が後という関係だ。つまり、石とは過去であり、砂とは未来を意味している。

(過去)石 → 砂(未来)
※一方向への変化のみが生じる

石と砂の間には固い柔らかいという性質の違いもある。石は固くて、砂は柔らかい。それゆえに石は高く積み上げることができるが、砂はできない。砂を高くまで伸ばそうとするのなら、水を加えなくてはならない。また、砂は内部に異物を取り込むことができるが、石はできない。石の内部に異物を取り入れるには、ドリルで穴を開けなくてはならない。

石:固い、高く積み上げられる、内部に異物を取り込むことができない
砂:柔らかい、高く積み上げられない、内部に異物を取り込むことができる

さて、ここまで石と砂の性質の差を、小学生レベルの地学知識を用いてわざわざ書いたわけだが、これらを踏まえて、石の民族とは何か、砂の民族とは何かを具体的に考えていきたい。

〇石の民族と砂の民族、それぞれの特徴

石の民族と砂の民族の、それぞれの特徴、長所と短所、そして適した政治形態を、以下に図示する。この図を見ると、まさしく石の民族と砂の民族は対極の性質を有していることが分かるだろう。

石の民族と砂の民族の特徴

ここで一つ説明が必要だ。なぜ石の民族に適した政体が自由民主制で、砂の民族に適した政体が専制なのか、といったことについてだ。

まず大前提だが、石の民族は得てして不自由な社会を形成するという傾向がある。その反対に、砂の民族は自由な社会を形成する傾向がある。これらについては「石の民族と砂の民族(中編)」で改めて述べることにする。

石の民族の特徴を多く有する国々と、砂の民族の特徴を多く有する国々を、以下に列挙する。

石的な特徴を多く有する国:
西欧、北欧、日本

砂的な特徴を多く有する国:
中東、中国、インド、南欧

これより、歴史の長い国ほど砂的で、歴史の短い国ほど石的であるという傾向が読み取れる。また、ユーラシア大陸の中心部に近い国ほど砂的で、ユーラシア大陸の辺境部にある国ほど石的という傾向も見られる。こうした差がなぜ現れるのかについては、「石の民族と砂の民族(後編)」で述べることにする。

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