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夢詠

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#俳句

夢詠6

夢詠6

〈近接類同相〉

野良なれど我が物顔の「ウチの猫」

蒸し風呂を背広で泳ぐ夕立後

終電を待ち蒸されたり三番線

湿気忌む妻は窓閉めエアコン派

ほろ酔ひの一人祭りの夏夜かな

息子には息子の思ひありと知れども

子のレポートに口出し過ぎと妻怒る

メルカリで妻に古書を買つてもらふ

姪が児を宿しけりとや百日紅

休日にあちこち修繕書も読めず

老ひ兆す視界に糸くづ稲妻も

健診も終へぬ久しき冷や

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夢詠5

夢詠5

〈写生論〉

屋上に冬の山なみ撮る人ら

初磨き踵減りたる老兵や

快晴も気の晴れぬまま初仕事

終電を待ち凍えたり3番線

夜更けまでキーボード打つ娘なり

冬嵐寝覚めに聞けば夢芒

寒風や老義父乗せて神経科

合否如何発表今日日ネットにて

菜の花や入学式の子のスーツ

講義ほぼリモートばかりと息子言ふ

「うちの猫」と子らが呼ぶやつ庭にをり

蛙鳴く常熟の夜の酒一合

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夢詠4

夢詠4

〈四季のなかの時〉

透明なシートの向かうの売り子かな(2020.9)



アクリルの板が隔つ客と客
(2020.9)



店員のおばけかぼちゃの髪飾り



けたたましき百舌鳥も何処か午後の陽や



からころと落ち葉転がる風の路地



黄落に踊るやうなり竹箒



冬陽射す野焼きのけむりたなびけり



タイヤ替へ鉛の雲や師走入り



店員のサンタ帽子の華やぎや


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夢詠3

〈敬〉

何処からか種来たり庭のカモミール

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紫陽花の褪せて小雨の生ぬるし

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花霊継ぐ紫陽花褪せてサルスベリ

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廃屋の篠竹屋根を覆ひけり

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古さびた苔は湿りて空き屋敷

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空き屋敷隅の祠も空き家なり

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むせるほど葦叢灼けて雲眩し

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義母来たり籠に盛らるる茄子胡瓜

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塩焼酎供へ浄めて杉伐りぬ

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U字溝猫に追はれしハクビシン

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夢詠2:夢の継起

濡れ縁も
崩れし空き家
杉の蝉

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笹撫でて
ぬるき風過ぐ
陽の陰り

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雉鳴けば
夢は還りぬ
古き原

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夢統べる
傀儡師見たり
闇のむかう

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かの人の庭に
白き陽
降れよかし

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竹鳴れば
珠は零れて
慈雨のごと

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竹林を
異界のものらと
風が過ぐ

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椿落つ
いのちの神から
ものの神へ

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リラ萎れ
ものの神へと
委ねらる

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種こぼ

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夢詠2:夢の倫理

書かぬなら
カフカ忽ち
砂に散らん

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夢なるは
冥府下りの
英雄の闘い

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土間は凍つ
夢の語りに
暖とりぬ

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わずかなる
一行、時に
人救う

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落ち武者や
藪払い、ただ
落ち延びよ

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曾祖父の
ごとき棕櫚伐る
風通る

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目覚むれば
何処も濁世と
覚えたり

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敗残の
雨でもペダル
漕ぐ寒夜

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タイヤ替え
ワイパー替えつ
泥悪路

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夢詠2:夢の原基

忌み嫌う
兄は鬱病み
A病棟

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海馬萎え
父は醜く
枯れゆけり

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生家をば
癲狂院と
呼び、出でき

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泥の山
田、埋められたり
蛇の死骸

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金網の
フェンスささくれ
葛の餌

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車過ぐ
轢かれし狸の
傍を

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廃校の
隣の梨棚
蟲憑きぬ

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誰もが
苛め苛められて
育つ町

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通学路
ケバき電飾の
城たてり

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側道は
芥と倫理の
捨て

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夢詠2:定型の供物

何処とて穢土なれどこの桜草

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子らは消え花は残れり廃校や

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枯葦を波に変へたり春疾風

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ひうひうとざわざわと春の嵐鳴る

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春嵐止めば子どもら薄衣

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春雪にあやかし土中へ樹の内へ

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世は翳り椿の紅は映え極む
(2020.4)

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裏路地の灯も絶え卯月の疫病禍
(2020.4)

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菜の花の黄をまなうらに服薬す

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紫の灯りや夕べの金魚

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夢詠

〈季節詠〉

冬ざれの沼地にひとり佇みぬ

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枯れ野原古き祈りや草木塔

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冬寒や子らの寝息ぞ夜に満つる

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枯れ草に雪は降り積む音なき夜

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寒き夕雲鋼色雀騒がし

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妖の宴や夜更の花の下

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五月雨の鉄路に照るはビル灯り

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こもれ陽や午睡の春に羽虫鳴る

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こもれ陽の揺れてラジヲのほの聞こゆ

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蝉喧

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