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目指す学問の「本場」か?現地で認可されている正規のプログラムか?正規の学位か?(その1)...留学チェックポイント



はじめに

本稿はTOEFL Web Magazineの筆者コラムFor Lifelong Englishに2018年に掲載した記事「留学チェックポイント-目指す学問の「本場」か?現地で認可されている正規のプログラムか、正規の学位か?」です。アメリカ留学を目指す方々に向け書いたものです。別稿「新留学事情:目指す分野の「本場」で学びたい!がもたらす海外留学」(その1)(その2)と併せてお読みください。


大学正規のプログラムか留学生専用プログラムか

海外留学と一言で言っても、留学先の現地学生と同じように正規のプログラムで学ぶのか、留学生専用のプログラムで学ぶのかでは全く違います。国によっては、留学生の大半は留学生専用プログラムで学び、認可された正規のプログラム(accredited programs)で学ぶ人は極稀なようです。1970年代半ばに筆者がワシントンD.C.で会ったベトナム人留学生は、アメリカに留学する前のフランス留学での体験でそう述べていたのを思い出します。

2007年にオーストラリアのタスマニア大学を訪問した際に出会ったフランス留学中で一時帰国しているオーストラリア人の大学院生は、文学専攻で現在Jane Austen(*1)について博士論文を書いていると言っていました。聞くとフランス語ではなく英語で書いているとのこと。英文学なのでそれもありかなと思っていると、日本文学でも日本語で論文が執筆できるとのこと。言うならば、何語で書いても良いとのことで更に驚きました。

それが正規のプログラムか留学生用のプログラムかは知りませんが、英語はともかく、正規のプログラムであれば、あらゆる言語で論文指導できる教授陣を揃えていると言うことでしょうか?留学生専用のプログラムであるとしても余程資金が潤沢な大学でなければ大変ですね。要は、何であれ、しっかりした訓練を受けられ質の高い論文を書ければ良いわけですが、どのようにquality controlをしているのか興味が湧くところです。


アメリカの大学、大学院の正規プログラムは現地学生と留学生を同じスタンダードで競わせる

留学生専用のプログラムで取得する学士号、修士号、博士号は、正規のプログラムのそれとは違うということです。アメリカでは専攻いかんに限らずどのレベルにおいても、留学生も現地学生と区別なく正規のプログラムで学ぶので、留学生専用の学士号とか修士号とか博士号はありません。Harvard大学のOfficial Websiteなどを見れば分かるように、入学、授業、奨学金など学業とキャンパスライフ全てにおいてアメリカ人学生と留学生を一切分けて考えないと明記しています。

すなわち留学生も現地学生と全く同じスタンダードで競い合い、交流し、生活を共にすると言うことです。(*2)世界中のmajor sportsと同じです。陸上競技、水泳、スキー、baseball、football (soccer)、American football、basketball、golf football、相撲、柔道、空手などなど、外国人と「本場」の選手もみな一緒になって競います。今や、外国人抜きには考えられないMajor League Baseballなど、外国人とアメリカ人を分けるリーグを作ったらMLBではなくなってしまいます。

アメリカの大学には多くの領域でメジャー的本場感が溢れる

筆者がアメリカ留学を勧めるのはこの点につきます。専攻する学問の本場がアメリカであると確証できれば、迷わずアメリカに行くことを勧めます。厳しくチェックすべきです。医学はどうですか?コンピュータ・サイエンス、AI、宇宙科学、物理学、生物学、工学、心理学などいわゆる理系の専攻はどうですか?経済学、経営学、社会学、言語学、コミュニケーションなどの社会科学系の学問はどうですか?文学、ジャーナリズム、現代音楽などの人文科学系の学問はどうですか?

インターネットで関心ある専攻分野を打ち込めば簡単に調べられます。筆者が今もう一度高校3年生にもどり、これから大学で言語学を勉強しようと思っていると仮定します。インターネットでlinguisticsと打ち込んで検索し、例えば、Wikipediaなどの分野の紹介を読むことでしょう。サイトの最後にある参考文献に目を通せば一目瞭然です。リストされている学者が多い国がlinguisticsの本場であると思って良いでしょう。

大学院留学には特に「本場」であるかどうか要チェック

学部上級生で大学院を目指すのであれば、さらに研究テーマが絞れている筈。そのテーマではどの国のどの大学のどの先生にまで絞り込むことができるでしょう。もしアメリカが本場であれば迷わずアメリカ留学を考えてよいでしょう。英語で現地の学生と一緒に世界的な研究をしている先生の下で学べるわけですから。もしこれが、留学生とアメリカ人の学生と分けて、言い方は悪いですがdouble standardで行われるプログラムであるなら、その価値は半減します。しかし、アメリカでは憲法でいかなる差別も禁止されているので、そういうことは無いはずです。

移民国家アメリカの強さはここにあります。アメリカはこうして育つ優秀な人材を適材適所に残し、現地人と競争させ、そして市民権や永住権を与えてきました。元々原住民以外全部移民だったわけですから当然と言えば当然です。アメリカには大勢のノーベル受賞者がいます。以前述べた通り、トップ大学には100名前後おり、その多くはアメリカの大学や研究機関で育った外国からの移民です。アメリカは全ての分野でこれが当然のように起きており、いわば、伝統の一部になっていることは周知の通りです。それを制限する政策は、あっても一時的なもので長くは続きません。自己否定になるからです。(その2)に続きます。


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